放送事業者の権利とは?テレビ局・ラジオ局の著作隣接権を解説

テレビやラジオでは、ドラマ、ニュース、スポーツ中継、音楽番組など、さまざまな番組が放送されています。

一つの番組の中には、脚本や音楽、映像、美術、写真などの著作物が含まれ、俳優や歌手、演奏家などが出演していることもあります。

それでは、その番組を私たちのもとへ届けているテレビ局やラジオ局にも、著作権法上の権利が認められているのでしょうか。

著作権法では、テレビ局やラジオ局などの「放送事業者」にも、著作隣接権が認められています。

ただし、放送事業者の権利は、番組を創作した人に認められる著作権とは異なります。

今回は、放送事業者とはどのような者を指すのか、なぜ著作隣接権が認められているのか、そして、どのような権利を持っているのかを見ていきましょう。

放送事業者とは

著作権法では、放送事業者を「放送を業として行う者」と定めています。

一般的には、テレビ局やラジオ局をイメージすると分かりやすいでしょう。

ここでいう「業として」とは、必ずしも利益を得ることだけを目的としているという意味ではありません。放送を継続的な事業として行っている者が対象となります。

私たちは普段、完成した番組をテレビやラジオで視聴しています。しかし、番組が放送されるまでには、番組の企画や編成、出演者や制作会社との調整、放送設備の整備や維持など、さまざまな作業が行われています。

放送事業者は、こうした過程を経て、番組を多くの人へ同時に届ける役割を担っています。

著作権法上の「放送」とは

著作権法上の「放送」とは、公衆によって同じ内容が同時に受信されることを目的として行う無線通信による送信をいいます。

代表的なものが、テレビ放送やラジオ放送です。例えば、テレビ局から送られた番組を、多くの視聴者が決められた時刻に同時に受信して視聴する場合が「放送」に当たります。

一方、インターネット上で、利用者がそれぞれ好きな時間に動画を選んで視聴するサービスは、一般的なテレビ放送と同じ仕組みではありません。

また、ケーブルテレビなどの有線設備を使って番組を届ける「有線放送」も、著作権法では放送とは分けて定められています。

有線放送を業として行う「有線放送事業者」にも著作隣接権が認められていますが、その権利については、放送事業者編のあとに改めて取り上げます。

なぜ放送事業者に著作隣接権が認められるのか

著作権は、小説、音楽、絵画、写真、映像などの著作物を創作した人に認められる権利です。

これに対して、放送事業者は、必ずしも番組に含まれる著作物を自ら創作した者とは限りません。

それでも、放送事業者は、番組を編成し、放送設備を使って、多くの人へ放送を届ける役割を果たしています。そのためには、多くの人や設備が関わり、相当な費用や労力も必要になります。

もし、第三者が放送を自由に録画し、別の場所で再放送したり、インターネットで配信したりできるとすれば、放送事業者が行った放送を、そのまま利用されることになります。

そこで著作権法は、著作物を創作した者とは別に、放送によって著作物などを公衆へ伝える役割を担う放送事業者にも、著作隣接権を認めています。

ポイント
放送事業者は、番組を創作した者としてだけではなく、番組を編成し、放送によって多くの人へ届ける役割に着目して保護されています。

テレビ局が番組を放送しているからといって、その番組に関するすべての権利をテレビ局が持っているとは限りません。

例えば、一つの音楽番組にも、次のような権利者が関係している可能性があります。

  • 作詞家・作曲家などの著作者
  • 歌手や演奏家などの実演家
  • 使用される音源のレコード製作者
  • 番組を放送する放送事業者

ドラマであれば、原作者、脚本家、音楽の著作者、俳優、番組の製作者など、さらに多くの人が関係することもあります。

このうち、放送事業者に認められるのは、放送した番組に含まれる著作物すべての著作権ではありません。放送事業者は、自ら行った「放送」について著作隣接権を持ちます。

したがって、「番組の著作権」と「放送事業者が持つ著作隣接権」は、分けて考える必要があります。

テレビ局が自ら番組を制作している場合には、放送事業者としての著作隣接権だけでなく、契約や番組の制作実態に応じて、番組について別の権利を持つこともあります。

しかし、それは放送事業者だから当然に番組の著作権をすべて持つ、という意味ではありません。

一つの番組に複数の権利が関係する

テレビ番組やラジオ番組を利用するときには、一つの権利だけを確認すればよいとは限りません。

例えば、放送された音楽番組を録画して別の目的で利用する場合、放送事業者の権利だけでなく、番組に含まれる音楽の著作権、出演者の実演家としての権利、使用された音源のレコード製作者の権利などが関係する可能性があります。

