ナフサ不足は解消したのか? 政府資料から見えた「目詰まり」対策
はじめに
以前、このブログでは「人工石油」や「ナフサ」について取り上げました。
ナフサはプラスチックや化学製品の原料として使われており、私たちの生活を支える重要な資源です。
2026年6月2日、政府は「中東情勢に関する関係閣僚会議(第9回)」を開催し、中東情勢を踏まえた燃料油やナフサ由来製品の供給状況について公表しました。
今回の資料を読んでいて興味深かったのは、単なる原料不足対策ではなく、川上から川下までの流れを確認しながら「目詰まり」の解消に取り組んでいたことでした。
今回は、この資料から見えてきた現在の状況について考えてみたいと思います。
ナフサ不足はどうなったのか
政府資料によると、国内での精製を継続するとともに、中東以外からの代替調達を進めた結果、ナフサ由来製品の供給能力は従来の約85%まで回復しているとされています。
また、在庫や輸入製品の活用によって、年度を越えて供給を継続できる見込みも示されました。
この資料だけを見ると、
「ナフサ不足はかなり改善している」
という印象を受けます。
しかし、今回の資料の主題はそこではありませんでした。
不足ではなく「目詰まり」が問題だった
今回の資料で私が最も興味を持ったのはここでした。
政府は供給不足だけでなく、「供給の偏り」や「流通の目詰まり」の解消に力を入れています。
例えば、学校給食用のパンの包装フィルム。
販売会社は「6月以降の納品は未定」と説明していました。
ところが調査を進めると、フィルムメーカー側では供給見通しが立っており、商社にも納品予定が伝えられていました。
つまり、物が無いのではなく、情報がうまく伝わっていなかったのです。
関係者への情報共有が行われた結果、給食用パンの供給継続が可能になりました。
私はこの事例を見て、「不足」と「目詰まり」は全く別の問題なのだと感じました。
流通経路そのものを変える対応
さらに驚いたのは、政府が流通経路そのものを見直していることです。
塗料やシンナーの原料となるトルエンなどについては、石油元売会社からメーカーへ直接供給するルートを強化し、最大で例年の1.8倍となる大幅な供給拡大を図っています。
また、病院や漁協、学校給食施設、福祉施設などの重要施設については、施設を稼働させるために必要なA重油や灯油、潤滑油などを石油元売会社から直接販売する仕組みも活用されています。
ここで注意したいのは、直接販売されているのはナフサ由来のプラスチック製品そのものではなく、施設の運営や製造工程に必要な燃料や潤滑油などである点です。
通常の流通経路だけでは解決できない問題に対し、流れそのものを組み替えることで対応しているのです。
「増産する」だけではなく、「どう届けるか」まで考えていることが分かります。
ナフサはどこで使われているのか
資料を見ると、改めてナフサが私たちの生活の様々な場面で使われていることに気付かされます。
川上ではナフサからエチレンやプロピレン、トルエンなどの基礎化学品が作られます。
それらは川中でポリエチレンや塩化ビニル樹脂、ポリプロピレンなどの化学製品となり、さらに川下で包装材、塗料、断熱材、塩ビ管、自動車部品などへ姿を変えていきます。
今回の資料では、この川上・川中・川下の流れが図で分かりやすく示されていました。
私はこの図を見て、ナフサ不足の影響が想像以上に広いことに驚きました。
食品包装や農業資材、医療用品、建設資材までつながっており、現代社会が巨大なサプライチェーンの上に成り立っていることを改めて感じました。
なぜこれほど細かな対応ができたのか
今回の資料で印象的だったのは、経済産業省だけが対応していたわけではないことです。
国土交通省の地方整備局、農林水産省の地方農政局、国土交通省の地方運輸局などが現場の声を集め、地方経済産業局と連携しながら目詰まりの解消に取り組んでいました。
建設分野では一人親方や工務店の声を集め、農業分野では農家や関係団体の状況を確認し、交通分野では運送事業者や整備事業者の実態を把握しています。
資料を読むと、中央省庁が方針を示すだけではなく、地方のネットワークを活用しながら現場の課題を一つひとつ解決しようとしている様子が伝わってきます。
また、物資の供給確保だけでなく、原材料不足等の影響を受ける事業者に対しては、雇用調整助成金の活用促進など雇用面での支援も行われています。
今回の対応は、単なる物資確保ではなく、社会全体の機能を維持するための取組だったと感じました。
まとめ
今回の政府資料から見えてきたのは、
「ナフサ不足は解消したのか」
という問いに対して、
「供給量は回復しつつあるが、流通や情報共有の課題は残っている」
という現実でした。
そして政府は、増産や輸入拡大だけでなく、流通経路の見直しや個別案件への対応を通じて、供給の偏りや目詰まりの解消に取り組んでいます。
ナフサ不足という言葉からは原料不足を想像しがちですが、今回の資料から見えてきたのは、情報や物流を含めたサプライチェーン全体の問題でした。
サプライチェーンは、原料があるだけでは機能しません。
必要な物が、必要な場所へ、必要な時に届くこと。
今回の資料は、その大切さを改めて考えさせてくれる内容でした。
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