レコード製作者の複製権・送信可能化権とは?身近な例で解説

音楽を聴く方法は、ずいぶん変わりました。

以前はCDを購入して聴くことが一般的でしたが、今ではスマートフォンや音楽配信サービスなどを利用して音楽を楽しむ方も多いのではないでしょうか。

また、SNSや動画投稿サイトなど、インターネット上で音楽に触れる機会も増えています。

では、購入したCDの音源をパソコンに取り込んだり、その音源をインターネット上にアップロードしたりする場合、どのような権利が関係するのでしょうか。

音楽というと、作詞家や作曲家の「著作権」を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、音楽にはそれだけでなく、歌手や演奏家などの「実演家」、そして音源を制作した「レコード製作者」に認められている「著作隣接権」も関係します。

今回は、レコード製作者に認められている具体的な権利のうち、「複製権」と「送信可能化権」について、身近な例を交えながら見ていきます。

レコード製作者にはどんな権利が認められている?

前回の記事では、「レコード製作者」とはどのような人なのかについてご紹介しました。

著作権法では、レコード製作者を「レコードに固定されている音を最初に固定した者」としています。

ここでいう「レコード」は、CDなどの媒体そのものだけを意味するものではありません。

音を最初に固定したレコード製作者には、その音源について「著作隣接権」と呼ばれる権利が認められています。

その具体的な権利の中に、今回取り上げる「複製権」と「送信可能化権」があります。

「複製権」とは?

著作権法第96条では、レコード製作者に、そのレコードを複製する権利が認められています。

「複製」というと、CDをもう1枚作るような行為を思い浮かべるかもしれません。

しかし、複製はそれだけではありません。

たとえば、CDに収録されている音源をパソコンに取り込んだり、その音源をUSBメモリなどの別の媒体にコピーしたりすることも、「複製」に当たり得ます。

ポイント
「複製」は、同じCDをもう1枚作ることだけではありません。レコードに固定された音を、別の媒体などに再び固定する場合にも関係します。

CDをパソコンに取り込んだら違法なの?

ここで、

「それなら、自分で買ったCDをパソコンに取り込むのもダメなの?」

と思われるかもしれません。

著作権法には、一定の場合に権利者の許諾を得ずに利用できる例外が設けられています。

その一つが「私的使用のための複製」です。

個人的に、または家庭内などの限られた範囲で使用することを目的として、一定の要件のもとで複製する場合には、権利者の許諾を得ずに複製できる場合があります。

そのため、

「複製に当たる=すべて違法」

というわけではありません。

まず、その行為が権利の対象となる「複製」に当たるのか。

そして、複製に当たるとしても、私的使用のための複製などの例外が適用されるのか。

この二つは分けて考える必要があります。

注意したいポイント
「自分で楽しむためなら、どのような場合でも自由に複製できる」というわけではありません。たとえば、違法にインターネット上へアップロードされた音源であることを知りながらダウンロードする場合など、私的使用を目的としていても、著作権法上の例外が適用されない場合があります。

また、コピーを防止するための技術的な仕組みを回避して複製する場合についても、私的使用のための複製として認められない場合があります。

「自分で聴くためだから大丈夫」と一律に考えるのではなく、複製する方法や音源の入手元にも注意が必要です。

「送信可能化権」とは?

もう一つが「送信可能化権」です。

著作権法第96条の2では、レコード製作者に、そのレコードを「送信可能化」する権利が認められています。

「送信可能化」という言葉は、普段の生活ではほとんど使わないので、少し分かりにくいかもしれません。

簡単にいえば、インターネットなどを通じて、利用者がアクセスすれば音源を受け取れる状態にすることに関係する権利です。

たとえば、音源をインターネット上のサーバーにアップロードして、利用者がアクセスすれば聴くことができる状態にする場合などが考えられます。

誰かが実際に聴いてから問題になるの?

送信可能化権を理解するときに大切なのが、

「実際に誰かが聴いたかどうか」

だけで考えないことです。

音源をインターネット上にアップロードし、利用者がアクセスすれば聴ける状態にした場合には、まだ誰もその音源を聴いていなくても「送信可能化」が問題になることがあります。

「誰にも聴かれていないから大丈夫」ということではないのです。

インターネットを利用する現在だからこそ、知っておきたい権利の一つといえるでしょう。

SNSや動画投稿サイトで音楽を利用するときは?

