【著作権の基礎シリーズ:第10回】貸与権ってなに?

― レンタルDVDやマンガ喫茶と著作権の関係 ―

【著作権の基礎シリーズ:第10回】貸与権ってなに?
― レンタルDVDやマンガ喫茶と著作権の関係 ―

著作権と聞くと、
「コピーしてはいけない」というイメージを持つ方が多いかもしれません。

しかし著作権には、コピー(複製)以外にもさまざまな権利があります。

今回取り上げるのは 「貸与権(たいよけん)」 です。

あまり聞き慣れない言葉ですが、実は私たちの身近なところで関係しています。

たとえば

  • レンタルDVD
  • レンタルコミック
  • CDレンタル

などです。

今回は、貸与権の基本を身近な例とともに整理してみます。

 

貸与権とは?

貸与権とは、
著作物のコピーを「貸す」ことをコントロールする権利です。

著作権法では次のように定められています。

著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物の貸与により公衆に提供する権利を専有する。
(著作権法26条の3)

つまり簡単にいうと、著作物をレンタルとして貸し出す場合には、著作権者の許可が必要になるということです。

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なぜレンタルに権利があるの?

なぜレンタルに権利があるのでしょうか。

理由は、レンタルによって作品が広く利用され、経済的な利益が生まれる可能性があるからです。

例えばDVDを1枚レンタルショップが購入したとします。
それを何百人もの人に貸し出すことができれば、作品の利用は大きく広がります。

もし自由にレンタルできてしまうと、著作者や権利者が適切な対価を得られなくなる可能性があります。

そのため著作権法では、レンタルについては著作権者の許可が必要とされています。

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レンタルDVDは自由に貸しているわけではない

レンタルショップ(例えばTSUTAYAなど)は、DVDを購入しただけで自由に貸し出しているわけではありません。

実際には

  • 映像製作者
  • 配給会社
  • 権利管理団体

などの仕組みの中で、レンタル用として許諾された商品が流通しています。

そのためレンタルショップは、権利処理がされた商品を仕入れて貸し出しているのです。

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CDレンタルはさらに権利が複雑

CDレンタルでは、さらに複数の権利が関係します。

例えば音楽CDの場合

  • 作詞・作曲した著作者の権利
  • 歌った実演家の著作隣接権
  • 音源を制作したレコード製作者の著作隣接権

などが関係します。

そのためCDレンタルでは複数の権利処理が必要になる仕組みになっています。

このように音楽分野では、著作権と著作隣接権が複雑に関係しているのです。

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映画は少し特別な扱い

著作権法を見ていると、映画については特別なルールが設けられていることが分かります。

映画には、

  • 監督
  • 脚本家
  • 音楽
  • 俳優(実演家)

など、多くの人が関わっています。

例えば俳優などの実演家には、通常著作隣接権があります。

実演家は本来、次のような権利を持っています。

  • 実演を録音・録画する権利(著作権法91条)
  • 放送する権利(92条)
  • インターネットで配信する権利(92条の2)

しかし映画の場合は少し事情が異なります。

映画への出演を約束している場合、その実演は映画の中で利用されることを前提としています。

そのため著作権法では、映画の制作に参加する実演家は、映画の利用に必要な範囲では録音・録画などを許諾したものと扱うという仕組みが設けられています。

つまり映画では、

  • 上映
  • DVD化
  • 配信
  • 放送

といった利用をする際に、出演者一人ひとりから改めて許諾を取る必要は通常ありません。

もしそのような手続きが必要になると、映画の公開や利用は非常に難しくなってしまいます。

そのため著作権法では、映画については特別なルールを設けて、作品の利用が円滑に行われるようにしているのです。

なお、映画の著作物については貸与権の扱いも一般の著作物とは異なる部分があり、著作権法では別の条文で整理されています。

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マンガ喫茶やレンタルコミックはどうなの?

