有線放送事業者の放送権・再有線放送権とは?違いと具体例を解説

テレビを視聴するとき、私たちは地上波放送やBS放送、ケーブルテレビなどを利用しています。

また、ラジオにも電波を使った放送のほか、有線で音楽や情報を届ける仕組みがあります。

普段はあまり意識しませんが、こうした番組や音楽が私たちに届くまでには、さまざまな送信方法が使われています。

著作権法では、電波を使った「放送」と、ケーブルなどを使った「有線放送」を区別し、それぞれの事業者に著作隣接権を認めています。

これまでのシリーズでは、放送事業者の「再放送権」と「有線放送権」を解説しました。

今回は、有線放送事業者が持つ「放送権」と「再有線放送権」について取り上げます。

名前がよく似ているため、少し分かりにくい権利ですが、まずは放送と有線放送の具体例から確認していきましょう。

1.放送と有線放送は何が違う?

著作権法第2条第1項第8号では、「放送」を、公衆が同じ内容を同時に受信することを目的として行われる無線通信による送信と定義しています。

一方、第9号の2では、「有線放送」を、公衆が同じ内容を同時に受信することを目的として行われる有線電気通信による送信と定義しています。

どちらも、多くの人に同じ内容を同時に届ける仕組みですが、大きな違いは送信方法です。

放送の具体例

放送の種類具体例
地上波テレビ放送NHK、民放テレビ局の地上波放送
ラジオ放送AM・FM放送
衛星放送BS放送・CS放送

例えば、地上波テレビ放送では、放送局などから送信された電波を、家庭のアンテナなどで受信します。

ラジオ放送も、電波を使って音声を届ける仕組みです。

BS放送やCS放送は、人工衛星を利用して番組を届けます。

このように、テレビだけでなくラジオや衛星放送も、著作権法上の「放送」に該当する代表的な例です。

有線放送の具体例

種類内容
地上波テレビの再送信NHKや民放の地上波番組をケーブル経由で届ける
BS放送の再送信衛星放送の番組をケーブル経由で届ける
CSなどの専門チャンネル映画、スポーツ、音楽などの専門番組を届ける
自主放送・コミュニティチャンネル地域ニュース、お祭り、行政情報、防災情報などを届ける
有線音楽放送店舗や施設などに音楽や情報を有線で届ける

有線放送というと、ケーブルテレビを思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、有線放送は映像に限られません。音声を届ける有線音楽放送もあります。

例えば、店舗や施設などに音楽を届けるサービスがその一例です。

ただし、現在の音楽配信サービスにはインターネットを利用するものもあり、すべてが著作権法上の有線放送に該当するわけではありません。

また、上の表にある専門チャンネルについても、実際の送信方式や番組の供給方法によって、法律上の整理が異なる場合があります。

ここでは、有線放送がどのような場面で利用されているのか、その全体像をつかんでいただければと思います。

💡ポイント
放送と有線放送の違いは、テレビかラジオかではなく、無線で送信するか、有線で送信するかという点にあります。

なお、インターネットを利用した動画配信や音楽配信は、送信の仕組みによって「自動公衆送信」などに該当する場合があるため、別に考える必要があります。

2.有線放送事業者にも著作隣接権がある

著作権法では、作品を創作した著作者だけでなく、作品を人々に届ける役割を担う人や事業者にも、一定の権利を認めています。

これが「著作隣接権」です。

著作隣接権は、実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者に認められています。

有線放送事業者の権利は、昭和61年(1986年)の著作権法改正によって新設され、翌1987年に施行されました。

ケーブルテレビなどの有線放送が発展するなかで、有線放送事業者にも著作隣接権による保護が設けられたのです。

現在、有線放送事業者には、次の権利が認められています。

権利著作権法
複製権第100条の2
放送権・再有線放送権第100条の3
送信可能化権第100条の4
有線テレビジョン放送の伝達権第100条の5

今回取り上げるのは、このうち「放送権」と「再有線放送権」です。

これらの権利は、番組の著作権そのものではなく、有線放送という送信行為に関する権利です。

例えば、ケーブルテレビ局が制作した地域情報番組には、映像や音楽などの著作権が関係する場合があります。

それとは別に、ケーブルテレビ局が行う有線放送についても、著作隣接権による保護が認められる場合があるのです。

3.有線放送事業者の「放送権」とは?

