テレビ放送の公の伝達権とは?パブリックビューイングと著作権

スポーツのテレビ中継を、会場の大型スクリーンに映して、集まった人たちで観戦する「パブリックビューイング」。そんな場面を見かけたことはありませんか。

家庭でテレビを見る場合と、受信した放送を多くの人に見せる場合では、関係する権利が異なります。

今回は、放送事業者の「テレビ放送の公の伝達権」(著作権法上の「テレビジョン放送の伝達権」)を、パブリックビューイングなどの場面を手がかりに整理します。

1.テレビ放送の公の伝達権とは?

テレビ放送の公の伝達権は、放送事業者に認められている著作隣接権の一つです。受信したテレビ放送を、映像を拡大する特別な装置で公衆に見せることについて、原則として、放送事業者が利用を認めるかどうかを決められる権利です。

文化庁の著作権テキストでは「テレビ放送の公の伝達権」と説明されていますが、著作権法第100条の見出しは「テレビジョン放送の伝達権」となっています。表記は異なりますが、同じ権利を指しています。

(テレビジョン放送の伝達権)

第百条 放送事業者は、そのテレビジョン放送又はこれを受信して行なう有線放送を受信して、影像を拡大する特別の装置を用いてその放送を公に伝達する権利を専有する。

テレビ放送を直接受信する場合だけでなく、その放送を受信して行われる有線放送を、さらに受信する場合も対象に含まれます。

ポイント
ここでいう「伝達」は、受信したテレビ放送を、その場にいる人たちに見せることをイメージすると分かりやすくなります。

前回取り上げた再放送権・有線放送権は、受信した放送を、さらに放送や有線放送によって届けることに関する権利でした。一方、今回の伝達権は、受信した先で、特別な装置を使って公衆に見せることに関する権利です。

権利主に扱う場面
再放送権・有線放送権受信した放送を、さらに放送・有線放送で届ける
テレビ放送の公の伝達権受信したテレビ放送を、特別な装置で公衆に見せる

地上波を受信してケーブルテレビで各家庭へ届ける場面と、会場の大型画面に映して観客に見せる場面では、行っていることが異なります。「さらに届けること」と「受信した先で見せること」を分けると、権利の違いが整理しやすくなります。

前回の記事:放送事業者の再放送権・有線放送権とは?日常の「再放送」との違い

3.「特別な装置で、公に見せる」とは?

映像を拡大する特別な装置

文化庁の著作権テキストでは、超大型テレビやオーロラビジョンなどが例として挙げられています。テレビ中継を受信し、会場の大型スクリーンで観客に見せるパブリックビューイングは、今回の権利が関係する代表的な場面です。

ただし、条文には「何インチ以上なら対象」という具体的なサイズは示されていません。画面の大きさだけで決めつけず、使用する装置や見せ方を確認することが大切です。

「公に」とは?

「公に」とは、公衆に対して見せることです。著作権法上の公衆には、不特定の人だけでなく、特定されていても多数の人が含まれます。

誰でも入れる催しだけが対象になるわけではなく、「会員限定だから関係ない」とも一律にはいえません。家庭内で家族とテレビを見ることと、会場に集まった多数の人に放送を見せることは、分けて考える必要があります。

4.非営利・無料なら、自由に見せられる?

ここは、二つの権利を分けて考えたいところです。テレビ放送を見せる際には、放送事業者の著作隣接権だけでなく、番組の映像や音楽などについての著作権も関係します。

著作権法第38条第3項には、営利を目的とせず、観客から料金も受け取らない場合には、放送される番組の映像や音楽などについて、著作権者の許諾を得ずに見せられる例外があります。

ただし、この例外は、放送に関係するすべての権利を対象にしているわけではありません。番組の映像や音楽などを作った人の権利と、放送を届ける放送事業者の権利は別のものです。

そのため、非営利・無料の催しでも、テレビ放送を大型スクリーンなどで見せる場合には、放送事業者の許諾が必要か、別に確認しましょう。

注意点
「無料のイベントだから、放送を自由に大画面で見せられる」とは考えず、著作権者と放送事業者の権利をそれぞれ確認しましょう。

具体例:オリンピックのパブリックビューイング

民放連が公表した、2026年2月開催のミラノ・コルティナオリンピックの案内では、自治体等が主催する非営利のパブリックビューイングでも、日本オリンピック委員会(JOC)や民放連への申請手続が設けられていました。

また、会場内での飲食物の提供・販売や、企業名・団体名等のロゴ入りグッズの提供・販売は、アンブッシュ・マーケティングの防止のため不可とされていました。販売だけでなく、無料で提供する場合も含めた条件です。

ここでいうアンブッシュ・マーケティングは、公式スポンサーではない企業などが、大会との関連を利用して宣伝することなどを指します。

これらは、この大会の案内で示された開催条件であり、すべてのパブリックビューイングに共通する法律上の禁止事項ではありません。非営利の催しでも、放送の利用手続と、大会や主催者が定める条件の両方を確認することが大切です。

参考:民放連「ミラノ・コルティナオリンピック™ パブリックビューイングの申請について」(終了した大会の申請・開催条件の例)

5.お店の普通のテレビで見せる場合は?

飲食店のテレビで、来店したお客さんが放送を見る場面もありますね。

第100条の伝達権は、映像を拡大する「特別の装置」を使うことを対象としています。通常の家庭用テレビで見せる場合を、超大型の装置を使う場合と同じに扱うわけではありません。

また、著作権者の権利についても、第38条第3項には、通常の家庭用受信装置を使った伝達を認める規定があります。文化庁は、営利活動を行う飲食店等でも、通常の家庭用受信装置で放送を見せられることを説明しています。

ただし、有料放送などを利用する場合には、著作権法上の扱いに加えて、契約で店舗での利用が認められているかも確認しましょう。

6.録画した番組やインターネット配信は?

今回取り上げているのは、テレビ放送を受信して公衆に見せる場面です。

録画しておいた番組を後日スクリーンで見せる場合は、録画物の「上映」として考える必要があります。受信した放送をその場で見せることとは、関係する行為や権利が異なります。

また、インターネットで配信される映像も、すべてテレビ放送と同じ扱いになるわけではありません。放送の同時配信なのか、見逃し配信なのか、それ以外の動画なのかによって、確認する内容が変わります。配信サービスの利用条件も確認が必要です。

「画面に映像を出す」という見た目が同じでも、映像の入手方法や見せ方によって、考えるべき権利は変わるのです。

7.まとめ

テレビ放送の公の伝達権は、受信したテレビ放送を、映像を拡大する特別な装置で公衆に見せることに関する、放送事業者の権利です。

前回の再放送権・有線放送権が「放送をさらに届ける場面」に関係するのに対し、今回は「受信した放送を人々に見せる場面」に関係します。

番組に含まれる著作物の著作権と、放送事業者の著作隣接権は、別々に確認する必要があります。非営利・無料という理由だけで、すべての許諾が不要になるわけではありません。

テレビ放送を使った催しを企画するときは、使用する装置、会場、料金、開催目的などを整理し、放送局や大会の窓口に必要な手続と利用条件を確認しておくとよいでしょう。

📚過去記事

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著作権の基本・著作物・著作者
著作者の権利(複製・上映・送信など)
著作者人格権・出版権
著作隣接権の基本・店舗BGM
実演家の権利
レコード製作者の権利
放送事業者の権利

🔗参考記事

※2026年10月4日時点で確認した資料を基に作成しています。個別の利用条件や申請方法は、各放送局・大会等の案内をご確認ください。

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