農振とは?農地転用との違いと農振除外の流れ・期間を解説
前回は、農地を住宅や店舗、駐車場など、農地以外の目的で利用するために必要となる「農地転用」についてご紹介しました。
農地転用について調べていると、「農振(のうしん)」という言葉を目にすることがあります。
「農地転用と農振は何が違うの?」「農振に入っている土地には家を建てられないの?」と、疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
農地を活用するためには、農地転用の手続きだけでなく、その土地が農業振興地域の中にあるか、さらに農用地区域に指定されているかを確認する必要があります。
今回は、農業・水産業支援シリーズの第3回として、農業振興地域の仕組みや農地転用との違い、農振除外から工事着工までのおおまかな流れについて、分かりやすくご紹介します。
📖目次
農業振興地域(農振)とは?
農業振興地域とは、将来にわたって農業を振興していく必要がある地域として、都道府県知事が指定する地域です。
この制度は、農業に適した土地を計画的に確保し、農業の発展に必要な環境を守ることを目的としています。
農業振興地域に指定された地域では、市町村が「農業振興地域整備計画」を定め、農業を重点的に進める区域や、土地の利用方法などを明らかにします。
一般的には、農業振興地域や農用地区域をまとめて「農振」と呼ぶことがあります。
ただし、農業振興地域に含まれている土地が、すべて同じように農地転用を制限されるわけではありません。
土地の活用を考える際には、農業振興地域に入っているかだけでなく、その中の「農用地区域」に指定されているかを確認することが重要です。
農業振興地域と農用地区域の違い
農業振興地域の中には、農業上の利用を特に確保する必要がある土地として、「農用地区域」が定められています。
農用地区域には、集団的に存在する農地や、農業用の用排水施設などが整備された土地、将来にわたって農業に利用することが適当な土地などが含まれます。
農用地区域内の農地は、農業のために利用することが原則です。そのため、住宅や店舗、駐車場などへ転用することは、原則として認められていません。
一方、農業振興地域の中であっても、農用地区域に指定されていない土地もあります。
一般に、農用地区域は「青地」、農業振興地域内で農用地区域に指定されていない土地は「白地」と呼ばれることがあります。
ポイント
「農振に入っているか」という確認だけではなく、「農用地区域に指定されているか」まで確認することが大切です。
農振と農地転用は何が違う?
「農振」と「農地転用」は、どちらも農地に関係する制度ですが、その目的と役割は異なります。
| 項目 | 農業振興地域制度 | 農地転用許可制度 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 農業に必要な土地を計画的に確保する | 農地を農地以外の用途に変更することを規制する |
| 根拠となる法律 | 農業振興地域の整備に関する法律 | 農地法 |
| 主な手続き | 農用地区域からの除外など、農業振興地域整備計画の変更 | 農地法第4条・第5条による許可申請または届出 |
簡単に整理すると、農業振興地域制度は、農業に利用する土地を計画的に守るための制度です。
これに対して農地転用許可制度は、個々の農地を住宅、店舗、資材置場、駐車場などへ変更することが適切かどうかを判断する制度です。
それぞれ別の制度であるため、農用地区域内の農地を転用する場合には、原則として、農用地区域からの除外と農地転用の両方の手続きが必要になります。
農用地区域内の農地は転用できる?
農用地区域内の農地は、農業上の利用を確保する必要がある土地であるため、原則として農地転用は認められません。
ただし、やむを得ない事情があり、法律上の要件を満たす場合には、市町村の農業振興地域整備計画を変更し、その土地を農用地区域から外す手続きを行うことがあります。
これが、一般に「農振除外」と呼ばれる手続きです。
農振除外は、土地の所有者が希望すれば必ず認められるものではありません。
例えば、その土地を農地以外の用途に利用する必要性があること、農用地区域外に代わりとなる土地がないこと、周辺の農地の利用に支障を及ぼさないことなど、複数の要件を満たす必要があります。
また、農振除外が認められたとしても、それだけで住宅の建築や駐車場の整備ができるわけではありません。
農振除外が完了した後に、改めて農地転用の許可申請などを行う必要があります。
「農振除外」から「農地転用」までの大まかな流れ
農用地区域にある土地を住宅や駐車場などに活用する場合、手続きはおおむね次のような順番で進みます。
【Step 1】事前確認・事前相談
市町村の農業振興担当部署などに、その土地が農業振興地域や農用地区域に含まれているかを確認します。
あわせて、予定している土地活用の内容や、農振除外の可能性、農地転用その他の許可の見込みについて事前に相談します。
↓
【Step 2】農振除外の申出
市町村へ農振除外の申出を行い、農用地区域から除外するための要件を満たしているか審査を受けます。
農振除外の受付時期は、年に数回など、市町村ごとに決められている場合があります。
↓
【Step 3】農業振興地域整備計画の変更
審査や関係機関との協議などを経て、除外が適当と判断された場合には、市町村の農業振興地域整備計画が変更され、その土地が農用地区域から除外されます。
↓
【Step 4】農地転用の申請
農振除外が完了した後、農業委員会などの窓口を通じて、農地法第4条または第5条による農地転用の許可申請などを行います。
↓
【Step 5】工事着工・土地活用
農地転用の許可を受け、建築確認や開発許可など、計画に応じて必要となるほかの手続きも完了した後に、住宅の建築や駐車場の整備などに着手します。
⚠ 農振除外が完了しても、すぐに工事を始められるとは限りません。
農地転用のほか、土地の場所や事業計画によっては、開発許可、盛土に関する許可、建築確認など、別の手続きが必要になる場合があります。
農振除外にはどのくらいの期間がかかる?
