農業を始めるための心構え|事業として長く続ける考え方

「農業を始めてみたい。」

定年後の新たな挑戦として農業を考えている方、地方へ移住して農業に取り組みたい方、家業を引き継ぐために農業を学び始める方など、農業を始めるきっかけはさまざまです。

農業は、自然と向き合いながら作物や家畜を育てる魅力のある仕事です。

しかし、農業を長く続けていくためには、栽培技術を身につけるだけではなく、どのような農業を目指すのか、どのように収益を生み出すのかを考えておく必要があります。

今回は、農業を一つの「事業」として捉え、始める前に考えておきたい心構えについてご紹介します。

農業も一つの「事業」です

農業というと、「作物を育てる仕事」というイメージを持つ方が多いかもしれません。

もちろん、作物や家畜を育てることは農業の基本です。しかし、収穫した農産物を販売し、収益を得ながら経営を続けていくためには、農業も一つの事業として考えることが大切です。

この考え方は、一人で農業を始める場合でも、家族で取り組む場合でも、農業法人として事業を行う場合でも変わりません。

何を育てるのかだけでなく、誰に、どのような方法で販売するのか、どのくらいの収益を目指すのかまで考える必要があります。

農産物を作ることができても、販売先が決まっていなければ、安定した収益にはつながりません。反対に、販売したい相手や市場が見えてくると、求められる品種や品質、生産量なども考えやすくなります。

農業を始める前に、まずは「どのような農業を営みたいのか」を考えることが、長く続けるための第一歩になります。

数年後の自分を思い描いてみましょう

農業を始めるときは、「今、何をするか」だけでなく、「数年後にどのような農業を営んでいたいのか」を思い描いてみることも大切です。

例えば、地域の直売所で新鮮な野菜を販売したい、こだわりの農産物をブランド化したい、地域の特産品づくりに取り組みたい、スマート農業を活用して効率的な経営を目指したいなど、人によって将来の姿は異なります。

将来の目標が見えてくると、現在の自分に足りないものも分かりやすくなります。

栽培技術を身につける必要があるのか、農地や機械を確保する必要があるのか、販売先を開拓する必要があるのかなど、将来と現在との間にある課題を具体的に整理できるようになります。

このように、将来のありたい姿を描き、現在とのギャップを整理しながら進む道筋を考える方法は、「経営デザインシート」の考え方にも通じています。

自身の強みや将来のビジョンを可視化することで、経営計画も立てやすくなります。

目指す農業に必要なことを整理する

将来の姿が見えてきたら、それを実現するために必要なことを具体的に整理していきます。

まず考えたいのが、どのような作物を育て、どのくらいの規模で始めるのかということです。

作物によって、必要な農地の広さ、栽培に適した気候や土壌、収穫までにかかる期間、必要となる機械や施設は異なります。自分が育てたい作物だけでなく、地域の環境や販売先の需要も踏まえて検討することが大切です。

農業機械やビニールハウスなどの施設が必要な場合には、購入するのか、リースを利用するのか、中古品を活用するのかという選択もあります。

購入すれば長く使用できますが、最初にまとまった資金が必要になります。リースであれば初期負担を抑えられる可能性がありますが、継続的な支払いが発生します。

経営規模や使用する期間、維持管理にかかる費用などを考えながら、自分の計画に合った方法を選ぶ必要があります。

また、一人で取り組むのか、家族と協力するのか、将来的に従業員を雇うのかによっても、必要な規模や経営の進め方は変わります。

従業員を雇う場合には、人件費だけでなく、働きやすい環境づくりや労務管理などについても考えなければなりません。

近年では、ICTやロボット技術などを活用したスマート農業も、経営上の選択肢の一つです。

スマート農業を取り入れることで、作業の効率化や負担の軽減につながる可能性があります。一方で、導入費用や操作方法、経営規模に合っているかどうかも検討する必要があります。

新しい技術だから取り入れるのではなく、自分が目指す農業を実現するために必要かどうかという視点で考えることが大切です。

資金と収益の見通しを立てる

農業を始めるためには、農地、機械、施設、種苗、肥料など、さまざまな費用がかかります。

作物によっては、栽培を始めてから収穫し、販売代金を受け取るまでに長い期間が必要になることもあります。その間の生活費や運転資金についても考えておかなければなりません。

そのため、どの時期に、どのくらいの支出があり、いつ頃から収入を得られるのかを整理しておくことが重要です。

販売価格や収穫量は、天候や市場の動きなどによって変わる可能性があります。計画どおりに進まない場合も想定し、余裕を持った資金計画を立てる必要があります。

将来の目標から逆算して、必要な設備投資や人員、販売計画を整理することで、事業計画や収益計画も立てやすくなります。

最初から完璧な計画を作る必要はありません。実際に準備を進める中で分かったことを反映し、必要に応じて計画を見直していくことも大切です。

一人で悩まず相談することも大切です

農業を始めようと思っても、農地の確保、栽培技術、資金、販売先など、分からないことはたくさんあります。

そのようなときは、一人で判断せず、市町村や都道府県の農業経営・就農支援窓口、農業普及指導センター、農業委員会、JAなどへ早めに相談することが大切です。

相談することで、地域の農業事情や研修先、利用できる可能性のある支援制度など、自分だけでは得にくい情報を知ることができます。

また、農業は水路や農道の維持、地域での共同作業など、周囲の農業者や地域との関わりが必要になることもあります。

農地や設備を決めてから相談するのではなく、構想を考えている段階から地域の関係機関につながることで、より現実的な計画を立てやすくなるでしょう。

まとめ

農業を始めるためには、作物を育てる技術だけでなく、「どのような農業を目指したいのか」を考え、事業として計画を立てることが大切です。

何を育てるのか、誰にどのように販売するのか、どのくらいの規模で始めるのか、機械や施設をどのように準備するのかなど、考えておきたいことは数多くあります。

一人で取り組むのか、家族で取り組むのか、従業員を雇うのかによっても、必要な資金や経営の形は変わります。スマート農業をはじめとする新しい技術についても、自分が目指す農業に必要かどうかという視点で検討することが大切です。

将来のありたい姿を思い描き、現在とのギャップを一つずつ整理することで、今から取り組むべきことが見えやすくなります。

農業には、正解が一つあるわけではありません。だからこそ、自分がどのような農業を目指したいのかを考え、その夢や目標に向かって一歩ずつ進んでいくことが大切ではないでしょうか。

次回予告
次回は、新しく農業を始める方を支える「認定新規就農者制度」について、分かりやすくご紹介します。

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