🍱 食の安心×知財シリーズ第2回：味だけじゃない“見えない価値”も守る

― 小さなお店が知っておきたい知的財産リスクとは？

こんにちは！
当事務所では、食品関連事業者の方々を対象に、HACCP・表示・知財・契約・補助金といった、事業の安心と継続に関わる支援を行っています。

👀 「味」だけじゃない、お店には“見えない価値”がある

「味さえ良ければ大丈夫」と思っていませんか？
でも実際にお客様が選んでいるのは、味だけでなく「雰囲気」や「こだわり」、そして「あなたのお店らしさ」だったりします。

実は、その“らしさ”こそが、**知的財産（知財）**として守るべき価値なんです。

⚠️ 小さなお店にも起こる、知財トラブルのリアル

● 店名・ロゴが他店にパクられた…

「うちの名前とそっくりなお店がオープンしている！」
→ こうしたケースでは、商標登録していないと原則として争えません。

でも、実は一部の例外もあります。

✅ 知っておきたい「先使用権」と「周知性」の考え方

商標を登録していなくても、以下のような場合は**“先に使っていた人の権利”**が保護される可能性があります。

• あなたの店名・ロゴが、地域でよく知られている（＝周知性がある）
• 登録される前から、継続して真面目に使っていた（＝先使用）

このような場合、**「先使用権」**が認められ、商標権者からの使用差止請求を退けられることもあります。

ただし…

・証明が難しい
　※特に周知性は、個々の事例で周知の範囲が変るため難しい
・ 裁判になった場合、負担が大きい
・ 相手に先に登録されると信用上のリスク

…という現実的な課題もあるため、やはり商標登録の検討は有効なリスク対策です。

💡 他にもある、見えない価値の“あるある”リスク

● メニュー名が他店に使われた…

「うちの人気メニューの名前、いつの間にか他のお店で使われてる…？」
そんな経験、ありませんか？

たとえば「黄金のからあげ」や「旨味爆発ラーメン」など、こだわって考えたメニュー名が、
まるで当たり前のように他店で使われていた――というトラブルも実際にあります。

でも残念ながら、こうしたメニュー名は「著作権では守れない」ことが多いのです。

なぜ守れないの？

著作権は、音楽・小説・美術のように「創作された表現」に対して認められる権利です。
しかし、短いフレーズや商品名・キャッチコピーのようなものは、対象外とされています。

「美味しそうな言葉を組み合わせただけ」と判断されると、保護の対象にはなりません。

商標登録すれば大丈夫？

確かに、メニュー名も商標として登録することは可能です。
ただし、「特徴がなくて普通すぎる名前」は、商標登録の審査で落ちることもあります。

たとえば：

• 「うまい唐揚げ」→ ありふれていて不可
• 「黄金のからあげ」→ よく使われており識別力が弱い

このような表現では、「他のお店も自由に使いたいはず」と判断されてしまうのです。

「Ayaの黄金からあげ」のように、自分の屋号を入れると◎

たとえば「Ayaの黄金からあげ」や「博多○○の匠ラーメン」など、
お店の名前や地域名と組み合わせることで識別力が強くなり、商標登録されやすくなります。

不正競争防止法で守れることもある？

まれに「その名前＝あのお店」と広く知られていれば、
商標登録していなくても「周知性」が認められ、保護されるケースもあります（これを“先使用権”とも呼びます）。

でも、以下のような実績が必要になります：

• 長年、継続的に使用している
• 地域や業界で有名
• 広告・メディア・SNS等で明確な露出がある
• 証拠がきちんと残っている（チラシ、投稿、取材など）

つまり、小規模店舗が日常的に使っているだけでは、なかなか認められにくいのが現実です。

💡 トラブルを防ぐために、できること

**「メニュー名も資産」**という意識を持つことが、
今後のブランド価値や信頼を守る第一歩です。

● お店のデザインやパッケージが真似された…

「うちのオリジナル包装やロゴの雰囲気、他店にそっくりそのまま使われてる…」
そんなケースも、実は飲食業や食品販売の現場ではよくあります。

店名・メニュー名と違って、**「目に見えるデザイン」**は、工夫次第で法律の保護を受けられる可能性があります。

意匠権で守れるのはどんなデザイン？

「意匠権（いしょうけん）」は、製品の見た目や形など、美的なデザインに与えられる権利です。
飲食や食品の分野でも、こんな例があります：

🍱 意匠権で保護される例：

• パッケージの独自の形状・模様
• 看板や店舗の外観デザイン
• オリジナル容器（スープカップ、弁当箱など）
• ロゴの構成（ロゴ単体は商標、構成や見た目は意匠）

