レコード製作者の権利はいつまで?保護期間と権利侵害の具体例

これまでの記事では、レコード製作者に認められている複製権、送信可能化権、譲渡権、貸与権、放送二次使用料を受ける権利、貸レコードについて報酬を受ける権利を取り上げてきました。

レコード製作者の権利についてお伝えする最終回となる今回は、これらの権利がいつまで保護されるのか、そして、どのような行為が権利侵害となる可能性があるのかを、具体例とともに見ていきます。

「古い曲だから自由に使える」「CDを購入したから、その音源も自由に使える」と思われることがあるかもしれません。

しかし、音楽には、作詞家や作曲家が持つ著作権だけでなく、歌手や演奏家、レコード製作者が持つ著作隣接権も関係しています。

そのため、楽曲の著作権の保護期間が終了していても、その楽曲を録音した音源について、レコード製作者の権利が残っていることがあります。

📖目次

レコード製作者の権利をもう一度確認しよう

著作権法では、レコード製作者を「レコードに固定されている音を最初に固定した者」と定めています。

ここでいう「レコード」は、昔ながらのアナログレコードだけを指すものではありません。CDや音楽配信に使われる音源など、人の歌声や楽器の音などが固定されたものも含まれます。

一般には、録音の企画や費用を負担し、音源を制作したレコード会社などがレコード製作者に当たります。ただし、必ずしも大手のレコード会社に限られるわけではなく、個人やインディーズの音楽制作者がレコード製作者になることもあります。

レコード製作者には、その音源を無断でコピーされないための複製権や、インターネット上で無断配信されないための送信可能化権などが認められています。

また、複製されたレコードを公衆へ譲渡することに関する譲渡権、商業用レコードを貸与することに関する貸与権もあります。

さらに、市販用のCDなどが放送や有線放送で使用された場合には、放送事業者などから二次使用料を受ける権利があり、貸レコードについても一定の報酬を受ける権利が認められています。

これらは、それぞれ利用を許可したり禁止したりできる権利と、利用そのものを止めることはできないものの、使用料や報酬を受けられる権利に分かれています。

レコード製作者の権利は何年間保護される?

レコード製作者の権利は、原則として、レコードが発行されたときから70年間保護されます。

ただし、音を最初に固定してから70年以内にレコードが発行されなかった場合は、音を最初に固定したときから70年間となります。

つまり、音を最初に固定してから70年以内にレコードが発行された場合は「発行した年」が、発行されなかった場合は「音を最初に固定した年」が、保護期間を計算する基準になります。

レコードの状況保護期間
音を最初に固定してから70年以内に発行された場合レコードを発行した年の翌年1月1日から70年間
音を最初に固定してから70年以内に発行されなかった場合音を最初に固定した年の翌年1月1日から70年間

保護期間は、その出来事があった日の翌日から一日ずつ数えるのではありません。基準となる年の翌年1月1日から数え、最後の年の12月31日に終了します。

例えば、2020年中に発行されたレコードであれば、原則として2021年1月1日から70年間を数え、2090年12月31日まで保護されます。

保護期間は50年から70年へ延長された

レコード製作者の権利の保護期間は、以前は原則として50年間でした。

しかし、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定、いわゆるTPP11協定の発効に伴う著作権法の改正により、2018年12月30日から原則70年間へ延長されました。

注意点
改正前にすでに保護期間が終了していた権利が、期間の延長によって再び復活するわけではありません。

また、古いレコードについては、現在の著作権法が施行される前の法律との関係もあります。そのため、古いレコードの正確な保護期間を確認するときは、単純に発行年へ70年を足すだけでは判断できない場合があります。

保護期間が終了すれば自由に使える?

レコード製作者の権利の保護期間が終了すれば、そのレコード製作者の許諾は原則として必要なくなります。

ただし、それだけで、その音源をすべて自由に使えるとは限りません。

一つの音源には、歌詞や楽曲についての作詞家・作曲家の著作権、歌唱や演奏についての歌手・演奏家の著作隣接権、録音された音源についてのレコード製作者の著作隣接権など、複数の権利が関係しています。

レコード製作者の権利が終了していても、作詞家や作曲家、実演家などの権利が残っている可能性があります。

反対に、作詞家や作曲家の著作権が終了している楽曲であっても、比較的新しく録音された音源であれば、その音源を製作したレコード製作者や実演家の権利が残っていることがあります。

ポイント
音源を利用するときは、レコード製作者の権利だけでなく、作詞家・作曲家や実演家など、関係するそれぞれの権利を確認する必要があります。

レコード製作者の権利侵害はどのような場合に起こる?