つまり、放送事業者から許諾を得れば、番組に含まれるすべての著作物や実演を自由に利用できるとは限りません。

反対に、番組に含まれる音楽などの著作権者から許諾を得ても、その利用方法が放送事業者の著作隣接権に及ぶ場合には、放送事業者の許諾が別に必要となることがあります。

注意点
一つの番組に複数の権利者が関係している場合、「一人から許諾を得たので、番組全体を自由に利用できる」とは限りません。誰のどの権利が関係するのかを、利用方法に応じて確認する必要があります。

放送事業者に認められる4つの権利

放送事業者には、自ら行った放送について、次の権利が認められています。

権利権利の大まかな内容
複製権放送を受信して、音や映像を録音・録画することなどに関する権利
再放送権・有線放送権放送を受信して、再び放送したり、有線放送したりすることに関する権利
送信可能化権放送を受信・録音・録画して、インターネットなどで視聴できる状態にすることに関する権利
テレビジョン放送の伝達権テレビ放送を受信し、特別な装置を用いて映像を拡大して公衆に伝えることに関する権利

「録画する」「別の場所で放送する」「インターネットで見られるようにする」「大きな画面で公衆に見せる」など、利用の方法によって関係する権利が異なります。

なお、テレビ番組を家庭で録画する場合など、著作権法上の権利制限規定によって、権利者の許諾を得ずに利用できる場合もあります。

そのため、放送を録画したからといって、すべての場合に権利侵害になるわけではありません。

それぞれの権利がどのような場面で働くのかについては、次回から具体例を交えながら詳しく見ていきます。

放送事業者の権利と著作者の権利との関係

放送事業者に著作隣接権が認められても、番組に含まれる著作物について、著作者が持っている権利がなくなったり、弱くなったりするわけではありません。

著作権法は、著作隣接権について、著作者の権利に影響を及ぼすものと解釈してはならないと定めています。

これは、これまでご紹介してきた実演家やレコード製作者の権利についても同じです。

一つの番組に著作者、実演家、レコード製作者、放送事業者などの権利が重なっていても、それぞれの権利は別に保護されます。

放送事業者の権利があるから、著作者の権利を確認しなくてよいということにはなりません。

放送事業者と有線放送事業者は別の権利者

著作権法では、「放送事業者」と「有線放送事業者」を分けて定めています。

放送事業者は放送を業として行う者であり、有線放送事業者は有線放送を業として行う者です。両者に認められる権利には似ている部分がありますが、同じものではありません。

特に注意したいのが、放送事業者の「有線放送権」と、「有線放送事業者の権利」との違いです。

放送事業者に認められる有線放送権は、放送事業者が行った放送を、第三者が受信して有線放送することに関する権利です。

一方、有線放送事業者の権利は、有線放送を行った事業者自身に認められる著作隣接権です。

名称が似ているため、今の段階では少し分かりにくく感じるかもしれません。それぞれの権利を順に見ていくと違いがつながってきますので、有線放送事業者の権利については、放送事業者編のあとに改めてご紹介します。

まとめ

放送事業者とは、テレビ局やラジオ局など、放送を業として行う者をいいます。

放送事業者は、著作物を創作したことだけを理由に保護されるのではありません。番組を編成し、放送設備を用いて、多くの人へ放送を届ける役割に着目して著作隣接権が認められています。

放送事業者に認められているのは、複製権、再放送権・有線放送権、送信可能化権、テレビジョン放送の伝達権です。

ただし、一つの番組には、著作者、実演家、レコード製作者など、複数の権利者が関係していることがあります。番組の著作権と、放送事業者が自ら行った放送について持つ著作隣接権は、同じものではありません。

次回は、放送事業者に認められている複製権、再放送権・有線放送権、送信可能化権について、具体例を交えながら見ていきます。

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