情報セキュリティと知財管理シリーズ【コラム】:ChatGPTでの業務活用、どこまでOK?

――情報漏洩のリスクと対策

生成AIの普及とビジネス現場での活用例

こんにちは!
近年、ChatGPTなどの「生成AI(ジェネレーティブAI)」がビジネスの現場でも注目されています。文章の要約、メールの下書き、契約書の素案づくり、さらには翻訳など、活用の幅は広がっています。中小事業者や個人事業主の方にとっても、業務効率化の強い味方になり得る存在です。

生成AIと情報漏洩リスク

一方で見逃せないのが「情報漏洩リスク」です。生成AIには、ユーザーが入力した内容をもとに学習するものもあり、次のような情報をうっかり入力すると大きな問題になりかねません。

  • 顧客の個人情報
  • 契約内容や価格情報
  • 企画書・アイデアなどの営業秘密

特に、AIのサーバーが海外にある場合、その情報がどこでどう管理されているかは把握しきれません。

不正競争防止法における「営業秘密」

「営業秘密」は、次の3要件を満たすことで法的に守られます。

  1. 有用な情報であること
  2. 秘密として管理されていること
  3. 公に知られていないこと

生成AIに入力した時点で「秘密として管理されていない」と判断される可能性があります。

行政書士法の守秘義務

行政書士を含む士業は「業務上知り得た秘密を漏らしてはならない」と法律で定められています(行政書士法第12条)。これはオンライン相談や文書作成時に、生成AIへ依頼者情報を入力した場合にも該当する可能性があります。

無料AIツール=安全ではない理由(特に要注意!)

特に気を付けていただきたいのが、無料のAIツール=安全とは限らないという点です。

  • 入力した内容がAI開発者の学習データとして使われることがある
  • 「削除したつもり」でもサーバーに残るリスクがある
  • 日本の個人情報保護法や営業秘密保護と整合しない運用例もある

例えば、企業秘密を無料ツールにそのまま貼り付けて要約させる行為は、リスクが極めて高いです。

安全な生成AI活用のためのポイント

  • 「これを外部に話しても問題ない情報か?」と事前にチェック
  • 顧客名・契約内容・金額などは絶対に入力しない
  • 出力結果は必ず人間がチェック・修正する
  • 利用するAIツールの規約を確認する(日本語での説明がない場合も注意)

社内・事務所内での「AI利用ガイドライン」を作成し、運用を明確化しておくことも重要です。

📌 補足:安全な生成AI活用フロー

  1. Step1:AIに入力する前にチェック「これは外部に出してもよい内容か?」
  2. Step2:使用ツールの利用規約を確認
  3. Step3:社内ルールに従って出力結果を活用

まとめと実務者へのアドバイス

生成AIは便利なツールですが、「どこまで使ってよいか」の線引きを誤ると、大きな信頼損失につながります。

  • 守秘義務を守る
  • 営業秘密を保護する
  • 不必要な入力をしない

この3点を軸に、安全で賢いAI活用を心がけてください。

おわりに

生成AIは、今後ますますビジネスや日常生活に浸透していくことが予想されます。しかし、その利便性の裏側には、法律や倫理、情報管理の観点から見逃せない課題が存在します。

特に、小規模事業者や個人事業主の皆さまにとっては、「便利だから使う」ではなく、「安心して使えるかどうか」を判断軸にすることが大切です。大切な顧客情報や企業秘密を守りながら、生成AIのメリットを活かす。そのためには、知識とルール、そして慎重さが欠かせません。

これからも行政書士 Aya法務事務所では、皆さまが安心して新しい技術を活用できるよう、わかりやすく実務に即した情報を提供してまいります。

📚過去記事はこちら

▶第1回:技術流出で書類送検!営業秘密の持ち出し事件から学ぶ、企業が取るべき情報管理対策とは?

▶ 第2回:NDA(秘密保持契約)で本当に情報は守れる? 基本条項と見落としがちな落とし穴を解説!

▶第3回:裁判で「営業秘密と認められなかった」実例に学ぶク契約や制度だけでは守れない理由

▶第4回:クラウド時代の情報漏洩防止術 個人端末・LINE・SNS・メールの危険と対策

▶第5回:社内での情報の見える化と棚卸が鍵!情報資産台帳の作り方・分類・ルールづくり

▶第6回:退職時の情報持ち出し対策

▶第7回:知財契約で情報漏洩を防ぐ!

▶第8回:中小企業のためのセキュリティ体制づくり入門

🔗参考リンク

デジタル庁:テキスト生成AI利活用におけるリスクへの対策ガイドブック(α版)(デジタル庁)

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