レコード製作者の権利が存続している間に、そのレコードを許諾なく複製したり、インターネット上で配信できる状態にしたりすれば、レコード製作者の権利を侵害する可能性があります。

ただし、レコード製作者の許諾を得ている場合や、著作権法で定められた権利制限規定が適用される場合などは、直ちに権利侵害になるわけではありません。

具体的に、どのような行為が問題になるのかを見ていきましょう。

市販のCDを無断で複製して販売する

市販のCDをコピーし、海賊版として販売する行為は、レコード製作者の複製権を侵害する可能性があります。

さらに、無断で作った複製物を公衆へ販売する行為には、譲渡権も関係します。

正規に販売されているCDを購入したからといって、そのCDに収録されている音源を複製し、販売する権利まで購入者へ移るわけではありません。

CDを購入することと、その音源に関する権利を取得することは別です。

CD音源を無断でインターネットへ投稿する

市販のCDからパソコンやスマートフォンへ音源を取り込み、その音源を動画投稿サイトやSNS、ファイル共有サービスなどへ無断でアップロードする行為も、権利侵害となる可能性があります。

CDの音源をデータとして取り込む行為には複製権が、その音源を利用者からのアクセスに応じて送信できる状態にする行為には送信可能化権が関係します。

送信可能化権については、実際に誰かが再生したかどうかだけで判断されるものではありません。公衆からの求めに応じて自動的に送信できる状態に置くこと自体が、権利の対象となります。

「まだ誰にも再生されていないから問題ない」とはいえない点に注意が必要です。

市販音源を動画のBGMとして無断で使う

購入したCDや音楽配信サービスの音源を、自分が制作した動画のBGMとして使い、SNSや動画投稿サイトへ公開する場合にも注意が必要です。

購入したのだから自由に使える、短い時間しか流していないから大丈夫、利益を得る目的ではないから問題ない、とは限りません。

市販音源を動画へ取り込む行為には複製権が、その動画をインターネット上へ投稿する行為には送信可能化権などが関係する可能性があります。

また、その音源にはレコード製作者の権利だけでなく、作詞家や作曲家、歌手や演奏家の権利も関係します。

一方、SNSや動画投稿サービスが公式に提供している音楽機能については、サービス事業者が権利者と契約していることがあります。その場合は、そのサービスの利用条件で認められた範囲内で音楽を利用できます。

サービスが公式に提供する音楽機能を利用することと、自分でCDや配信音源を取り込んで投稿することは、分けて考える必要があります。

市販音源の一部をサンプリングして新しい曲に使う

既存の音源の一部を切り取り、新しい楽曲に組み込む「サンプリング」についても、レコード製作者の権利が問題になることがあります。

使用した部分が数秒であれば、必ず自由に利用できるというルールはありません。

既存の音源の一部を複製していると認められれば、使用した時間が短くても、レコード製作者の複製権などを侵害する可能性があります。

権利侵害に当たるかどうかは、単純に「何秒までなら大丈夫」と判断できるものではありません。

サンプリングを行う場合は、楽曲の著作権だけでなく、元の音源に関するレコード製作者や実演家の権利についても確認する必要があります。

市販されたCDそのものを中古で売る場合は?

それでは、購入したCDが不要になり、中古品として売る場合はどうでしょうか。

正規に販売されたCDそのものを中古品として譲渡する場合には、原則として、レコード製作者の譲渡権は及びません。

これは、いったん適法に公衆へ譲渡されたCDについて、その後の譲渡にまで権利を及ぼし続けるものではないからです。この考え方を「譲渡権の消尽」といいます。

ただし、正規に購入したCDそのものを中古品として売ることと、自分でコピーしたCD-Rなどを販売することは全く異なります。

後者は、複製権や譲渡権を侵害する可能性があります。

市販のCD音源を使わず、自分で歌ったり演奏したりする場合は?

既存のCDや配信音源を使用せず、自分で歌ったり楽器を演奏したりして、新たに録音する場合はどうでしょうか。

この場合、元のレコードに収録された音源そのものを利用しているわけではないため、原則として、その音源を製作したレコード製作者の権利は問題になりません。

ただし、歌ったり演奏したりする楽曲には、作詞家や作曲家の著作権があります。

そのため、自分の歌唱や演奏を録音し、SNSや動画投稿サイトで公開する場合などには、その楽曲の著作権について別に確認する必要があります。

また、市販のカラオケ音源や他人が制作した伴奏音源を使用する場合は、そのカラオケ音源や伴奏音源について、新たなレコード製作者や実演家などの権利が関係する可能性があります。

ポイント
「楽曲を利用すること」と「既存の音源を利用すること」は、分けて考えることが大切です。

「個人で楽しむだけなら大丈夫」とは限らない

著作権法には、私的使用のための複製に関する規定があります。

個人的に、または家庭内などの限られた範囲で使用することを目的として、自分でCDを複製する場合には、一定の条件のもとで、権利者の許諾を得ずに複製できることがあります。

