放送事業者の複製権・送信可能化権とは?テレビ録画と無断アップロードを解説

前回は、テレビ局やラジオ局などの放送事業者にも、著作隣接権が認められていることをご紹介しました。

放送事業者には、自らが行った放送について、複製権、再放送権・有線放送権、送信可能化権、テレビジョン放送の伝達権が認められています。

今回から、それぞれの権利がどのような場面で関係するのかを、具体例とともに順番に見ていきます。

第2回では、放送事業者の「複製権」と「送信可能化権」を取り上げます。

テレビ番組を家庭で録画する場合と、録画した番組をインターネット上で見られるようにする場合とでは、何が違うのでしょうか。

放送事業者の複製権とは

放送事業者は、自らが行った放送に係る音や映像を、録音・録画することなどについて、複製権を持っています。

著作権法第98条では、録音や録画だけでなく、写真その他これに類似する方法による複製も対象とされています。

例えば、次のような行為が考えられます。

  • テレビ番組を録画する
  • ラジオ番組を録音する
  • テレビ画面に映っている映像を写真に撮る
  • 受信した放送の音や映像を記録媒体に保存する

動画や音声として保存する場合だけでなく、放送された映像を写真として固定する場合にも、放送事業者の複製権が関係することがあります。

また、テレビ局などの放送を直接受信して録音・録画する場合だけでなく、その放送がケーブルテレビなどの有線放送を通じて届けられ、それを受信して録音・録画する場合も対象になります。

家庭でテレビ番組を録画することも権利侵害になる?

放送事業者が複製権を持っているのであれば、「家庭でテレビ番組を録画することも、放送事業者の権利を侵害するのだろうか」と疑問に思うかもしれません。

著作権法には、一定の場合に、権利者の許諾を得ずに著作物などを利用できる「権利制限規定」があります。この規定は、放送事業者の著作隣接権についても準用されます。

そのため、自分や家族が後で視聴するために家庭でテレビ番組を録画する場合は、私的使用のための複製として、原則として放送事業者の許諾を得ずに行うことができます。

ポイント
私的使用として認められるのは、個人的または家庭内などの限られた範囲で使用することを目的とする場合です。家庭で見るために録画できることと、その録画物をほかの目的に自由に利用できることは、同じではありません。

私的使用のために録画した番組は自由に使える?

自分や家族が見るために録画した番組であっても、後から多くの人に配ったり、インターネット上で公衆が視聴できるようにしたりすれば、当初の私的使用の範囲を超えることになります。

ここで確認しておきたいのが、著作権法上の「公衆」という言葉です。

著作権法上の公衆には、不特定の人だけでなく、特定かつ多数の人も含まれます。

そのため、鍵付きのアカウントや特定のグループ内で公開する場合であっても、人数やその人たちとの関係などによっては、公衆に向けた利用に当たる可能性があります。

一方で、自分や家族などの限られた範囲で利用する場合まで、すべて公衆に当たるわけではありません。

注意点
「誰でも見られる状態ではないから大丈夫」と一律に判断するのではなく、誰を対象に、どのような方法で利用するのかを確認することが必要です。

放送事業者の送信可能化権とは

放送事業者は、自らが行った放送などを、インターネットを通じて公衆が視聴できる状態にすることについて、送信可能化権を持っています。

「送信可能化」は、日常生活ではあまり耳にしない言葉かもしれません。

簡単にいえば、公衆から求めがあったときに、インターネットなどを通じて自動的に送信できる状態にすることです。

例えば、録画したテレビ番組を動画投稿サイトのサーバーへアップロードし、利用者が好きな時間に視聴できる状態にする行為が考えられます。動画投稿サイトへのアップロードは、送信可能化の代表的な例です。

ポイント
実際に誰かがその動画を視聴したかどうかにかかわらず、公衆がアクセスすれば視聴できる状態にした段階で、送信可能化権が関係します。

録画した番組を動画投稿サイトへアップロードしたら?