ここで、SNSなどで音楽を利用する場合について、もう少し考えてみましょう。

ThreadsなどのSNSには、投稿に音楽を追加できる機能が用意されているものもあります。また、YouTubeなどの動画投稿サービスで音楽を利用する機会もあります。

このとき、次の二つは分けて考える必要があります。

  • SNSなどのサービスが用意している音楽機能を利用する場合
  • 自分で購入したCDなどの音源をコピーして、SNSや動画投稿サイトにアップロードする場合

サービスが用意している音楽機能では、音楽を利用するための仕組みが設けられています。

ただし、利用できる範囲や条件はサービスによって異なりますので、「公式の機能だから、どのような使い方をしても大丈夫」というわけではありません。

一方、自分で購入したCDなどから音源をコピーして、それをSNSや動画投稿サイトにアップロードする場合には、レコード製作者の「複製権」や「送信可能化権」などが関係します。

「自分で購入したCDだから自由に使える」とは限らないことに注意が必要です。

SNSなどで音楽を利用するときには、それぞれのサービスの利用条件なども確認するようにしましょう。

ThreadsやYouTubeでの音楽利用について詳しく知りたい方は、この記事の最後に公式情報を掲載していますので、参考にしてみてください。

音源をコピーしてアップロードすると、複数の権利が関係する

では、自分が持っているCDの音源をパソコンなどに取り込み、それをインターネット上にアップロードする場合を考えてみましょう。

まず、CDの音源をパソコンなどに取り込む段階では、「複製」が関係します。

そして、その音源をインターネット上にアップロードし、利用者がアクセスできる状態にすれば、「送信可能化」が関係します。

一連の流れで考えると

CDなどの音源をコピーする

「複製権」が関係する

コピーした音源をインターネット上にアップロードする

「送信可能化権」が関係する

このように、一連の行為の中でも、行為によって関係する権利が異なります。

さらに、音楽にはレコード製作者の権利だけが関係しているわけではありません。

  • 楽曲や歌詞には、作詞家・作曲家などの「著作権」
  • 歌唱や演奏には、歌手・演奏家などの「実演家の権利(著作隣接権)」
  • 録音された音源には、レコード製作者の「レコード製作者の権利(著作隣接権)」

というように、一つの音楽には、いくつもの権利が重なっています。

そのため、「CDを購入したから、その音源を自由に使える」ということにはなりません。

CDを購入して音楽を聴くことと、その音源をコピーしたり、インターネット上で利用したりすることは、分けて考える必要があります。

なぜレコード製作者にも権利が認められているの?

一つの音楽が私たちのもとへ届くまでには、さまざまな人が関わっています。

作詞家や作曲家が曲を作り、歌手や演奏家がそれを歌ったり演奏したりします。

そして、その歌唱や演奏を録音し、一つの音源として形にして、私たちが聴けるように世の中へ届ける過程には、レコード製作者が関わっています。

こうした役割を担うレコード製作者にも、著作者とは別に「著作隣接権」という形で一定の権利が認められています。

今回ご紹介した「複製権」や「送信可能化権」も、その中の大切な権利です。

まとめ

今回は、レコード製作者に認められている権利のうち、「複製権」と「送信可能化権」についてご紹介しました。

「複製権」は、レコードに固定された音をコピーすることに関係する権利です。

一方、「送信可能化権」は、インターネットなどを通じて、利用者がアクセスすれば音源を受け取れる状態にすることに関係する権利です。

スマートフォンやSNS、動画投稿サイトなどが身近になった現在では、私たち自身が簡単に音源をコピーしたり、インターネット上に情報を発信したりできるようになりました。

だからこそ、

「音楽には作詞家・作曲家の著作権だけでなく、実演家やレコード製作者の権利もある」

ということを知っておくことが大切です。

普段何気なく聴いている一つの音楽にも、実はいくつもの権利が重なっています。

次回も引き続き、レコード製作者に認められている権利について見ていきます。

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