💡 特徴的な構成や造形がある場合には、意匠登録をしておくことで法的に守ることができます。

ただし登録には手続きや費用がかかるため、「長く使い続けることが前提のデザイン」に向いています。

不正競争防止法で守れるケースも

意匠登録をしていなくても、一定の条件を満たせば「不正競争防止法」で保護される可能性もあります。

たとえば：

✅ 不正競争防止法で問題となる場合：

• 他人のお店のパッケージや装飾が有名になっていた
• それを知っていながら、類似する形・色・配置などを真似した
• 消費者が「元のお店と関係ある」と勘違いしそうなほど似ている

➡ このような場合、「形態模倣」として差止請求・損害賠償請求ができることがあります。

「ロゴ」もデザイン？それとも商標？

ここがよく混同されますが、ざっくりこう理解してください：

➡ 「ロゴの名前」＋「構成された図案」として、商標と意匠の両方で守るとより強固になります。

💡 守るためにできること

🔍 実際に保護された「食品パッケージ」の事例紹介

① セブンイレブンの「おにぎりパッケージ」（意匠登録）

セブン‐イレブンの定番商品「手巻おにぎり」。
実はこのフィルム包装の形状や剥がし方が意匠登録されています。

![例：三角おにぎりのフィルム構造（イメージ）]

💡 中身の「具材」ではなく、包み方の“形”が保護対象になっています。

② チキンラーメン（袋のデザイン模倣で勝訴）※不正競争防止法

日清食品が長年販売している「チキンラーメン」のパッケージ。

類似の色使い・デザイン配置で類似商品が出回ったことに対して、
日清食品が不正競争防止法違反で差止請求 → 勝訴しています。

➡ 商標登録されていないデザインでも、周知性と類似性があれば保護される好例です。

③ 高級チョコレート「ゴディバ」のパッケージ（意匠権＋商標＋著作権）

ゴディバでは、パッケージの形・リボンの配置・ロゴの組み合わせを意匠登録しています。
また、ロゴは商標、イラスト要素は著作権でも守られており、多重に保護されています。

💡 こうした構成は大企業だけのものではなく、小規模でも十分応用可能です。

✨ 小規模事業者でもできる応用アイデア

👣 ひとことアドバイス

「お店の雰囲気」「パッケージの印象」など、
“視覚的な個性”もお店の財産です。

デザインは「ちょっと工夫すれば真似されにくくなる」し、
「ちょっと手続きすれば法的に守れる」こともあります。

アイデアで終わらせず、“かたち”にして育てることが、
食の安心とブランドの信頼につながります。

● SNSの画像や文章が勝手に使われていた…

「Instagramに投稿した料理写真を、知らない人が使ってる…」
「うちの紹介文をそのままコピペして、他のお店が宣伝してる…」

そんなトラブル、実はかなり身近な“著作権侵害”の問題です。

写真・文章にも著作権はある？

答えはYESです。

• お店のSNSで使っている写真
• メニューの説明文
• チラシやブログで使ったキャッチコピー　など

これらは、誰かが“創作した表現”であれば、原則すべて著作権の対象になります。
つまり、勝手に使うと違法になる可能性が高いということです。

「誰の著作物か」があいまいなケースも多い

ただし現実には、著作権を主張するにも次のような問題があります：

➡ 「自分が投稿している＝自分の著作物」とは限らない点に注意が必要です。

トラブルを防ぐポイント

じゃあ、もし真似されたらどうすれば？

1. 証拠を残す（投稿日時・スクショなど）
2. まずは連絡・削除依頼（感情的にならず、事実ベースで伝える）
3. 改善されない場合は法的措置（弁護士等への相談）

➡ 軽微なものであれば、「連絡だけでスムーズに削除してもらえる」ケースもあります。
ただし相手の態度次第では、専門家の力が必要になることも。

💬 ひとことアドバイス

自分の投稿も、他人の投稿も、ルールを知ったうえで大切に扱うことが信頼につながります。

「SNSは無料で発信できるツール」だけど、
だからこそ**“自由に使っていい”とは限りません**。

🧰 小さなお店でもできる“守り方”の工夫

• まずは「自分のお店にどんな知財があるか」棚卸ししてみる
• 商標登録するか迷う場合も、**証拠を残しておく（先使用の証明）**ことが大事
• デザイン外注やメニュー制作時には、著作権や再利用に関する契約を結ぶ
• 「守りたいもの」は意識しておくだけでも、防げるトラブルがあります

📝 行政書士としての支援のかたち

私のような行政書士は、登録業務自体は行えませんが、

• 書類整理・棚卸のサポート
• 契約書の作成
• 補助金申請や販路開拓に関する知財活用のアドバイス

など、実務的に“知財を活かす・守る”支援をお手伝いできます。

まとめ：

HACCPで守る日常。知財で守る未来。
― ともに考え、ともに進む。法制度で支える“食の伴走者”。

＼お気軽にお問い合わせ・ご相談ください！／

📚第1回はこちら

・第1回：O-157がきっかけだった ― HACCPとの出会い！

🔗外部リンク

・東北経済産業局：とうほく知的財産いいねっと

投稿者プロフィール

aya-office

　　皆様のお役に立てる情報をお届けしたいと思っております。　　　　

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