最近では

  • レンタルコミック
  • マンガ喫茶(ネットカフェ)

などでマンガを読むことができます。

マンガ喫茶では、店内でマンガを読むことができるだけでなく、

  • DVD視聴
  • ゲーム
  • インターネット利用

などができる施設もあります。

こうしたサービスも、著作物の利用という点では著作権との関係があります。

マンガ喫茶の場合、店内で読ませる行為は貸与とは少し異なる仕組みになりますが、出版社との契約などを前提として運営されているケースが多いです。

またレンタルコミックの場合は、貸与権の問題が直接関係してきます。

一方、ゲームの場合は少し事情が異なります。

ゲームソフトは著作物ではありますが、店舗で利用する場合にはメーカーとの利用契約が問題になることが多く、著作権の貸与権とは少し異なる仕組みで運用されています。

ゲームソフトについては、映画の著作物と同様の性質を持つとした裁判例もあります。
映画の著作物には、著作者が作品の流通をコントロールできる「頒布権(はんぷけん)」という非常に強力な権利が認められています。

※「頒布権」ってなに?
簡単に言うと「作品を配ったり、広めたりすることをコントロールする権利」のことです。この権利があるため、メーカー側は「レンタル禁止」という強い姿勢を法的に維持しやすかったという背景があります。
(※この「頒布権」の詳しい仕組みについては、次回のブログでじっくり解説します!)

このように、同じ店内サービスでもコンテンツによって法律の仕組みが異なることがあるのです。

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コラム:なぜゲームソフトのレンタルは見かけないの?

実はかつて、日本でもファミコンなどのゲームソフトを数百円で借りられるレンタル店が存在していました。

しかし、ゲームは1つのソフトで長時間遊べるため、レンタルが普及すると「新品が売れなくなる」という死活問題に発展しました。

そこでゲーム業界は、著作権(貸与権や頒布権)を根拠にレンタルを制限する仕組みを作りました。

その結果、現在では一般的な店舗でのゲームレンタルは行われておらず、代わりに「中古販売(譲渡権の消尽)」という形でユーザー間の売買が行われるようになっています。

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譲渡権と「消尽」

ここで、著作権の別の考え方も少し触れておきます。

著作物が正規に販売された場合、その 本やCDなどの現物 についての譲渡権は、最初の販売の時点で使い切られたものと考えられます。

これを 「消尽(しょうじん)」 といいます。

例えば本を購入した場合、

・古本屋に売る
・フリマアプリで売る
・人に譲る

といったことは自由にできます。

もし著作権者がその後の販売までコントロールできるとすると、中古販売や古本屋は成立しなくなってしまいます。

そのため著作権法では、一度正規に販売された本やCDなどの現物については、譲渡権が消尽すると考えられています。

ただし、ここで注意が必要です。

貸与権は消尽しません。
そのためレンタルを行う場合には、著作権者の許諾が必要になります。

まとめると、譲渡と貸与では次のような違いがあります。

アクション権利の状態自由にできるか
中古で売る(譲渡)権利が使い切られた(消尽)⭕️
貸し出す(貸与)権利は消えない(非消尽)

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図書館はなぜ本を貸せるの?

本を手渡して貸し出す様子(図書館の貸出イメージ)

ここまで読むと、こんな疑問が出てくるかもしれません。

「貸与権があるなら、図書館はどうして本を貸せるの?」

実は図書館については、著作権法に特別な規定があります。

図書館については著作権法に特別な規定があり、文化の普及や教育のため、一定の条件のもとで著作物の貸し出しが認められています。

これは文化の普及や教育の観点から設けられている制度です。

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まとめ

貸与権とは、著作物のコピーをレンタルとして貸すことをコントロールする権利です。

そのため

  • レンタルDVD
  • CDレンタル
  • レンタルコミック

などのサービスは、著作権者などの許諾を前提に成り立っています。

一方で、

  • 古本
  • 中古ゲーム
  • フリマ販売

などができるのは、譲渡権の「消尽」という考え方があるためです。

普段何気なく利用しているサービスの裏側には、このような著作権の仕組みがあることを知っていただけたら嬉しいです。

皆さんが普段使っているサービスも、実はこの権利のおかげで成り立っているかもしれません。
身近な著作権に目を向けてみてくださいね。

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📚 過去のブログ

【著作権シリーズ】第1回:著作権の実名登録とは?第一発行年月日との違いも初心者向けに解説!

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