【著作権の基礎シリーズ:第6回】公の伝達権ってなに?
お店のテレビでニュースを流す。待合室で音楽をかける。イベント会場で映像を上映する。
どれも身の回りでよく見かける光景ですが、「これって著作権的に大丈夫なの?」と聞かれると、少し迷うこともありますよね。
前回は、インターネット配信など“送信する側”の権利である公衆送信権を解説しました。
今回はその続きとして、「受信したものを、公に見せたり聞かせたりする行為」に関係する公の伝達権を、文化庁の著作権Q&Aをもとに、できるだけやさしく整理していきます。
公の伝達権とは?
公の伝達権とは、放送や有線放送、公衆送信された著作物を、受信装置を使って公に伝える権利のことをいいます(著作権法23条2項)。
ここで大切なのは、自分で配信していなくても、この権利が関係する場合があるという点です。
たとえば、テレビ放送を受信し、その映像や音声を、不特定または特定多数の人に向けて見せたり聞かせたりする行為は、「公の伝達」にあたる可能性があります。
「公の伝達」とはどんな行為?
公の伝達にあたるかどうかは、次の点を組み合わせて考えます。
- 放送や配信を「受信」していること
- テレビやスピーカー、スクリーンなどの受信装置を使っていること
- 家庭の範囲を超えて「公」に向けていること
自宅で家族とテレビを見る場合は、通常、公の伝達にはなりません。
しかし、それを店舗や施設、イベント会場などで行うと、著作権の問題が出てくることがあります。
なお、営利か非営利か、無料か有料かといった点は、必ずしも決め手になるわけではありません。
公の伝達に該当する具体例
文化庁の著作権Q&Aなどを参考にすると、次のような行為は、公の伝達にあたる可能性が高いと考えられます。
公の伝達に該当する例
- お店でテレビ放送を流す
- 待合室や施設内で音楽を流す
- イベント会場で映像や音楽を再生する
- 大型モニターやプロジェクターを使って上映する
原則として該当しない例
- 家庭内でのテレビ視聴
- ごく限られた私的な集まりでの視聴
例外規定:お店のテレビはなぜ認められる場合がある?
「街中のお店では普通にテレビがついているけれど、本当に問題はないの?」
そんな疑問に関係するのが、著作権法38条3項の例外規定です。
次のような条件を満たす場合には、著作権者の許諾が不要とされています。
- 通常の家庭用受信装置を使っている
- 入場料や視聴料を取っていない
- 特別な設備(大型スクリーンなど)を使っていない
つまり、家庭用テレビをそのまま設置して流している程度であれば、例外として認められるケースがある、ということです。
ただし、設備を大きくしたり、上映そのものを目的としたりすると、この例外は適用されなくなる可能性があります。
よくある誤解
よくある誤解(チェック)
- 有料放送を契約していれば自由に流せる
- 小さなお店だから問題にならない
- 雰囲気づくりのBGMだから大丈夫
- 音量を下げれば問題ない
いずれも、一概にそうとは言えません。著作権では、「誰に向けて伝えているのか」、「どんな設備を使っているのか」といった点が重視されます。
公衆送信権との違いを整理
前回解説した公衆送信権との違いを、簡単に整理しておきましょう。
- 公衆送信権:インターネット配信など、送信する行為に関する権利
- 公の伝達権:受信したものを、公に見せたり聞かせたりする行為に関する権利
同じ著作物でも、どんな行為をしているかによって、関係する権利は変わってきます。
まとめ
公の伝達権は、店舗や施設、イベントなど、身近な場面で問題になりやすい権利です。
家庭でできることが、そのまま事業の場でもできるとは限りません。
迷ったときは、「誰に向けて伝えているのか」、「どんな設備を使っているのか」という視点で考えてみると、整理しやすくなります。
次回予告(口述権)
次回は、文章や作品を「声に出して伝える行為」に関わる口述権を取り上げます。
講演やセミナー、読み聞かせなど、実務でも迷いやすい場面を、身近な例とともに整理していく予定です。
参考リンク・過去記事
文化庁(参考)
過去記事(著作権の基礎シリーズ)
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