認定農業者と認定新規就農者の違いとは?特徴と支援内容を解説

前回は、新たに農業を始める方を支える「認定新規就農者制度」についてご紹介しました。

認定新規就農者制度について調べていると、「認定農業者」という似た名称の制度を目にすることがあります。

どちらも農業者の経営を支援する制度ですが、対象となる方や作成する計画、制度の目的などには違いがあります。

「新しく農業を始める場合は、どちらを目指せばよいの?」

「認定新規就農者になった後は、認定農業者になるの?」

このような疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、「認定農業者」と「認定新規就農者」の違いを比較しながら、それぞれの特徴や主な支援内容、農業経営の成長に応じた活用の流れについて、初めての方にも分かりやすくご紹介します。

認定農業者とは?

認定農業者とは、自らの農業経営を改善・発展させるために「農業経営改善計画」を作成し、その計画について市町村等の認定を受けた農業者のことです。

すでに農業を営んでいる方が、今後どのように経営規模を拡大し、生産方法や経営管理、働き方などを改善していくのかを具体的な計画としてまとめます。

農業経営改善計画には、主に次のような内容を記載します。

  • 作付面積や飼養頭数など、経営規模の拡大に関する目標
  • 農業用機械や施設の導入、生産方式の合理化に関する目標
  • 複式簿記の導入など、経営管理の合理化に関する目標
  • 休日制の導入など、農業従事のあり方を改善するための目標

認定農業者制度は、単に一定の規模以上の農業者を認定する制度ではありません。

現在の経営状況を踏まえ、将来どのような農業経営を目指すのかを明確にし、その実現に向けて計画的に経営改善へ取り組む農業者を支援する制度です。

家族で共同申請できる場合があります

認定農業者制度では、家族経営協定を締結した夫婦や親子などが、共同で農業経営改善計画の認定申請を行える制度があります。

共同申請を行うことで、それぞれの役割や責任を明確にしながら農業経営に取り組むことができ、家族全体で将来の経営ビジョンを共有しやすくなることが期待されています。

共同申請には、家族経営協定を締結していることや、収益の配分や経営に関する基本的な事項が明確になっていることなど、一定の要件があります。

詳しい要件や手続きについては、お住まいの市町村や農業委員会、JAなどへご確認ください。

認定を行うのは原則として市町村

農業経営改善計画の認定を行うのは、原則として農業経営を行う地域の市町村です。

ただし、複数の市町村にまたがって農業を営む場合には、営農する区域に応じて、都道府県または国が計画を一括して認定することがあります。

例えば、同じ都道府県内の複数市町村で営農する場合は都道府県、複数の都道府県にまたがって営農する場合は国が認定を行うことがあります。

そのため、広い地域で農業を営んでいる場合には、どこへ申請するのかを事前に確認することが大切です。

認定新規就農者とは?

認定新規就農者とは、新たに農業経営を始める方が「青年等就農計画」を作成し、市町村の認定を受けた方のことです。

青年等就農計画には、農業経営を始めてからおおむね5年後に目指す経営の姿を記載します。

作付面積や生産量、農業所得、労働時間、農業用機械・施設の導入、資金調達などを整理し、農業経営をどのように立ち上げ、安定させていくのかを具体的に示します。

認定新規就農者制度は、これから農業を始める方や、農業経営を始めて間もない方の経営確立を支える制度です。

認定新規就農者には年齢等の要件がある

認定農業者には、制度上、一律の年齢制限はありません。

一方、認定新規就農者の対象となる「青年等」には、年齢や知識・技能などに関する要件があります。

主な対象者は、次のとおりです。

  • 原則として18歳以上45歳未満の青年
  • 農業経営に活用できる一定の知識や技能を有する65歳未満の方
  • これらの方が役員の過半数を占める法人

すでに農業経営を始めている場合でも、経営開始から5年以内であれば対象になることがあります。

ただし、年齢などの要件は、認定新規就農者制度と、経営開始資金などの個別の支援制度とで異なる場合があります。

認定新規就農者になったからといって、すべての新規就農者向け支援を利用できるとは限らない点には注意が必要です。

認定農業者と認定新規就農者の違い

認定農業者と認定新規就農者は、どちらも将来の農業経営について計画を作成し、行政の認定を受ける制度です。

しかし、それぞれが想定している農業経営の段階や制度の目的には、次のような違いがあります。

項目認定農業者認定新規就農者
主な対象農業経営の改善・発展を目指す農業者新たに農業経営を始める青年等
年齢等の要件制度上、一律の年齢制限はない原則18歳以上45歳未満。一定の知識・技能を有する65歳未満の方なども対象
制度の目的農業経営の改善・発展就農後の経営確立・定着
作成する計画農業経営改善計画青年等就農計画
認定機関原則として市町村。複数市町村で営農する場合は、営農区域に応じて都道府県または国市町村
計画の期間原則5年間原則5年間
主な支援の例スーパーL資金、農業経営基盤強化準備金、農地集積や経営改善に関する支援など経営開始資金、経営発展支援事業、青年等就農資金など
農業経営の段階経営を改善し、さらに発展させる段階農業経営を始め、経営基盤をつくる段階

簡単に整理すると、認定新規就農者は「農業経営を始める段階」、認定農業者は「農業経営を改善・発展させる段階」の制度です。

ただし、農業を始める方が必ず認定新規就農者になり、その後必ず認定農業者になるというわけではありません。

年齢や就農時期、経営の状況、将来の目標などを踏まえて、自分に合った制度を検討する必要があります。

利用できる主な支援制度

認定農業者や認定新規就農者になることで、それぞれの経営段階に応じた支援制度を利用できる場合があります。

ただし、認定を受ければ、すべての支援を自動的に利用できるわけではありません。

各制度には、年齢、所得、経営規模、地域計画への位置付け、資金の使い道など、個別の要件があります。

認定農業者が利用できる主な支援

認定農業者が利用できる支援の一つに、「農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)」があります。

