これ、使っていいのかな? ― 作者がわからない作品と著作権の話

※当事務所では、知的財産の基本的な考え方や、ビジネスへの活かし方についての情報発信・ご相談対応を行っています。
なお、特許・商標等の出願代理や特許庁への手続代理は弁理士の専門業務となるため、必要に応じて信頼できる専門家との連携・橋渡しを行っています。

お店をされている方、個人で活動されている方、ハンドメイドや創作をしている方など、「これって著作権的に大丈夫?」と思う場面って、実はけっこうあるのではないでしょうか。

たとえば…

  • 昔の本に載っていた素敵な詩をチラシに使いたい
  • インターネットで見つけた画像を、SNSの投稿に添えたい
  • 作者不明のイラストを、POPやメニューに入れてみたい
  • こういったとき、「誰が作ったかわからないし、もう古いものだから自由に使っていいんじゃないかな」と思ってしまうこともありますよね。

    でも、実はそこに「著作権」という見えないルールが関わってくるんです。
    最近、「ネットで見つけた画像や音源を使ってもいいの?」という話題を見聞きすることがあります。

    実は、それが誰が作ったかわからない=著作者不明の著作物だった場合、思わぬトラブルに発展することも…。

    今回は、著作権シリーズ第4回として、「著作者がわからない作品を使うときの注意点」について、具体例を交えてわかりやすくご紹介します。

     

    「著作者不明の著作物」とは?

    著作者不明とは、著作物の作成者がわからない・連絡がつかない状態のこと。
    例えば:

    • 作者が偽名やハンドルネームで公開している
    • 出所が分からず、どこから広まったかが不明
    • 古すぎて記録が残っていない

    などが挙げられます。


    身近な事例でみてみましょう

    ①童謡や唱歌

    昔から歌われている童謡や唱歌の中には、著作者や権利関係を確認しないまま「自由に使える」と思われがちなものがあります。

    地域イベントで童謡を流したいと思ったとき、「この曲って自由に使えるの?」と悩む場面もあるかもしれません。

    ②戦前・戦中の絵やポスター

    古い広告や絵には作者名が記載されていなかったり、情報が消えてしまっているケースが多くあります。

    お店の内装に昔のポスターを飾りたい、というとき「誰が描いたものか分からない…」ということも。

    ③ネット上の画像・ミーム

    SNSでよく見かける画像やイラストも、投稿元が消えて出所不明になることがあります。

    ホームページやSNS投稿に使いたい画像が「誰の作品かわからないから使えないかも…」と立ち止まる場面も出てくるかもしれません。


    著作者が不明=著作権フリーではありません

    まず大切なポイントは、「作者が分からないからといって、自由に使っていいわけではない」ということです。

    著作権は、作品が完成したときに自動的に発生します。そして、基本的には作者の死後70年までは守られます(法人などの場合は公表後70年)。

    つまり、作者が不明でも、著作権が残っている可能性があるということなんです。
    「誰かわからない=自由に使える」というわけではなく、著作権はしっかり存在する場合があるので注意が必要です。


    使いたいときの調査方法は?

    「調べるっていっても、どうやって…?」
    という方のために、やさしくポイントをまとめてみました。

    1. いつ頃のものかを確認する

    書籍や映像には「発行年」「制作年」が書かれていることがあります。
    これをもとに、著作権の保護期間が切れているかを推測できます。

    👉 個人の作品であれば、原則として著作者の死後70年が保護期間です。
    👉 法人などが作った場合は、公表から70年です。

    2. 著作者を調べる

    ・本の奥付や出版情報を見る
    ・同じ作品が載っている他の資料を探す
    ・国立国会図書館やWebアーカイブを検索する

    など、意外と「少し深掘りするだけ」で手がかりが見つかることもあります。

    3. 権利の引き継ぎ先(相続人や団体)を探る

    出版社や団体が著作権を管理していることもあるので、連絡して確認するのも一つの方法です。

    4. どうしても分からない場合は「裁定制度」も

    調べても著作権者が見つからない場合には、「文化庁の裁定制度」という手段があります。
    一定の条件を満たせば、文化庁に申請して利用許可を得ることができます。
    少し手間はかかりますが、きちんとした手続きを経ることで安心して使えるようになります。


    裁定制度とは?

    文化庁が提供している制度で、著作権者がわからない著作物について、「かなり調べたけれど特定できなかった」と認められれば、申請によって使用が可能になります。

    なお、2026年度からは、権利者の意思確認ができない未管理著作物について利用を可能にする新たな裁定制度も始まっており、利用目的や状況に応じて確認が必要です。

    📌申請に必要な情報内容
    調査内容どんな方法で、どれだけ調べたか
    利用目的商用/非商用、使用媒体
    使用方法使用範囲、期間など

    ※許可まで時間がかかることもあるため、余裕を持った準備が安心です。


    個人・小規模事業者の方に伝えたいこと

    著作権の問題は、「知らなかった…」では済まされないこともあります。

    特に:

    • PRチラシやWebサイトの素材
    • 地域イベントや店舗装飾
    • SNS・YouTube投稿のBGMや画像

    などは、営利目的とみなされることがあるため要注意です。もし出所が不明なら、著作権フリー素材サイトを活用するのがおすすめです。

    🖼️ 写真素材:【写真AC】【O-DAN】【Unsplash】
    🎵 音源素材:【DOVA-SYNDROME】【OtoLogic】 など


    まとめ:一緒に考えていけたらうれしいです

    著作権のことって、正解がすぐに分かるわけではないことも多いです。

    調べるのも不安だし、「大丈夫かな」と思いながら踏み出せずにいる方も多いのではないでしょうか。

    そんなときこそ、一人で抱え込まず、誰かと一緒に考えてみるという選択肢もアリだと思っています。

    私自身も学びを続けながら、「知らなかった」で困る方を少しでも減らせるよう、これからも知財をわかりやすく発信していきたいと思っています。

    知財をもっと身近に。もっと味方に。


    📚過去記事

    📚 著作権シリーズまとめ(全12回)はこちら
    → 著作権の基礎から実務までをまとめて確認できます

    📖 著作権の基礎シリーズ第1回(基礎から読みたい方はこちら)
    → 「著作物とは?どこから著作権で守られる?」を初心者向けに解説

    🔍 知財シリーズまとめ(全7回)はこちら
    → 知的財産の基本から実務まで全体をまとめて確認できます

    🔗参考記事

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