テレビ番組を録画して動画投稿サイトへアップロードする場合には、「録画」と「アップロード」を分けて考える必要があります。

① 録画する段階

放送事業者の複製権が関係します。自分や家族が家庭で視聴するための録画であれば、私的使用のための複製として、原則として許諾を得ずに行うことができます。

② アップロードする段階

公衆が視聴できる状態にするため、放送事業者の送信可能化権が関係します。

必要な許諾を得ず、権利制限規定にも該当しないまま、録画した番組を公衆が視聴できる状態にすれば、放送事業者の送信可能化権を侵害する可能性があります。

家庭内で視聴するために録画できるからといって、その録画物をインターネット上へ自由に公開できるわけではありません。

「家庭で見るために録画すること」と「録画した番組を公衆が見られる状態にすること」は、別の行為です。それぞれの段階で、関係する権利を確認する必要があります。

TVerなどの公式配信はどう考える?

テレビ番組は、TVerなどの公式サービスでも配信されています。

TVerは、テレビ局が制作した番組などをインターネットで提供する民放公式のテレビ配信サービスです。放送終了後に番組を視聴できる見逃し配信のほか、放送時間に合わせたリアルタイム配信も行われています。

こうした公式配信は、第三者がテレビ番組を無断で録画し、動画投稿サイトなどへアップロードする場合とは異なります。

公式配信では、番組の配信に必要な許諾や権利処理を前提として、コンテンツが提供されています。

一方、第三者が録画した番組を必要な許諾なくアップロードする場合には、放送事業者の送信可能化権をはじめ、番組に関係するさまざまな権利が問題となる可能性があります。

注意点
TVerで番組を無料で視聴できることは、視聴者がその番組を自由に転載したり、再配信したりできることを意味するものではありません。同じ番組をインターネット上で視聴できる場合でも、公式配信と第三者による無断アップロードは分けて考える必要があります。

放送事業者以外の権利も関係する

テレビ番組を録画してインターネット上へ公開する場合、関係するのは放送事業者の権利だけではありません。

一つの番組には、脚本、音楽、映像、写真などの著作物が含まれ、俳優、歌手、演奏家などが出演していることもあります。また、番組内で、レコード製作者が製作した音源が使用されている場合もあります。

そのため、放送事業者の複製権や送信可能化権だけでなく、著作者、実演家、レコード製作者などの権利も関係する可能性があります。

放送事業者から許諾を得たとしても、番組に含まれるすべての著作物や実演を自由に利用できるとは限りません。

反対に、番組に含まれる音楽などの著作権者から許諾を得ても、放送事業者の著作隣接権について、別に許諾が必要となる場合があります。

テレビ番組などを利用するときは、番組にどのような著作物や実演が含まれ、誰のどの権利が関係するのかを、利用方法に応じて確認することが大切です。

まとめ

放送事業者は、自らが行った放送について、複製権と送信可能化権を持っています。

テレビ番組を録画したり、ラジオ番組を録音したりする場合には、放送事業者の複製権が関係します。

ただし、自分や家族が後で視聴するために家庭で録画する場合は、私的使用のための複製として、原則として放送事業者の許諾を得ずに行うことができます。

一方、録画した番組を動画投稿サイトへアップロードし、公衆が視聴できる状態にする場合には、放送事業者の送信可能化権が関係します。

家庭内で視聴するために録画できることと、その録画物を公衆へ公開できることは同じではありません。

また、一つの番組には、放送事業者だけでなく、著作者、実演家、レコード製作者など、複数の権利者が関係していることがあります。

放送された番組を利用するときは、「録画すること」と「公衆が視聴できる状態にすること」を分けて考え、それぞれの行為にどのような権利が関係するのかを確認することが大切です。

次回は、放送事業者の「再放送権・有線放送権」について、日常的に使う「再放送」という言葉との違いも含めて見ていきます。

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