法人著作とは?会社に著作権が帰属する条件と注意点を解説

著作権の基礎シリーズ第15回は、『法人著作』がテーマです。

「会社で作ったものは会社のもの」──そう思っている方は多いのではないでしょうか。

たとえば、会社のパンフレットやホームページ、社内で作成した資料などについて、当然のように「会社に権利がある」と考えがちです。

しかし、著作権法の原則は少し違います。著作権は、あくまで実際に創作した人(著作者)に発生するのが原則です。

では、なぜ会社が権利を持つケースがあるのでしょうか。今回は、著作権法第15条の「法人著作(職務著作)」について、要件と注意点を整理します。

1.著作者の原則(第14条)

まず基本から整理しておきます。

著作権法では、著作者とは「著作物を創作する者」をいいます。つまり、実際に文章を書いた人、イラストを描いた人、プログラムを作成した人が著作者になります。

また、著作物の原作品に、または著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、その氏名や名称が著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定されます(著作権法14条)。

このように、著作権は原則として「実際に創作した個人」に帰属するものです。

2.法人著作とは?(第15条)

この原則の例外として定められているのが「法人著作」です。

法人著作とは、会社や国、団体などの発意に基づいて、その業務に従事する者が職務上作成した著作物について、一定の条件を満たす場合に、作成した個人ではなく法人等が著作者となる仕組みをいいます。

ここで重要なのは、単に著作権が会社へ移るのではなく、最初から法人等が著作者になるという点です。

3.法人著作の5つの要件

法人著作が成立するためには、一般に次の要件をすべて満たす必要があるとされています。

① 法人等の発意に基づくこと
→ その著作物を作る企画を立てたのが、会社や国などの法人等であることが必要です。

② 法人等の業務に従事する者が創作すること
→ 従業員など、組織の業務に従事する者が作成することが必要です。正社員に限られず、指揮監督の下で業務に従事しているアルバイトや派遣社員などが問題になることもあります。

③ 職務上作成されたものであること
→ 私的な創作ではなく、業務として作成された著作物であることが必要です。

④ 法人等の名義で公表されること
→ 公表される場合には、個人名ではなく法人等の著作名義で公表されるものであることが必要です。

もっとも、プログラムの著作物については、この「公表」の要件は不要とされています。社内だけで使う業務用システムやツールのように、外部に公表されないソフトウェアであっても、他の要件を満たせば法人著作が成立し得ます。

⑤ 契約や就業規則に別段の定めがないこと
→ 契約や就業規則で「職員を著作者とする」などの定めがあれば、そちらが優先されます。

つまり、これらの要件をすべて満たして初めて、法人著作が成立することになります。

4.よくある誤解①:会社で使う=会社の著作物?

たとえば、趣味で描いていたキャラクターが会社のイメージマスコットに採用された、というケースを考えてみます。

この場合、そのキャラクターがもともと私的に創作されたものであれば、原則として著作者はその個人です。会社で使われるようになったからといって、当然に会社が著作者になるわけではありません。

会社に権利を持たせるのであれば、著作権の譲渡など、別途の整理が必要になります。

5.よくある誤解②:委託すれば発注者のもの?

外部の制作会社やデザイナー、開発会社などに依頼して著作物を作成してもらう場面も多いと思います。

しかし、委託契約で創作された著作物は、通常は法人著作にはなりません。なぜなら、法人著作の要件の一つである「法人等の業務に従事する者」に、通常の外部受託者は当てはまらないからです。

そのため、特に契約で定めていない限り、著作権は基本的に受託者側に帰属します。発注した側が当然に権利を持つわけではありません。

6.よくある誤解③:お金を出した側が権利を持つ?

「開発費を出したのだから、自社に権利があるはず」と考えられることもありますが、これも必ずしもそうではありません。

著作権は、原則として著作物を実際に創作した者に発生します。費用を負担したことだけで、自動的に著作権が移転するわけではありません。

たとえば、プログラム開発を外部会社に委託した場合、特段の契約がなければ、著作権は開発会社側に残るのが原則です。発注者側で権利を確保したいのであれば、契約段階で譲渡や利用許諾について明確にしておく必要があります。

7.図で整理:著作権の帰属の違い

ここまでの内容を整理すると、著作権の帰属は次のように分かれます。

著作権の帰属の違いを、趣味で作ったもの・外部に委託したもの・法人著作の3つに分けて比較した図。著作者、権利の発生時点、会社との関係を一覧で整理している。

「会社で使う」「会社がお金を出した」といった事情だけでは足りず、法人著作の要件を満たすか、または契約で整理する必要がある点が重要です。

8.実務で重要なのは「契約」

ここまで見てきたとおり、法人著作が成立するケースは限定的です。

そのため実務では、著作権を譲渡するのか、利用許諾にとどめるのか、改変や二次利用をどう扱うのかといった点を、契約で明確にしておくことが重要になります。

特に委託制作の場合は、「発注したのだから当然こちらのもの」と思い込んでしまうと、後で利用範囲や改変の可否をめぐってトラブルになることがあります。

著作権の帰属は曖昧にせず、契約段階で整理しておくことが、安心して著作物を活用するためのポイントです。

9.法人が解散した場合の著作権

法人著作の場合、著作者は法人そのものです。では、その法人が解散したとき、著作権はどうなるのでしょうか。

著作権(財産権)は一般の財産と同様に扱われるため、残余財産として他の法人等に引き継がれることがあります。

一方で、著作者人格権は法人の解散によって消滅します。この点は、法人著作の特徴として押さえておきたいところです。

10.(補足)映画の著作物との違い

なお、映画や映像作品については、著作権法16条で別のルールが定められています。

映画の著作物については、法人著作が適用される場合を除き、制作、監督、演出、撮影、美術などを担当し、その映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者が著作者とされます。

法人著作と似て見える部分もありますが、条文上は別の整理がされています。この点は、次回あらためて取り上げます。

11.まとめ

著作権は、原則として実際に創作した個人に帰属します。「会社で使っているから」「費用を出したから」といった理由だけで、当然に会社のものになるわけではありません。

例外として、一定の要件を満たす場合には法人が著作者となる「法人著作」という制度がありますが、その成立要件は厳格であり、すべてを満たすケースは限られます。

そのため実務では、「どちらに権利があるのか」を曖昧なままにせず、契約や就業規則によってあらかじめ整理しておくことが重要になります。特に委託制作や外部との共同作業では、事前の取り決めが後のトラブルを防ぐポイントになります。

「誰が著作者なのか」を正しく理解し、適切に整理しておくことが、著作物を安心して活用するための第一歩といえるでしょう。

📚 過去記事

🔗 参考記事

投稿者プロフィール

aya-office
aya-office
  皆様のお役に立てる情報をお届けしたいと思っております。