実演家の権利はいつまで保護される?保護期間と実務上のポイント
歌手による歌唱、演奏家による演奏、俳優による演技などの「実演」は、著作権法によって保護されています。
実演家には、実演家人格権や著作隣接権が認められていますが、そのうち財産的な権利である著作隣接権が永久に続くわけではありません。
一方で、実演家の権利の保護期間が終了すれば、その音楽や映像をすべて自由に利用できるというわけでもありません。
音楽や映像には、作詞家・作曲家の著作権やレコード製作者の権利など、複数の権利が関係している場合があるためです。
今回は、実演家の権利がいつまで保護されるのか、保護期間の数え方や2018年の法改正、利用する際に確認したい実務上のポイントを分かりやすく解説します。
📖目次
実演家の権利の保護期間は原則70年
実演家には、歌唱や演奏、演技などの実演を保護するため、著作隣接権が認められています。
現在、実演家の著作隣接権は、原則として実演が行われた時から70年間保護されます。
保護期間中は、実演家の許諾なく、その実演を録音・録画したり、複製したり、インターネット上で配信したりすることは、原則としてできません。
ただし、著作権法には一定の例外規定もあるため、すべての利用について必ず許諾が必要になるとは限りません。
実際に利用するときは、利用する実演の内容や利用方法を確認し、どの権利が関係するのかを整理する必要があります。
保護期間はいつから数える?
実演家の権利の保護期間は、実演が行われた時を基準として考えます。
ただし、法律上の期間計算では、実演が行われたその日から70年間を数えるわけではありません。
正確には、実演が行われた日の属する年の翌年1月1日から70年間を数えます。
例えば、2026年中に行われた実演であれば、2027年1月1日から保護期間を数えることになります。
そのため、原則として2096年12月31日まで保護され、2097年1月1日から著作隣接権の保護期間が終了することになります。
一般的な説明では「実演が行われてから70年」と表現されることもありますが、具体的な終了時期を確認するときは、翌年の1月1日から数えるというルールに注意が必要です。
2018年の法改正で50年から70年へ延長
実演家の権利の保護期間は、以前は50年間とされていました。
その後、TPP11協定の締結に伴う著作権法の改正が2018年(平成30年)12月30日に施行され、実演家とレコード製作者の権利の保護期間が、原則50年から70年へ延長されました。
同じ改正により、著作物についても、原則として著作者の死後50年から70年へ保護期間が延長されています。
ただし、改正法が施行される前にすでに保護期間が終了していた実演について、権利が復活するわけではありません。
古い実演を利用するときは、実演が行われた年だけでなく、改正法の施行時点で権利が存続していたかどうかも確認する必要があります。
保護期間が終了するとどうなる?
実演家の著作隣接権の保護期間が終了すると、その実演について、実演家が持っていた財産的な権利は消滅します。
しかし、実演家の権利が終了しただけで、その音楽や映像を自由に利用できるとは限りません。
例えば、音楽を利用する場合には、次のような権利が関係する可能性があります。
- 作詞家が持つ歌詞の著作権
- 作曲家が持つ楽曲の著作権
- レコード製作者が持つ著作隣接権
- 映像の制作者などが持つ著作権
一つの楽曲や映像には、異なる権利者が持つ複数の権利が重なっていることがあります。
実演家の権利の保護期間が終了していても、作詞家や作曲家、レコード製作者などの権利が残っていれば、その利用について別途許諾が必要になる場合があります。
したがって、「古い実演だから自由に使える」と判断するのではなく、関係する権利を一つずつ確認することが大切です。
利用するときに注意したい実務上のポイント
音楽や映像を利用するときは、保護期間だけを確認するのではなく、誰がどの権利を持っているのかを整理する必要があります。
昔のライブ映像をSNSへ投稿する場合
昔のライブ映像であっても、実演家の権利が残っている可能性があります。
また、映像を撮影した人や映像制作者の権利、演奏された楽曲の作詞家・作曲家の著作権なども関係することがあります。
自分が会場で撮影した映像であっても、映像に収録された実演や楽曲まで自由に利用できるとは限りません。
市販のCD音源を動画に使用する場合
市販されているCDの音源には、歌手や演奏家の権利だけでなく、レコード製作者の権利も関係します。
さらに、音源に収録された楽曲について、作詞家や作曲家の著作権も確認しなければなりません。
動画投稿サイトやSNSに用意されている楽曲については、サービスの規約や許諾範囲の中で利用できる場合がありますが、利用できる範囲はサービスごとに異なります。
古い音源や映像を利用する場合
古い音源や映像では、実演家の権利だけでなく、レコード製作者や著作者の保護期間も個別に確認することが必要です。
また、保護期間が延長された2018年の法改正や、旧著作権法が適用される実演など、通常とは異なる計算が必要になるケースもあります。
利用する資料が古いほど、単純に「制作から70年以上経過している」という理由だけで判断しないことが重要です。
実演家の保護期間だけで判断せず、楽曲、音源、映像に関係する権利を全体として確認しましょう。
まとめ
実演家の著作隣接権は、原則として実演が行われた日の属する年の翌年1月1日から70年間保護されます。
現在の70年という保護期間は、2018年12月30日に施行されたTPP11協定の締結に伴う著作権法改正により、それまでの50年から延長されたものです。
ただし、実演家の権利の保護期間が終了しても、作詞家・作曲家の著作権や、レコード製作者、映像制作者などの権利が残っている場合があります。
音楽や映像を利用するときは、「古い作品だから大丈夫」と考えるのではなく、どのような権利が関係し、それぞれの保護期間が終了しているかを確認することが大切です。
今回で、実演家の権利に関するシリーズは一区切りとなります。
次回からは、同じ著作隣接権の一つである「レコード製作者の権利」について、基礎から分かりやすく解説します。
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