出版権とは?利用許諾との違い・登録・消滅請求・電子出版まで解説

本や電子書籍を出版するとき、著作者と出版社との間では、さまざまな契約が結ばれます。

最近では、作家の作品について、出版社が変更されたことが話題になることもありました。

「出版社は自由に変えられるの?」
「出版の権利とは、どのようなもの?」

このように感じた方もいらっしゃるかもしれません。

そこで今回は、著作権法で定められている「出版権」について解説します。

出版権は、著作権そのものとは少し異なる特徴を持つ権利です。出版者に独占的な権利を認める一方で、出版義務や消滅請求、登録制度なども設けられています。

1. 出版権とは

出版権とは、著作権者などが、出版を行う者に対して設定する権利です。

著作権法では、複製権等を有する者が、その著作物について出版権を設定することができるとされています。

出版権が設定されると、出版権者は、契約で定められた範囲において、著作物を独占的に出版することができます。

たとえば、小説家が出版社に出版権を設定した場合、その出版社は、契約で定められた範囲で、その作品を紙の書籍や電子書籍として出版することができます。

ただし、出版権は、著作権そのものを譲渡するものではありません。

著作者が著作権を持ったまま、出版者に対して、一定の範囲で独占的に出版できる権利を与える制度です。

2. なぜ出版権という制度があるのか

出版社は、本を世に送り出すために、原稿の編集、校正、装丁、デザイン、印刷、宣伝、販売など、多くの時間と費用をかけています。

もし、同じ作品を他社が自由に出版できるとすれば、出版社は安心して出版活動に取り組むことができません。

そこで著作権法では、出版者に一定の独占的な権利を認めることで、出版活動を保護しています。

もっとも、出版権は出版社だけを一方的に保護する制度ではありません。

出版者には、きちんと出版する義務や、継続して出版する義務も課されています。

出版権は、著作者と出版者との信頼関係を法律上支える制度ともいえるでしょう。

3. 利用許諾・独占的出版契約との違い

著作物を出版する方法としては、出版権の設定のほかに、利用許諾や独占的出版契約という方法もあります。

今回は利用許諾に加え、よく混同される『独占的出版契約』との違いも見ていきましょう。

利用許諾とは、著作権者が相手方に対して「この著作物を利用してよい」と許可することです。

一方、出版権は、著作権法に基づいて設定される独占的な権利です。

項目利用許諾・独占的出版契約出版権
根拠契約による利用の許可・約束著作権法79条以下
性質当事者間の債権的関係法律上認められた独占的な権利
第三者への対応出版社が自ら直接差止請求等を行うことは原則としてできない出版権者が自己の名で第三者に対して直接差止請求等を行うことができる
出版社の保護限定的強い
登録制度なしあり

出版の世界では、法律上の出版権を設定せずに、「他社からは出版しない」という独占的出版契約が結ばれることもあります。

しかし、独占的出版契約は、基本的には当事者間の約束にとどまります。

そのため、第三者が無断で海賊版を出版した場合に、出版社自身が自己の名で直接差止請求等を行うことは原則としてできません。

これに対し、出版権を設定しておけば、出版権者は自己の名において、第三者による無断出版に対抗することができます。

この点が、出版権の大きな特徴です。

4. 出版権は登録することもできる

出版権は、著作者と出版者との契約によって成立します。

さらに、出版権については登録制度も設けられています。

登録の対象には、出版権の設定、移転、変更、消滅、処分の制限、出版権を目的とする質権の設定などがあります。

契約だけでも出版権は成立しますが、登録を行うことで、権利関係を公示することができます。

特に、第三者に対して出版権を主張する場面では、登録が重要になることがあります。

なお、文化庁の資料では、出版権の設定登録にあたり、登録免許税として収入印紙3万円が必要とされています。

出版権は、単なる「出版の約束」ではなく、法律上保護された権利として扱われていることが分かります。

5. 出版権者には義務もある

出版権は強い権利ですが、その一方で、出版権者には義務も課されています。

出版権者は、原稿などを受け取った日から、原則として6か月以内に出版を行わなければならないとされています。

また、一度出版した後も、継続して出版を行う義務があります。

つまり、出版権は、出版者に独占的な権利を与えるだけの制度ではありません。

「独占的に出版できる権利を認める代わりに、きちんと出版してください」という仕組みになっています。

6. 出版権の存続期間

出版権の存続期間は、契約によって定めることができます。

期間を定めなかった場合には、最初の出版の日から3年間で消滅するとされています。

もちろん、当事者の合意によって、期間を定めたり、更新したりすることも考えられます。

出版権は、一度設定すれば永久に続くものではありません。

契約内容や法律の規定を確認しながら、どの範囲で、どの期間、出版権を設定するのかを明確にしておくことが大切です。

7. 出版権の消滅請求とは

出版権者が義務を果たさない場合には、著作者は出版権の消滅を請求することができます。

ただし、どの義務違反にあたるかによって、消滅請求のための手続きが異なります。

最初の出版が行われない場合

著作者が原稿などを渡したにもかかわらず、原則として6か月以内に最初の出版が行われない場合には、著作者は出版権の消滅を請求することができます。

この場合、事前の催告なしに、直ちに消滅請求が可能とされています。

継続して出版されない場合

一度出版された本が絶版状態となり、継続して出版されていない場合には、著作者は出版者に対し、3か月以上の期間を定めて出版を求めることができます。

それにもかかわらず出版者が応じない場合には、著作者は出版権の消滅を請求することができます。

著作者の確信に反する内容となった場合

著作物の内容が著作者の確信に反するものとなった場合にも、著作者は出版権の消滅を請求することができます。

出版権は、出版者を保護する制度である一方、著作者の利益や意思にも配慮した制度となっています。

8. 電子出版にも対応している

かつて出版権は、主に紙の書籍を前提とした制度でした。

しかし、電子書籍の普及やインターネット上の海賊版被害の増加を受け、平成26年の著作権法改正により、電子出版にも対応するようになりました。

現在では、紙の書籍だけでなく、電子書籍やインターネットを利用した配信についても、出版権を設定することができます。

電子出版について出版権が設定された場合には、出版権者は、インターネットを通じた配信、つまり自動公衆送信の方法により、継続して著作物を公衆に提供する義務を負います。

単に一度配信すればよいというものではなく、紙の出版と同じように、継続的に提供することが求められる点が重要です。

出版権制度は、紙の出版から電子出版へと、時代の変化に合わせて対象を広げてきた制度といえるでしょう。

9. まとめ

出版権とは、著作者などが出版者に対して設定する独占的な権利です。

著作権そのものを譲渡するものではなく、著作者が権利を持ったまま、出版者に対して一定の範囲で独占的に出版できる権利を与える制度です。

利用許諾や独占的出版契約とは異なり、出版権者は自己の名で、第三者による無断出版に対して差止請求等を行うことができます。

一方で、出版権者には、最初の出版義務や継続出版義務が課されています。

義務が果たされない場合には、著作者が出版権の消滅を請求できる仕組みもあります。

また、出版権には登録制度があり、電子出版にも対応しています。

出版権は、出版社を保護するためだけの制度ではありません。

著作者と出版者との信頼関係を前提に、作品を社会に届けるための仕組みとして理解しておきたい制度です。

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🔗参考記事

e-Gov法令検索「著作権法」

日本電子出版協会「著作権法改定の経過と電子書籍」

文化庁「出版権に係る登録制度の概要」

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