読売新聞 vs AI企業:著作権訴訟から考えるクリッピングの限界と未来
目次
- はじめに:報道とAIが交差する時代に
- クリッピングとは?情報収集の定番手法
- JRRCと新聞社のライセンス契約:どこまで許される?
- AIと著作権法30条の4:「学習」と「出力」の違い
- 実務者としての視点:契約と倫理の両立を
- まとめ:新聞記事の共有は、契約と配慮のバランスから
はじめに:報道とAIが交差する時代に
こんばんは!
日本初のAI企業を著作権侵害で提訴との記事を読み、非常に興味深かったので、少しでもお伝えできればとブログを書きました。
2025年8月、読売新聞社が米AI企業「Perplexity」を著作権侵害で提訴したというニュースが報じられました。新聞記事を無断で取得・学習し、類似した回答を生成したことが問題視されています。
この訴訟は、報道機関の権利保護とAI技術の利便性のバランスを問う、非常に象徴的なケースです。今回はこの話題を通じて、新聞記事の著作権、クリッピングの実務、そしてAI時代の情報共有について考えてみたいと思います。
クリッピングとは?情報収集の定番手法
「クリッピング」とは、新聞や雑誌、Web記事などから特定の情報を選び出して収集・整理し、社内や顧客に提供する行為です。
- 自社に関連する報道を社内で共有する
- 調査会社が特定テーマの記事をまとめてクライアントに提供する
- Web上のニュースを自動収集して配信するサービス
一見便利なこの手法ですが、著作権法上は「複製」や「公衆送信」に該当するため、許諾なしの利用は原則としてNGです。
JRRCと新聞社のライセンス契約:どこまで許される?
日本では、新聞記事の一部利用については「日本複製権センター(JRRC)」が許諾業務を担っています。ただし、JRRCが対応できるのは少部数の紙媒体での社内利用などに限られます。
イントラネットやメールでの共有、継続的なデジタルクリッピングなどは、各新聞社との直接契約が必要です。
- 日経新聞は「デジタル記事利用許諾契約」を提供
- 朝日新聞も法人向けに「デジタル複製許諾契約」を用意
契約内容には、利用範囲・保存期間・閲覧人数など細かな条件が設定されており、実務者としては慎重な対応が求められます。
AIと著作権法30条の4:「学習」と「出力」の違い
著作権法30条の4では、著作物の「情報解析のための利用」が一定条件下で認められています。これはAIによる「学習」に関しては比較的自由度が高いことを意味します。
しかし、今回のようにAIが学習した内容を出力し、ユーザーに提供する場合は、著作権侵害の可能性が高まります。とくに新聞記事のように、取材・編集に多大な労力がかかる著作物では、報道機関側の権利保護が強く主張される傾向があります。
実務者としての視点:契約と倫理の両立を
行政書士として契約支援に関わる立場から見ると、今回の訴訟は「情報の自由な流通」と「著作権の保護」の間で、どのような契約設計が可能かを考える良い機会です。
中小企業や自治体が新聞記事を共有する際も、契約の有無や範囲を確認することが重要です。また、AIを活用した情報収集や要約サービスを導入する場合は、出力内容が著作権に抵触しないよう、慎重な設計が求められます。
まとめ:新聞記事の共有は、契約と配慮のバランスから
新聞記事の共有は、社内の情報共有や業務効率化に役立つ一方で、著作権の観点からは慎重な対応が求められます。紙面の回覧やイントラネットでの共有など、日常的な場面でもライセンス契約の有無や範囲を確認することが大切です。
AIの進化によって情報の扱い方が変わりつつある今だからこそ、私たち実務者は「便利さ」と「権利保護」の両立を意識しながら、安心して使える仕組みを整えていく必要があります。
新聞記事の共有や契約に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
実務に即した丁寧なサポートを心がけております。
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参考リンク
- 日本複製権センター(JRRC)公式サイト
- 著作権法(法令リード):30条の4で確認下さい
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