小さなお店が知っておきたい知的財産リスク|店名・ロゴ・SNSも守る工夫

当事務所では、食品関連事業者の方々を対象に、HACCP・表示・知財・契約・補助金といった、事業の安心と継続に関わる支援を行っています。

また、知的財産の基本的な考え方やビジネスへの活かし方についての情報発信・ご相談にも取り組んでいます。

なお、特許・商標等の出願代理や特許庁への手続代理は弁理士の専門業務となるため、必要に応じて信頼できる専門家との連携・橋渡しを行っています。

「味さえ良ければ大丈夫」と思っていませんか?

もちろん、飲食店や食品事業者にとって味は大切です。しかし、お客様が選んでいるのは味だけではありません。

店名やロゴ、パッケージのデザイン、SNSで発信する写真や文章、お店の雰囲気やこだわりなども、お客様から選ばれる理由の一つです。

こうした“お店らしさ”は、目に見えにくい価値ですが、実は大切な経営資源です。そして、その多くは知的財産として守ることができます。

今回は、食の安心×知財シリーズ第2回として、小さなお店でも起こり得る知財リスクと、その備え方について分かりやすく解説します。

小さなお店にも起こる知財トラブル

知的財産というと、大企業だけの話のように感じるかもしれません。

しかし実際には、小規模事業者や個人経営のお店でも知財トラブルは起こります。

例えば、店名やロゴが似た店舗ができたり、人気メニューの名前を他店が使い始めたりすることがあります。

また、パッケージやデザインを真似されたり、SNSに掲載した写真や文章が無断で使われたりすることもあります。

どれも身近な出来事ですが、お店の信頼やブランド価値に影響を与える可能性があります。

店名・ロゴが他店に使われた…

「うちの名前とそっくりなお店がオープンしている!」

そんな話を聞いたことはありませんか。

お店の名前やロゴは、お客様に自分のお店を覚えてもらうための大切な目印です。しかし、商標登録をしていない場合、似たような名前やロゴが使われても十分な対応ができないケースがあります。

もっとも、商標を登録していないからといって、必ずしも保護されないわけではありません。

知っておきたい「先使用権」と「周知性」の考え方

商標を登録していなくても、先に使っていた人の権利が保護される場合があります。

例えば、あなたのお店の名前やロゴが地域で広く知られており、第三者が商標登録する前から継続して使用していたようなケースです。

このような場合には、「先使用権」が認められ、後から商標登録を受けた人からの使用差止請求を退けられる可能性があります。

ただし、長年使用してきたことや地域で知られていたことを証明する必要があります。また、裁判になれば時間や費用の負担も生じます。

そのため、お店の名前やロゴを長く使っていく予定がある場合は、早い段階で商標登録を検討することも有効なリスク対策の一つです。

メニュー名が他店に使われた…

「うちの人気メニューと同じ名前を他のお店が使っている…」

そんな経験はありませんか。

メニュー名は、お店のこだわりや商品の魅力を伝える大切な要素です。しかし、実はメニュー名そのものは法律で守られにくい場合があります。

なぜ守られにくいの?

著作権は、小説や音楽、美術作品などの「創作的な表現」を保護する制度です。

そのため、短い商品名やキャッチコピーは、原則として著作権の保護対象にならないと考えられています。

また、商標登録をする場合でも、「うまい唐揚げ」のように商品の特徴をそのまま表現しただけの名称は、多くの事業者が使いたい言葉であるため、登録が認められないことがあります。

商標登録できる可能性を高めるには

例えば、「黄金のからあげ」だけでは難しくても、「○○食堂の黄金のからあげ」や「○○農園のこだわりトマト」のように、お店や事業者を示す名称と組み合わせることで識別力が高まり、商標登録できる可能性が高くなります。