スーパーL資金は、農業経営改善計画に沿って農業経営の改善を進めるために必要となる設備資金や長期運転資金などを、日本政策金融公庫から借り入れることができる制度です。

そのほか、農業経営基盤強化準備金制度や、農地の集積・集約化、農業用機械・施設の導入などに関する支援の対象となる場合があります。

認定新規就農者が利用できる主な支援

認定新規就農者は、一定の要件を満たすことで、次のような支援を利用できる場合があります。

  • 就農直後の経営確立を支援する「経営開始資金」
  • 農業用機械や施設の導入などを支援する「経営発展支援事業」
  • 農業経営を始めるために必要な資金を無利子で借り入れることができる「青年等就農資金」

新規就農者向けの支援制度は、年度によって名称や内容、募集時期、要件などが変更されることがあります。

利用を検討するときは、最新の制度内容を確認し、就農を予定している地域の市町村や普及指導センターなどへ早めに相談することが大切です。

認定新規就農者から認定農業者へ

認定新規就農者と認定農業者は、それぞれ別の制度です。

一方で、農業経営の成長という視点で見ると、二つの制度はつながっています。

新たに農業を始めた方が、認定新規就農者として青年等就農計画に沿って経営に取り組み、農業経営が安定してきた段階で、次の目標として認定農業者を目指すことがあります。

認定新規就農者の計画期間は、原則として農業経営を始めてから5年間です。

その期間に農業技術や経営管理の力を身につけ、農地や機械・施設を整え、販売先を確保しながら、将来の経営発展につなげていきます。

そして、さらに経営規模を拡大したい、生産方法を改善したい、経営管理や働き方を見直したいという段階になったときに、農業経営改善計画を作成し、認定農業者を目指すという流れが考えられます。

認定新規就農者は農業経営のスタートを支える制度、認定農業者はその後の経営改善・発展を支える制度と考えると、両者の違いが分かりやすくなります。

制度を活用するときの注意点

認定農業者制度や認定新規就農者制度は、認定を受けること自体が目的ではありません。

自分が目指す農業経営を具体的に考え、実現可能な計画を作り、その計画に沿って経営に取り組むことが大切です。

また、申請書の様式や認定基準、利用できる支援制度は、市町村や年度によって異なる場合があります。

制度を利用するときは、次の点を確認しましょう。

  • 自分が制度の対象者に該当するか
  • どの行政機関が認定を行うのか
  • 地域の基本構想や認定基準に合っているか
  • 利用したい支援制度の個別要件を満たしているか
  • 申請期限や募集期間が定められているか
  • 認定後に計画の進捗報告などが必要か

特に、支援制度を利用する予定がある場合には、農業用機械や施設を購入した後では対象にならないこともあります。

「認定を受けてから考える」のではなく、就農計画や設備投資、資金調達を検討する早い段階から、市町村や普及指導センターなどへ相談することが重要です。

行政書士がお手伝いできること

認定農業者や認定新規就農者になるためには、将来の農業経営について具体的な計画を作成する必要があります。

計画書には、農業経営の規模、生産方式、農業所得、労働時間、農業用機械・施設、資金調達など、多くの項目を記載します。

行政書士は、申請者の考えや将来の経営構想、関係機関から受けた助言などを整理し、計画書や申請書類としてまとめるお手伝いをすることができます。

例えば、次のような支援が考えられます。

  • 認定農業者制度や認定新規就農者制度の整理
  • 農業経営改善計画や青年等就農計画の作成支援
  • 申請に必要な資料や添付書類の整理
  • 農地の取得・賃借に伴う農地法上の手続き
  • 農業法人を設立する場合の定款作成や法人設立手続き
  • 利用を検討している支援制度や許認可手続きの整理

ただし、栽培方法、品種の選定、収量の予測など、農業技術に関する専門的な判断については、普及指導センター、市町村、JAなどの関係機関と連携しながら進める必要があります。

それぞれの専門機関の役割を生かし、申請者の考えや目標を実現可能な計画として形にしていくことが大切です。

まとめ

認定農業者と認定新規就農者は、どちらも農業者が将来の経営計画を作成し、行政の認定を受ける制度です。

しかし、認定新規就農者は、新たに農業経営を始める青年等の経営確立を支える制度であるのに対し、認定農業者は、すでに農業を営んでいる方が経営の改善・発展を目指すための制度です。

認定新規就農者は青年等就農計画を、認定農業者は農業経営改善計画を作成します。

また、認定新規就農者には年齢や知識・技能などに関する要件がありますが、認定農業者には制度上、一律の年齢制限はありません。

認定新規就農者として農業経営を始め、経営が安定してきた段階で認定農業者を目指すという流れもあります。

大切なのは、認定を受けることだけを目的にするのではなく、自分がどのような農業経営を目指すのかを考え、その目標に合った制度を活用することです。

制度の対象や認定基準、利用できる支援は、経営状況や地域、年度によって異なります。

まずは市町村や普及指導センターなどへ相談し、必要な情報を集めながら、自分に合った農業経営の計画を具体化していきましょう。

次回は、認定農業者や認定新規就農者が利用できる主な支援制度について、分かりやすくご紹介します。

📚過去記事

🔗参考記事

農林水産省では、制度の紹介だけでなく、農業経営に役立つ研修動画や経営分析ツールなども公開されています。農業経営についてさらに学びたい方は、ぜひ参考記事もご覧ください。

※制度や支援内容は、法令改正や年度によって変更される場合があります。実際に申請や制度の利用を検討する際は、農林水産省、市町村、都道府県などが公表する最新情報をご確認ください。

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