著作権法第100条の3には、次のように定められています。

有線放送事業者は、その有線放送を受信してこれを放送し、又は再有線放送する権利を専有する。

この条文には、二つの権利がまとめて規定されています。

まずは「放送権」から見ていきましょう。

有線放送事業者の放送権とは、その有線放送を受信して、さらに無線による放送を行うことについて、許諾するかどうかを決められる権利です。

少しイメージしにくいので、仮定の例で考えてみます。

ケーブルテレビ局Aが、地域のお祭りを自局のチャンネルで有線放送しているとします。

その有線放送を別の放送事業者Bが受信し、Bのテレビ放送として電波を使って送信する場合です。

このとき、Aの有線放送を受信して「放送」する行為について、Aの放送権が問題になります。

📺 放送権のイメージ

ケーブルテレビ局A
有線放送
受信
→
放送事業者B
無線で放送

※条文の仕組みを説明するための仮定の例です。

ここで大切なのは、Aが制作した番組をBが利用するというだけではないことです。

著作権法第100条の3は、「その有線放送を受信して」放送する行為を対象としています。

例えば、Aが制作した番組の録画データをBに提供し、Bがそのデータを使って放送する場合は、Aの有線放送を受信して放送する場合とは区別して考える必要があります。

なお、ここで紹介したのは、条文の仕組みを説明するための仮定の例です。実際の事業者間で行われている具体的な利用事例として紹介しているものではありません。

4.有線放送事業者の「再有線放送権」とは?

次に「再有線放送権」です。

再有線放送権とは、有線放送事業者の有線放送を受信し、別の有線放送事業者がさらに有線放送することについて、許諾するかどうかを決められる権利です。

こちらも仮定の例で考えてみましょう。

ケーブルテレビ局Aが、地域のイベントを自局のチャンネルで有線放送しているとします。

別のケーブルテレビ局Bが、その有線放送を受信して、Bの加入者にも有線放送する場合です。

このような行為について、Aの再有線放送権が問題になります。

📺 再有線放送権のイメージ

ケーブルテレビ局A
有線放送
受信
→
ケーブルテレビ局B
再有線放送

※条文の仕組みを説明するための仮定の例です。

第3章の放送権との違いは、受信した後の送信方法です。

放送権では、受信した有線放送を無線で放送します。

一方、再有線放送権では、受信した有線放送をさらに有線で送信します。

💡ポイント
ここでいう「再有線放送」は、同じケーブルテレビ局が以前放送した番組をもう一度流すという意味ではありません。日常的に使う「再放送」とは意味が異なるため、注意が必要です。

5.放送事業者の権利と比較してみよう

これまでのシリーズでは、放送事業者の「再放送権」と「有線放送権」を解説しました。

今回の「放送権」「再有線放送権」とは、どのような違いがあるのでしょうか。

四つの権利を比較すると、次のようになります。

最初の送信受信後の送信権利
放送(無線)放送(無線)放送事業者の再放送権
放送(無線)有線放送放送事業者の有線放送権
有線放送放送(無線)有線放送事業者の放送権
有線放送有線放送有線放送事業者の再有線放送権

放送事業者の再放送権と有線放送権は、著作権法第99条に規定されています。

一方、有線放送事業者の放送権と再有線放送権は、第100条の3に規定されています。

いずれも、最初の送信を受信して、さらに別の送信を行うことに関係する権利です。

違いを理解するには、二つの点を確認すると分かりやすくなります。

まず、最初に行われた送信が「放送」なのか「有線放送」なのか。

そして、その送信を受信した後に「放送」するのか「有線放送」するのか。

この組み合わせによって、関係する権利が変わります。

6.地上波放送の再送信と自主放送はどう違う?