また、SNS投稿や広告、販売履歴などの記録を残しておくことも大切です。

人気商品として長く育てていくのであれば、メニュー名もブランドの一部として考えてみるとよいでしょう。

お店のデザインやパッケージが真似された…

お客様が商品を手に取るとき、最初に目に入るのはパッケージやデザインです。

実際には、味を知る前に見た目で選ばれている場面も少なくありません。

そのため、店舗デザインやパッケージ、容器の形状なども、お店にとって重要な財産といえます。

意匠権で守れる場合がある

意匠権とは、製品の形状や模様、デザインなどを保護する制度です。

例えば、オリジナルの弁当容器、特徴的な包装デザイン、独自性のある店舗外観などが対象になる場合があります。

登録には費用や手続きが必要ですが、長く使う予定のデザインであれば検討する価値があります。

不正競争防止法で保護されるケースも

意匠登録をしていなくても、広く知られたパッケージやデザインが模倣された場合には、不正競争防止法によって保護されることがあります。

例えば、長年親しまれている食品パッケージの色使いや配置、全体の印象が模倣され、消費者が誤認するおそれがある場合には、問題となる可能性があります。

大切なのは、「どこにでもあるデザイン」ではなく、「そのお店らしさ」が伝わる工夫を積み重ねることです。

ロゴは商標だけではない

ロゴというと商標を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、ロゴには名前としての側面だけでなく、デザインとしての側面もあります。

そのため、商標だけでなく、著作権や意匠権によって保護される可能性もあります。

お店の顔となるロゴは、長く使うことを前提に考えておくと安心です。

SNSの画像や文章が勝手に使われていた…

「Instagramに投稿した料理写真が他のお店で使われている」

「お店の紹介文がそのままコピーされている」

そんな経験をされた方もいるかもしれません。

SNSは便利な発信ツールですが、著作権トラブルが起こりやすい場所でもあります。

写真や文章にも著作権はある

料理写真や店舗紹介文、ブログ記事などは、創作性が認められれば著作権の対象になります。

つまり、無断でコピーしたり転載したりすると、著作権侵害になる可能性があります。

「自分のもの」と思っていても注意

実務上は、著作権者が誰なのかが問題になることがあります。

例えば、外注カメラマンが撮影した写真、デザイナーが作成した画像、制作会社が作ったチラシなどは、お金を払ったからといって当然に著作権が移転するわけではありません。

契約内容によっては、著作権が制作者に残っている場合もあります。

トラブルを防ぐために

写真や文章を制作したときは、誰が作ったのか、いつ作ったのかが分かるように記録を残しておくことをおすすめします。

また、外注する場合には、著作権の帰属や利用範囲を契約書で明確にしておくことが大切です。

小さなお店でもできる知財の守り方

知的財産を守るために、必ずしも大掛かりな対策が必要なわけではありません。

まずは、お店にどのような知的財産があるか棚卸ししてみることが大切です。

店名、ロゴ、メニュー名、パッケージ、SNS投稿、チラシ、ホームページの文章などを一度書き出してみると、自分のお店が積み重ねてきた価値が見えやすくなります。

また、SNS投稿や広告、販売履歴などの記録を残しておくことも、将来のトラブル防止につながります。

人気商品や長く使うロゴについては、商標登録や意匠登録を検討することも選択肢の一つです。

さらに、写真撮影やデザイン制作を外注する場合には、著作権の帰属や使用範囲について契約内容を確認しておくと安心です。

知財は、トラブルが起きてから考えるよりも、日頃から少し意識しておくことが大切です。

行政書士としての支援のかたち

行政書士は、特許や商標の出願代理を行うことはできません。

しかし、知的財産の棚卸し、契約書の作成支援、補助金や販路開拓と知財活用のサポート、専門家との連携や橋渡しなど、事業者の皆さまが知財を活かし、守るためのお手伝いをすることができます。

「どこまでが自分でできる対策なのか」「どのタイミングで専門家に相談した方がよいのか」と迷う場合も、早めに整理しておくことで、無用なトラブルを防ぎやすくなります。

まとめ|HACCPで守る日常。知財で守る未来。

知的財産というと、大企業だけの話に聞こえるかもしれません。

しかし実際には、小さなお店ほど店名や評判、SNS発信、商品の見た目といった「見えない価値」が経営を支えています。

それらを守ることは、お客様との信頼関係を守ることにもつながります。

味だけでなく、お店らしさや積み重ねてきた信用も大切な財産です。

HACCPが日々の安心を支える仕組みであるように、知的財産は未来のブランド価値を支える仕組みでもあります。

大切な価値を守りながら、安心して事業を続けていくために、知財についても少しずつ意識してみてはいかがでしょうか。

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