知財のグレーゾーンシリーズ第5回:アイデア段階から始める知財対策
~ノウハウ管理・覚書・情報漏えい防止の実践ポイント~
こんにちは!
「まだ出願するほどじゃないけど、アイデアはある」——その段階から知財の守りは始まっています。
本記事では、製品化や出願前の段階でできる知財対策について、具体的な方法や失敗例を交えて解説します。
1. なぜアイデア段階の知財対策が重要なのか?
商品企画や技術検討の段階であっても、開発中の情報が漏れたり、第三者に先に出願されたりするリスクは常に存在します。
アイデアは形になった時点で資産。法的に守る準備は**「思いついた瞬間」から始めるのが理想**です。
2. ノウハウ管理の実践手法
📝 技術ノートの活用
- アイデアや開発プロセスを時系列で記録(日付、担当者の署名も残す)
- 紙だけでなく、クラウド記録や改ざん履歴が残るツールの併用もおすすめ
🔐 閲覧制限とアクセス管理
- 技術情報はフォルダ単位で閲覧権限を管理
- 社内クラウドも含めて、アクセスログの取得と定期的な棚卸しを行うことが重要です
3. 覚書・先使用権の役割と注意点
🔄 覚書は“共同開発”の保険
アイデアや技術を他社と共有する場面では、「誰がどこまで使って良いか」を明文化しておくのが肝心。
・成果物の帰属
・第三者提供の可否
・秘密保持期間
これらを事前に簡易な覚書でもいいので残しておきましょう。
⚖ 先使用権とは?
仮に他社が同じ技術で特許を取ってしまった場合でも、「自分が先に使っていた」ことを証明できれば、使用を継続できる可能性があります。
ただし、これを主張するには技術ノートや業務記録が証拠になります。日々の記録がリスク回避につながるのです。
4. 特許出願前の情報漏えい対策と「新規性喪失の例外規定」
▷ 公開してしまったら特許は取れない?
「アイデアも形になってきたし、そろそろ展示会でお披露目しようか」
そんな場面、ありますよね。でも、ちょっと待ってください。
特許は“新規性”が命。
つまり、「まだ誰にも知られていない技術」でなければ、特許として認められないのです。
もし出願前に技術内容を展示会やWEB、パンフレットなどで公開してしまうと、せっかくの発明が“公知”と判断されて、特許が取れなくなる恐れがあります。
🛟 それを救済する「新規性喪失の例外規定」
出願人自身の公表であれば、公表から1年以内に出願し、出願と同時に例外適用申請を行えば、新規性を維持できる制度です。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 出願人または承諾を得た者による公開(展示会・SNSなど) |
| 出願期限 | 公開から12ヶ月以内 |
| 申請タイミング | 出願と同時に「例外適用申請書」を提出 |
| 補足資料 | 発表スライド・展示資料・記録写真などが望ましい |
🗂 ストーリー:展示会で発表→出願→無事特許に!
ある精密機器メーカーが、開発中の新型センサーを3月の展示会で披露しました。
技術に関心を示す企業も多く、商談も動き始めていました。
ところが展示後、知財担当者が開発チームに確認。
「この技術って、出願済み? 展示内容が特許未出願なら、新規性の喪失になるかもしれないよ…」
チームに緊張が走りましたが、実は展示前にあらかじめ“例外規定の活用”を見越して準備を整えていたのです。
・展示会で公開する内容を精査
・公開日時や資料を記録
・特許出願と同時に、例外適用申請書も提出済み
その後の審査でも、制度の適用が認められ、無事に特許が成立しました。
これを教訓に、同社では「展示会出展の前に知財部門と必ず相談する」という社内ルールを徹底し、今では仮出願→展示→本出願という運用が定着しています。
▷ 日ごろの情報管理がリスク回避に
制度があるとはいえ、やはり**「出願前に公開しない」**が基本です。
とくに営業・広報・研究開発など、複数の部署が関わる企業では、知財情報の取り扱いルールをあらかじめ共有しておくことが重要です。
簡単なチェックリストや、社内ガイドラインを作っておくと、リスクがグッと減りますよ。
5. まとめ:日常業務こそ知財対策の起点
アイデア段階からのちょっとした習慣が、後々の「知財紛争」や「模倣被害」の防止策になります。
- 日々の技術ノート記録
- 関係者との覚書
- 展示前の出願と例外規定の確認
こうした基本を押さえておくことで、スムーズな知財戦略の第一歩を踏み出せます。
おわりに
私もまだまだ勉強中ではありますが、「知らなかった」で困る方を少しでも減らせるよう、
これからも知財のことを、できるだけわかりやすく発信していきます。
また気が向いたときに、のぞいていただけたら嬉しいです。
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