ここまで、有線放送事業者の権利について説明してきました。

ただし、ここで一つ重要な注意点があります。

第1章では、地上波放送やBS放送の再送信も、有線放送の具体例として紹介しました。

では、ケーブルテレビ局が地上波放送を再送信した場合、その再送信にも有線放送事業者の著作隣接権が認められるのでしょうか。

実は、そうではありません。

著作権法第9条の2では、有線放送事業者の著作隣接権による保護を受ける有線放送の範囲について、「放送を受信して行うものを除く」と定めています。

つまり、テレビ局の地上波放送を受信して、ケーブルテレビ局が加入者に再送信する場合、その再送信自体には有線放送事業者の著作隣接権による保護が認められません。

一方、ケーブルテレビ局が独自に地域情報番組などを有線放送する場合には、有線放送事業者の著作隣接権による保護の対象となり得ます。

この違いを表に整理してみましょう。

区分地上波放送などの再送信自主放送
内容他の放送事業者の放送を受信して有線で届ける地域情報番組などを独自に有線放送する
具体例NHKや民放テレビ局の番組の再送信地域ニュース、お祭り、防災情報など
有線放送事業者の著作隣接権その再送信自体は保護対象外保護対象となり得る

ここでいう「自主放送」は、必ずしもケーブルテレビ局が番組のすべてを自社制作していることを意味しません。

外部から番組の提供を受けて有線放送する場合もあります。

ただし、その場合の権利関係は、番組の供給方法や契約内容などによって異なります。

⚠️注意点
有線放送として番組が届けられていることと、その有線放送が有線放送事業者の著作隣接権によって保護されることは、必ずしも同じではありません。

7.有線放送事業者の許諾だけで利用できる?

ここまで、有線放送事業者の放送権と再有線放送権について解説してきました。

では、有線放送事業者から許諾を得れば、その番組を自由に放送したり、再有線放送したりできるのでしょうか。

必ずしもそうではありません。

番組には、音楽、映像、写真、脚本など、さまざまな著作物が含まれていることがあります。

また、出演者の実演やレコードなどについて、別の著作隣接権が関係する場合もあります。

有線放送事業者の放送権・再有線放送権は、これらの権利をすべてまとめて処理できる権利ではありません。

例えば、ケーブルテレビ局が有線放送した地域情報番組を別の事業者が利用する場合、番組に含まれる音楽や映像などについて、別途権利処理が必要になることがあります。

逆に、番組に含まれる著作物について利用許諾を得ていても、それだけで有線放送事業者の著作隣接権の問題が解決するとは限りません。

💡ポイント
「番組の内容についての権利」と「有線放送という送信行為についての権利」は、分けて確認する必要があります。

実際の利用に当たっては、著作権や著作隣接権のほか、契約内容や権利制限規定の適用なども確認することが大切です。

8.まとめ|最初の送信と、その後の送信に注目しよう

今回は、有線放送事業者の「放送権」と「再有線放送権」について解説しました。

放送権は、有線放送を受信して、無線による放送を行うことに関する権利です。

再有線放送権は、有線放送を受信して、さらに有線放送することに関する権利です。

どちらも著作権法第100条の3に規定されています。

これらの権利を理解するためには、「最初に誰が、どのような方法で送信したものなのか」、そして「それを受信した後、どのような方法で送信するのか」に注目することが大切です。

また、地上波放送などをケーブルテレビで再送信する場合と、ケーブルテレビ局が自主放送を行う場合とでは、著作隣接権の考え方が異なります。

放送や有線放送は、私たちの生活に身近な仕組みですが、その権利関係は必ずしも単純ではありません。

番組そのものの著作権と、番組を届けるための放送・有線放送に関する著作隣接権を区別して考えることが、理解への第一歩になるのではないでしょうか。

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著作隣接権の基本・店舗BGM
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放送事業者の権利
有線放送事業者の権利

有線放送事業者や放送事業者の権利について、こちらの記事でも解説しています。

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