農振除外は、市町村が申出の内容を確認するだけで完了する手続きではありません。
関係機関との協議、計画変更案の公告・縦覧、都道府県との協議など、複数の手続きを経て進められます。
自治体や案件によって異なりますが、申出から除外が完了するまでに、半年から1年程度かかる場合もあります。
さらに、市町村によっては農振除外の申出を随時受け付けておらず、受付時期を年に数回などに限定していることがあります。
受付時期を過ぎると、次の受付まで待たなければならず、土地活用の予定が大きく遅れる可能性もあります。
農振除外の後には農地転用の手続きがあり、事業の内容によっては開発許可や建築確認なども必要です。
「来年までに家を建てたい」「この時期から駐車場として使いたい」といった予定がある場合には、工事を始めたい時期から逆算して、できるだけ早めに確認と準備を始めることが大切です。
スケジュールには余裕を持ちましょう
土地の購入や建築会社との契約を進めた後に、農振除外や農地転用が難しいことが分かる場合もあります。具体的な計画を進める前に、土地の規制や必要な手続きを確認しておくことが重要です。
自分の土地が農振かどうか確認する方法
所有している土地が農業振興地域や農用地区域に含まれているかどうかは、その土地がある市町村の農業振興担当部署で確認できます。
自治体によって担当部署の名称は異なりますが、「農業振興課」「農政課」「農林課」などが窓口となっていることが一般的です。
窓口へ出向くほか、電話で確認できる場合もあります。
確認する際は、土地の所在地だけでなく、登記事項証明書や固定資産税の課税明細書などに記載されている地番を準備しておくと、話が進みやすくなります。
また、農地転用については、市町村の農業委員会が相談窓口となります。
ただし、土地の活用には農振や農地法だけでなく、都市計画法、建築基準法、盛土規制法などが関係する場合があります。
一つの窓口で確認しただけでは、必要な手続きの全体像が分からないこともあるため、予定している土地活用の内容を具体的に伝え、ほかに確認すべき部署がないかも尋ねるとよいでしょう。
行政書士に相談できること
自分で役所へ確認することはできますが、次のような不安を感じる方もいらっしゃると思います。
- どの部署に問い合わせればよいか分からない
- 役所に何を聞けばよいか分からない
- 仕事などで窓口へ行く時間が取れない
- 農振除外と農地転用のほかに、どのような手続きが必要なのか分からない
- 土地活用の予定に間に合うのか、スケジュールを整理したい
行政書士は、土地の所在地や利用目的、現在の状況などを確認し、関係する制度や必要となる手続きの流れを整理します。
また、関係機関との事前相談、農振除外の申出、農地転用許可申請など、行政機関へ提出する書類の作成や手続きを支援します。
農地を活用するための手続きは、土地の場所や農地区分、事業計画、周辺の状況などによって異なります。
農振除外や農地転用を検討している場合は、土地の購入や工事の契約を進める前に、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
まとめ
農業振興地域制度は、将来にわたって農業に必要な土地を計画的に確保するための制度です。
その中でも、農用地区域内の農地は農業に利用することが原則とされ、住宅や駐車場などへ転用することは原則として認められていません。
農用地区域内の農地を別の用途に活用する場合には、原則として、農振除外の手続きを行った後に農地転用の許可申請などを進める必要があります。
農振除外は必ず認められるものではなく、完了までに半年から1年程度かかる場合もあります。また、受付時期が限られている自治体もあるため、早めの確認が大切です。
まずは、その土地が農業振興地域や農用地区域に含まれているかを確認し、予定している土地活用にどのような手続きが必要になるのかを整理することから始めましょう。
農地に関する制度を一つずつ知ることで、複雑に見える手続きの流れも、少しずつ理解しやすくなります。
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