見た目で選ばれる時代|パッケージ・店舗デザインの知財リスクと守り方

当事務所では、食品関連事業者の方々を対象に、HACCP・表示・知財・契約・補助金など、事業の安心と継続に関わる支援を行っています。

また、知的財産の基本的な考え方やビジネスへの活かし方についての情報発信・ご相談にも取り組んでいます。

なお、特許・商標・意匠などの出願代理や特許庁への手続代理は弁理士の専門業務となるため、必要に応じて信頼できる専門家と連携しながらサポートしています。

今回は、「食の安心×知財シリーズ」第3回として、商品パッケージや店舗デザインなど、「見た目の価値」を守る知的財産について分かりやすく解説します。

食品業界だけでなく、飲食店や小売店、サービス業など、「見た目」や「ブランド」が選ばれる事業者にも共通する内容です。

「うちのデザイン、真似されている?」

商品の味には自信がある。

パッケージにもこだわった。

店舗の外観や看板も、お客様に覚えていただけるよう工夫した。

ところが、ある日、よく似たデザインの商品や店舗を見つけた──。

「これって真似されているのかな?」

実は、このようなトラブルは決して珍しくありません。

もちろん、「少し似ている」というだけで、すぐに法律違反になるわけではありません。

しかし、状況によっては、パッケージや店舗デザインなどの「見た目」も知的財産として守られる可能性があります。

「見た目」も大切なブランドになる

商品を選ぶとき、私たちは味や品質だけで判断しているわけではありません。

店頭で目を引くパッケージ。

思わず入りたくなる店舗の外観。

SNSで「おしゃれ」と話題になる商品の写真。

こうした「見た目」は、お客様に最初の印象を与え、お店や商品のブランドを形づくる大切な要素です。

つまり、「見た目」は単なるデザインではなく、お客様から積み重ねた信頼そのものとも言えるでしょう。

だからこそ、その価値を守るための法律が用意されているのです。

「見た目」を守る制度 ― 意匠権

意匠権(いしょうけん)は、商品のデザインや形状、模様などに独占的な権利を与える制度です。

例えば、次のようなものが対象になります。

  • 商品のパッケージや包装容器
  • ショップ袋
  • 店舗の外観
  • 看板やのれん
  • 商品を入れる容器 など

特許庁では、弁当容器や菓子パッケージ、店舗デザインなども実際に意匠登録されています。

つまり、「見た目そのもの」に価値がある場合には、そのデザインを権利として守ることができるのです。

登録していなくても守られることがある ― 不正競争防止法

「意匠登録をしていないから守れない。」

そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、必ずしもそうとは限りません。

不正競争防止法とは、長年かけて築き上げたブランドや信用を、他人が紛らわしい方法で利用することを防ぐための法律です。

そのため、意匠登録をしていなくても、一定の条件を満たせば保護される場合があります。

ここで重要になるのが、「周知性(しゅうちせい)」という考え方です。

周知性とは?

「周知性」と聞くと難しく感じるかもしれません。

簡単に言えば、

「そのデザインを見て、多くの人が『あのお店の商品だ』と分かる状態」

のことです。

例えば、

「あの包装紙といえば○○店」

「あのロゴを見ると、あのお店を思い出す」

そのように、お客様の中でブランドとして認識されていれば、不正競争防止法によって保護される可能性があります。

このトラブル、裁判所はどう判断した?

実際に、老舗和菓子店が長年使用していたどら焼きの包み紙と非常によく似たパッケージを競合店が使用したことから、裁判となった事例があります。

裁判所は、

  • 長年使用されていたこと
  • 観光地や百貨店などで広く販売されていたこと
  • メディアで紹介されていたこと
  • 特徴的な書体や図柄が使われていたこと

などを総合的に判断しました。

その結果、この包み紙には「周知性」があると認められ、不正競争防止法に基づき、商品の販売差止めや損害賠償が認められました。

つまり、裁判所は「よく似ているかどうか」だけではなく、そのデザインがブランドとして社会に認識されていたかどうかを重視したのです。

周知性は「有名なお店」だけのものではない

「全国的に有名なお店でなければ守られない。」

そんなイメージを持たれるかもしれません。

しかし、実際にはそうではありません。

地域密着型のお店でも、地域のお客様に広く認識されていれば、周知性が認められることがあります。

一方で、長年営業していても、お客様に認識されていなければ保護されない場合もあります。

また、SNSで話題になった商品が短期間で広く知られ、周知性が認められるケースも考えられます。

つまり、大切なのは営業年数ではなく、「どれだけブランドとして認識されているか」なのです。

日頃の記録がブランドを守る

もし将来トラブルになった場合、

「いつから使っていたのか」

「どれだけ知られていたのか」

を証明することが重要になります。

例えば、

  • 販売開始日
  • チラシやパンフレット
  • SNS投稿
  • 新聞や雑誌の記事
  • 口コミやレビュー
  • 売上や販売実績

こうした日々の記録が、大切な証拠になることがあります。

普段何気なく投稿しているSNSも、ブランドを守る資料になる可能性があるのです。

真似された後ではなく、真似される前の準備を

ブランドは、一日で出来上がるものではありません。

時間をかけて積み重ねた信頼や工夫が、お客様から選ばれる理由になります。

だからこそ、「真似されたらどうしよう」と考える前に、

  • デザインを記録しておく
  • 販売開始日を残しておく
  • 必要に応じて意匠登録を検討する

といった準備をしておくことが、将来の安心につながります。

まとめ

商品や店舗の「見た目」は、単なるデザインではありません。

お客様から選ばれる理由となり、ブランドとして育っていく大切な財産です。

意匠権や不正競争防止法は、その価値を守るための制度です。

トラブルが起きてから対応するのではなく、日頃から記録を残し、必要な対策を考えておくことが、大切なブランドを守る第一歩になるでしょう。

📚過去記事

📃関連シリーズ

🔗参考記事

投稿者プロフィール

aya-office
aya-office
  皆様のお役に立てる情報をお届けしたいと思っております。