知財のグレーゾーンシリーズ第8回【応用編】:ローカルベンチマークってなに?


経営デザインシートとの違いと上手な使い分け方

こんにちは!
今回は、経営改善や未来構想のツールとして注目されている「ローカルベンチマーク」と「経営デザインシート」についてご紹介します。

どちらも「自社を知る」「これからを考える」ための有効なツールですが、使う目的やタイミングが少し違います。

特に、未来志向の経営デザインシートを作るときに「ローカルベンチマークを一旦リセットした方がいい」と言われる理由についても、実務目線でお話ししていきます。


ローカルベンチマークとは?~現状を知る“地図”のようなもの~

ローカルベンチマーク(通称ロカベン)は、中小企業庁が推奨する「自社の現状を可視化するツール」です。

財務データなどの“定量情報”に加えて、商流・組織・強みや課題などの“定性情報”も整理できるようになっており、金融機関や支援機関との対話にも使われています。

中でも特徴的なのは、

  • 仕入れ先や売上先、エンドユーザーに至るまでの商流
  • 他社との差別化を行っている業務フロー
  • 自社が取引先に選ばれている理由
    などを書き込む欄があることです。

こうした情報を経営者だけでなく、現場の担当者と一緒に整理することで、社内の共通認識が生まれ、組織が活性化するという効果もあります。


経営デザインシートとは?~未来から逆算する“未来地図”~

一方、経営デザインシートは、内閣府が推奨している「未来志向の経営ツール」です。

今ある資源や実績ではなく、

  • どんな未来を描きたいか?
  • そのために、どんな価値を誰に提供するか?
  • どんなビジネスモデルを組み立てていくか?
    といった視点から、“バックキャスト(未来からの逆算)”で戦略を練っていきます。

どう使い分ける?~「今を知る」ロカベン vs.「未来を描く」経営デザインシート~

ローカルベンチマーク(ロカベン)と経営デザインシートは、目的とアプローチが異なります。

ツール名主な目的使うタイミング特徴
ローカルベンチマーク現状の可視化経営改善、資金調達、内部分析定量+定性情報で実態把握
経営デザインシート未来の構想ビジョンづくり、中長期戦略、新事業バックキャストによる戦略立案

たとえば、新規事業を始めるときには、まずロカベンで現在のリソースや課題を把握し、その後、経営デザインシートで未来像を描くという流れが有効です。

ただしここで注意したいのは、ロカベンをベースにしたまま未来を描こうとすると、現在の制約に引きずられてしまうこと。

経営デザインシートでは、いったん現状を忘れて、自由に理想の未来を描く姿勢が大切です。


社内の声を“可視化”するメリットと落とし穴

ロカベンには、「選ばれている理由」や「差別化ポイント」を現場の担当者と共有する仕組みがあり、部署間の意見交換を促進するきっかけになります。

こうした対話の中で、社長も気づかなかった強みや課題が見えてくることもあります。

ただし、ここで注意したいのが、ワンマン経営の落とし穴です。
社員の声を聞かずに独断で記入してしまうと、せっかくのツールも本来の力を発揮できません。

「誰と対話しながらまとめるか」が、ローカルベンチマークの効果を左右するポイントです。


まとめ:どちらも“使い方次第”で力を発揮する!

ローカルベンチマークと経営デザインシートは、どちらも中小企業の経営にとって心強いツールです。

  • ロカベンで現状を可視化し、課題や強みを整理する
  • 経営デザインシートで未来から逆算して戦略を描く
  • それぞれの特性を理解し、適切な場面で使い分ける

そして何よりも、経営者だけでなく、社内の声を活かして取り組むことが成功のカギです。

次回は、これらのツールを活用しながら、知財リスクやイノベーションとの関係性についても深掘りしていきたいと思います。

ロカベンと聞いて毎回お弁当を思い出す私です^^

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