知財のグレーゾーンシリーズ第11回【応用編】：AIと知財

2025年12月18日 2025年8月13日 aya-office

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― 時代とともに変わる「創作」の意味

こんにちは！
知財のグレーゾーンシリーズもいよいよ最終回となりました。
今回は、私たちの身近な存在となった生成AIと知的財産権の関係を取り上げます。

画像や文章、音楽などを一瞬で生み出すAI。
けれど、その“創作物”は誰のもの？
そして、知財制度はそれにどう向き合うべきか？

AIの進化によって、これまで「人が作ったからこそ成立していた著作物」の概念が、ゆっくりと、でも確実に揺れ始めています。

1. 生成AIと著作権法 ― 誰が作者なのか？

生成AIによって作られたイラストや文章を目にする機会が増えました。
しかし、著作権法では基本的に「人間による創作であること」が前提。
**AI単独で生成した作品には、現行法上“著作権が認められない”**というのが日本の立場です。

とはいえ、

指示を出した人（プロンプト制作者）に著作権があるのか？
AIに使われた「学習データ」は許可されたものか？
AIが他者作品を模倣した場合、誰が責任を取るのか？

…など、法の空白や課題が次々に浮き彫りになっています。

2. AIと“学習データ”の問題 ― 知らないうちに他人の権利を侵害？

生成AIが優れたアウトプットを出すには、大量のデータ学習が必要です。
しかし、そのデータには他人の著作物や肖像、企業の機密が含まれている可能性もあります。

⚠ よくあるリスク

無断でネット上の画像・文章を学習に使う
著名人の声や顔を再現するディープフェイク
社内の機密情報をプロンプトに入れてしまう

そのため、企業においては社内ルールや利用ガイドラインの整備が急務となっています。

3. 海外との比較と今後の法改正の動き

日本では「AI生成物は著作物に該当しない」という立場ですが、
海外では少しずつスタンスが分かれてきています。

地域	方針概要
日本	原則「人間の創作」以外は著作物ではない
米国	AIのみで生成されたものは非著作物。裁判例あり
EU	AI著作物については議論継続中。透明性の確保が重視される傾向

日本でも文化庁などを中心に法改正の議論が始まっており、
今後「生成AIの関与度合い」や「学習データの取り扱い」がルール化されていく見込みです。

4. AI時代の知財リテラシー ― 守る力と活かす力

AI時代の「創作」は、“人がつくる”と“AIがつくる”の境界が曖昧になります。
だからこそ、これからは知財を正しく理解し、戦略的に使える力＝知財リテラシーが重要です。

✅ 企業が押さえておきたい視点

AI生成物の利用規約やライセンスの確認
業務でのAI活用ルール（プロンプト管理、出力物の扱い）
自社のコンテンツがAIに無断利用されていないかの監視
新たな「著作物の価値の定義」への対応

単なるリスク回避ではなく、「知財を活かして差別化する」視点を持つことが、今後ますます大切になってきます。

まとめ：未来の創作に向けて、知財との向き合い方をアップデートしよう

AIが生み出す“創作”に、従来の知財ルールが追いついていない
著作権の意味、著作物の定義が、変わりつつある時代
大切なのは「守るだけ」でなく、「正しく活用する」姿勢

本シリーズを通じて、知財の“グレーゾーン”に少しでも光を当てられたなら幸いです。
今後も進化する社会のなかで、「知財の視点を持てる経営者」であり続けましょう。

✍️終わりに ― 知財のこれからを、共に考える仲間として

10回にわたってお届けしてきた「知財のグレーゾーン」応用編も、今回で一区切りとなります。
最初は手探りで始めたこの連載も、書き進めるうちにたくさんの学びや気づきがありました。
中でもAIとの関わりは、知財に携わる者として、本当に深く考えさせられるテーマでした。

これから先、技術はもっと進み、社会はもっと変わっていくと思います。
でも、その変化に対応しながらも、「人として」「企業として」どう知財と向き合うか――
その視点だけは、いつの時代も大切にしていきたいと感じています。

読んでくださった皆さま、ここまで本当にありがとうございました。
このシリーズが、どこかで誰かの「知財を活かす力」につながっていれば、これ以上に嬉しいことはありません。

また別のかたちで、皆さんとご一緒できる日を楽しみにしています。

最後もいつもの合い言葉で締めたいと思います！

知財をもっと身近に。もっと味方に。

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・コラム①：営業秘密と契約の穴〜守ったつもりが、守れてなかった〜
・第2回　：不正競争防止法の落とし穴～「盗用された！」と思っても守れないこともある？～
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・第3回　：知財と契約書 ― NDA・ライセンス・共同開発の基礎
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