放送事業者の再放送権・有線放送権とは?日常の「再放送」との違い
「このドラマ、来週から再放送されるんだ」――普段の会話なら、以前放送された番組を後日もう一度流すことだと分かります。
ところが、放送事業者の権利として出てくる「再放送」は、この意味とは異なります。今回は、ケーブルテレビで地上波を見る仕組みを手がかりに、放送事業者の「再放送権」と「有線放送権」を整理します。
📖目次
地上波の番組をケーブルテレビでも見られるのは?
ケーブルテレビを利用して、地上波のテレビ番組を見ている方もいらっしゃると思います。
放送の届け方の一つに、ケーブルテレビの事業者がアンテナで地上波の放送を受信し、元の放送と同じ時間に、ケーブルを通じて各家庭へ届ける方法があります。録画して翌日に流すのではなく、放送中の内容を受信して届けるイメージです。
元の放送を行ったテレビ局から見れば、自分の放送が受信され、別の事業者によってさらに視聴者へ届けられることになります。
放送事業者の「有線放送権」とは
放送事業者は、自分が行った放送を他者が受信し、それを有線放送することについて、著作隣接権の一つである「有線放送権」を持っています(著作権法第99条)。
先ほどの例なら、ケーブルテレビの事業者がテレビ局の放送を受信し、ケーブルを通じて各家庭へ届ける場面です。ここでいう有線放送権は、元の放送を行ったテレビ局の権利です。
実際に、民間の地上波テレビ局から権利を預かり、ケーブルテレビ事業者との利用許諾契約や使用料の徴収を行う団体もあります。
ケーブルテレビの事業者自身も、その事業者が行った有線放送について別の著作隣接権を持ちます。今回は「元のテレビ局が持つ有線放送権」に注目しています。
「再放送権」は何が違うの?
放送事業者が行った放送を他者が受信し、それをさらに放送として届けることに関する権利が「再放送権」です(著作権法第99条)。ここでいう放送は、ケーブルによる有線放送とは区別されます。
再放送権と有線放送権は、どちらも「元の放送を受信する」ところから始まります。その後、放送で届ける場合は再放送権、有線放送で届ける場合は有線放送権、と整理できます。
文化庁の著作権テキストは、この再放送を「放送を受信してそのまま直ちに放送すること」と説明しています。ただし、第99条そのものに「そのまま直ちに」という文言があるわけではありません。この説明は、保存していた番組を後日流すという日常の意味との違いを捉える手がかりになります。
普段いう「ドラマの再放送」との違い
普段「ドラマの再放送」というと、以前放送した番組を、同じ放送局が後日もう一度流すことも指します。これは保存された番組を改めて使う場面です。
一方、今回の再放送権で考えるのは、放送事業者が行った放送そのものを受信し、それをさらに放送する場面です。二つを同じ意味で捉えると、権利の対象が分かりにくくなります。
もちろん、昔のドラマを改めて放送する際にも、番組に含まれる映像や音楽、出演者の実演などについて権利の確認が必要になる場合があります。ただ、それだけで第99条の再放送権の場面だとはいえません。
ケーブルテレビが地上波を同じ時間に届けることも、放送法に関する資料などでは「同時再放送」と呼ばれます。この記事で扱う著作権法上の権利としては、ケーブルによる例を「有線放送権」の場面として整理しています。
図表で整理:受信した後に何をする?
同じ「再放送」という言葉が使われていても、何を受信し、その後どう届けるのかを見ると整理しやすくなります。
| 場面 | 流れ | 今回の権利との関係 |
|---|---|---|
| 昔のドラマを後日もう一度放送 | 保存した番組 → 後日の放送 | 日常的な「再放送」。これだけで第99条の再放送権の場面とはいえない |
| 受信した放送をさらに放送 | 元の放送 → 受信 → 放送 | 再放送権 |
| 受信した放送をケーブルで届ける | 元の放送 → 受信 → 有線放送 | 有線放送権。地上波をケーブルテレビで同時に届ける例 |
前回取り上げた「複製権」は録音・録画する場合、「送信可能化権」はインターネット上でアクセスに応じて見られる状態にする場合に関わります。受信した後に何をするかによって、関係する権利が変わります。
利用するときに確認すること
例えばケーブルテレビで地上波を届ける場合、元の放送事業者の同意や著作隣接権の許諾が関わります。どの放送を、どの地域で、どのような方法で届けるかなどを確認し、契約で利用条件や使用料を定めることもあります。
ただし、あらゆる場合に同じ契約や支払いが必要になると一律にはいえません。著作権法第99条第2項には、法令の規定により行わなければならない有線放送についての例外もあります。また、番組に含まれる音楽など、放送事業者以外の権利も別に関係し得ます。
まとめ
放送事業者の再放送権・有線放送権は、自分の放送を他者が受信し、それをさらに放送・有線放送することに関する権利です。
地上波を受信してケーブルテレビで各家庭へ同時に届ける例は、有線放送権をイメージする手がかりになります。一方、再放送権の「再放送」は、昔の番組を後日もう一度流すという日常の意味とは異なります。
「元の放送を受信しているか」「受信した後にどの方法で届けるか」。この二つに注目すると、似た言葉を整理しやすくなります。
次回は、放送事業者が持つ「テレビジョン放送の伝達権」を見ていきます。
📚過去記事
- 第1回:著作権にはどんな権利があるの?
- 第2回:複製権ってなに?
- 第3回:上演権・演奏権
- 第4回:家でDVDを見るのはOK?上映会は?
- 第5回:公衆送信権ってなに?
- 第6回:公の伝達権ってなに?
- 第7回:口述権ってなに?──朗読・読み聞かせと著作権の考え方
- 第8回:展示権ってなに?|美術作品を「展示する権利」
- 第9回:譲渡権ってなに?―中古販売・消尽・フリマとの関係―
- 第10回:貸与権ってなに?
- 第11回:「頒布権」ってなに?
- 第12回:翻訳権・翻案権ってなに?
- 第13回:著作物とは?―著作権法上の意味を具体例でやさしく解説―
- 第14回:著作者とは誰?著作権者との違い・委託制作・所有権との関係をやさしく解説
- 第15回:法人著作とは?会社に著作権が帰属する条件と注意点を解説
- 第16回:映画の著作権は誰のもの?監督・制作会社・原作者の権利関係をわかりやすく解説
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🔗参考記事
- e-Gov法令検索「著作権法」(第99条)
- 文化庁「令和8年度著作権テキスト」(放送事業者の権利)
- 総務省「小規模施設特定有線一般放送に関するQ&A」(同時再放送の説明)
- 日本テレビジョン放送著作権協会(JASMAT)(有線放送権等の管理)
- NHK「NHK放送の再放送への同意について」(放送法上の再放送同意と、著作権法上の有線放送権の無償許諾)
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