しかし、「個人が行う利用」であれば、すべて私的使用になるわけではありません。

例えば、SNSや動画投稿サイトへ公開する行為は、不特定または多数の人が見たり聞いたりできる状態にするものです。自分のアカウントから投稿したとしても、通常は家庭内などの限られた範囲での利用とはいえません。

また、友人などへ音源のコピーを広く配布したり、販売や宣伝のために利用したりする行為も、私的使用の範囲を超える可能性があります。

営利目的がなくても権利侵害になることはありますので、「お金を受け取っていないから大丈夫」と判断することもできません。

音源を利用する前に確認したいこと

音楽を利用するときは、最初に「楽曲を利用するのか」「すでに録音された音源を利用するのか」を分けて考えることが大切です。

同じ曲であっても、自分で歌ったり演奏したりする場合と、市販のCDや配信音源をそのまま使用する場合とでは、関係する権利が異なります。

既存の音源を使用する場合は、その音源の保護期間が終了しているか、必要な利用許諾を得ているか、利用するSNSなどのサービスがどこまで音楽の利用を認めているかを確認しましょう。

また、私的使用などの権利制限規定が適用されるかどうかも、利用方法によって異なります。

「短い時間だから」「非営利だから」「購入した音源だから」という理由だけで、自由に利用できると判断することはできません。

権利者が分からず、許諾を得られない場合は?

音源を利用したいと思っても、レコード製作者などの権利者が誰なのか分からなかったり、連絡先が見つからなかったりすることがあります。

しかし、権利者が分からない、あるいは連絡が取れないという理由だけで、その音源を自由に利用できるわけではありません。

著作権法には、権利者やその連絡先が分からず、相当な努力をしても許諾を得られない場合に、文化庁長官の裁定を受け、補償金を支払うことによって、権利者の許諾を得ずに著作物等を利用できる制度があります。

これを「著作権者不明等の場合の裁定制度」といいます。この制度は、著作権だけでなく、レコード製作者などが持つ著作隣接権にも準用されます。

また、文化庁では、著作物等の利用について権利者の意思を確認できない場合に、文化庁長官の裁定を受け、補償金を支払うことによって、最長3年間利用できる「未管理著作物裁定制度」も案内しています。

いずれの制度も、単に連絡が取れなかったというだけで、すぐに利用できるものではありません。権利者や連絡先を探すために必要な措置を講じることや、文化庁長官への申請など、所定の手続が必要です。

裁定制度の利用を検討する場合は、文化庁の窓口や著作権業務を取り扱う行政書士などへ相談するとよいでしょう。

レコード製作者の権利を侵害した場合、民事上の責任を問われる可能性があります。

権利者は、現在行われている侵害行為をやめるよう求めたり、将来の侵害を防ぐための措置を求めたりすることができます。これが差止請求です。

また、侵害によって損害が発生した場合には、損害賠償を請求されることがあります。侵害者が法律上の理由なく利益を得ている場合には、不当利得の返還を求められる可能性もあります。

さらに、侵害行為に使用された物や、侵害によって作成された複製物の廃棄などを求められることもあります。

故意に著作隣接権を侵害した場合には、民事上の責任だけでなく、刑事罰の対象となることもあります。

実際にどのような責任を負うかは、行為の内容、規模、故意や過失の有無などによって異なります。

まとめ|レコードが古くても自由に使えるとは限らない

レコード製作者の権利は、原則として、レコードが発行されたときから70年間保護されます。音を最初に固定してから70年以内に発行されなかった場合は、音を最初に固定したときから70年間となります。

保護期間中の音源を無断で複製したり、インターネット上で配信できる状態にしたり、無断で作った複製物を販売したりすれば、レコード製作者の権利を侵害する可能性があります。

また、一つの音源には、作詞家・作曲家の著作権、歌手・演奏家の著作隣接権、レコード製作者の著作隣接権など、複数の権利が関係しています。

そのため、レコード製作者の権利の保護期間が終了したという理由だけで、その音源を自由に利用できるとは限りません。

反対に、市販の音源を使用せず、自分で歌ったり演奏したりして録音する場合には、元の音源を製作したレコード製作者の権利は、原則として問題になりません。ただし、作詞家や作曲家の著作権については、別に確認する必要があります。

音楽を利用するときは、「その楽曲を使うのか」「その録音された音源を使うのか」を分けて考えることが、関係する権利を整理するための第一歩です。

今回で、レコード製作者の権利についての解説は終了です。

音楽を作り、私たちのもとへ届けるまでには、作詞家や作曲家、歌手や演奏家だけでなく、音を録音し、音源として完成させるレコード製作者の役割があります。

普段何気なく聞いている音楽にも、さまざまな人の仕事と権利が関係していることを、今回のシリーズを通して少しでも身近に感じていただければ幸いです。

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