共同親権とDV・モラハラ― 「必ず共同になる」わけではないということ
2026年4月から、離婚後の「共同親権」制度がスタートしました。
制度開始から1か月ほどが経ちましたが、
「DVがある場合でも共同親権になるの?」
「モラハラはどう扱われるの?」
「逃げた側が不利になるのでは?」
といった不安の声を、今も見かけることがあります。
特に、精神的な支配や暴言が続いていたケースでは、
「本当に共同で子育てができるのか」
という疑問を感じる方も少なくないと思います。
私自身、法務省の資料やQ&Aを読み返しながら感じたのは、今回の制度は、単純に「共同親権を増やす」ことだけを目的にしたものではない、という点でした。
そこでは繰り返し、「子どもの利益」が重視されています。
今回は、DVやモラハラがある場合、共同親権はどのように考えられているのかを、現在公表されている資料をもとに整理してみたいと思います。
共同親権は「原則共同」ではない
これまでの民法では、離婚後は父母のどちらか一方を親権者に定める必要がありました。
しかし、現在の制度では、
「共同親権にする」
「単独親権にする」
という両方の選択肢が認められています。
ただ、ここで誤解してはいけないのは、「共同親権が原則になった」というわけではない、ということです。
家庭裁判所は、子どもの利益を最優先に考えながら、
- 父母と子どもの関係
- 父母同士の関係
- これまでの監護状況
- 今後の養育環境
など、様々な事情を考慮して判断することになります。
そして、法務省の資料では、
- 虐待のおそれがある場合
- DVのおそれがある場合
- 父母が共同して親権を行うことが困難な場合
には、家庭裁判所は単独親権を定めることになると説明されています。
ここは、制度を考えるうえで非常に大切な部分だと思います。
モラハラや暴言も考慮され得る
DVという言葉について、「殴る・蹴る」といった身体的暴力だけをイメージする方は少なくありません。
しかし、今回の資料を読んでいると、法務省はもっと広い視点で整理していることが分かります。
Q&Aでは、次のような行為が問題になり得るものとして例示されています。
- 暴行、脅迫、暴言
- 誹謗中傷
- 不当な干渉
- 子どもの前で他方親を悪く言う行為
- SNSなどを通じた一方的な攻撃
- 理由のない親子交流の拒否 など
つまり、現在の制度では、身体的暴力だけではなく、精神的な支配や強いモラハラ的言動も、共同して親権を行える関係なのかを考えるうえで重要な事情になり得る、ということです。
もっとも、夫婦間の問題というのは非常に難しい部分があります。
単なる意見の食い違いなのか。
感情的な口論なのか。
継続的な人格否定や支配なのか。
線引きは簡単ではありません。
だからこそ、家庭裁判所は、一つの出来事だけではなく、日頃のコミュニケーションや言動の継続性、子どもへの影響なども含め、個別具体的に判断していくことになるのだと思います。
「協力義務」は無理な協力の強制ではない
今回の改正では、「父母は互いに人格を尊重し、協力しなければならない」という考え方も明文化されました。
ただ、この部分だけを見ると、「DVがあっても協力を求められ続けるのでは?」と不安に感じる方もいるかもしれません。
DVや虐待がある場合にまで、無理な協力を強制する制度ではない。
現在公表されているQ&Aでは、「共同して親権を行使することが困難な場合にまで、できない協力を無理に強要するものではない」と説明されています。
つまり、形式的に「共同だから必ず話し合いを続けなければならない」という制度ではなく、現実的に協力関係を築けるのかが重視されている、ということです。
DV避難と転居はどう扱われる?
ネット上では、
「子どもを連れて避難したら不利になるのでは」
「無断転居として扱われるのでは」
という声も見かけます。
この点について、法務省Q&Aでは、DVや虐待から避難する必要がある場合には、他方親に無断で転居したとしても、それだけで人格尊重・協力義務違反になるわけではないと整理されています。
さらに、「DVを立証できなければ違反になる」という考え方でもないことが説明されています。
DVという問題は、外から見えにくいことも少なくありません。
身体的暴力だけではなく、精神的支配や恐怖によって行動が制限されるケースもあります。
この点は、実務上も非常に重要になると感じます。
共同親権になったら支援は受けられなくなる?
共同親権について不安の声が大きい理由の一つが、「支援制度はどうなるのか」という問題です。
特に、
- 児童扶養手当
- ひとり親家庭支援
- 住民票の閲覧制限(DV等支援措置)
などについて、不安を感じる方は少なくないと思います。
この点について、現在公表されている行政手続・支援編Q&Aでは、共同親権になったからといって、直ちに支援が受けられなくなるわけではないことが整理されています。
例えば、児童扶養手当については、親権の有無だけではなく、「実際に子どもを監護しているか」という“監護の実態”によって判断されるとされています。
そのため、共同親権になっただけで、直ちに支給対象から外れるという整理にはなっていません。
また、ひとり親家庭支援についても、親権の有無ではなく、「現に児童を扶養している者」を支援対象としていることが説明されています。
さらに、DV等支援措置についても、共同親権であっても、被害者の住所を秘匿する必要性が認められる場合には、支援措置を実施できると整理されています。
ここは、実際に避難されている方にとって非常に重要な部分だと思います。
まとめ
共同親権については、今も様々な意見があります。
ただ、実際に資料を読み込んでいくと、少なくとも現在の制度は、「とにかく共同親権を増やす」という単純なものではなく、「子どもの利益をどう守るか」を中心に設計されていることが分かります。
そのため、
- DVやモラハラがあるケース
- 父母間の対立が非常に強いケース
- 子どもへの悪影響が大きいケース
では、共同親権が難しいと判断される可能性があります。
一方で、父母が適切に協力しながら子育てできる場合には、共同親権という選択肢もある。
現在の制度は、その選択肢を広げたものとして理解する方が、実際の制度内容に近いように感じます。
制度への不安が大きいテーマだからこそ、感情論だけではなく、実際の条文や資料を確認しながら、冷静に整理していくことが大切なのではないかと思います。
📚過去記事
- 2026年4月スタート「共同親権」とは?― 離婚後の子の養育ルールをやさしく解説 ―
- 第2回:共同親権はどう決まる?合意と家庭裁判所の判断基準を解説
- 2026年スタート「共同親権」とは?生活と制度のポイントをやさしく解説【第3回】
- 第4回:共同親権で「日常の決定」はどうする?― 単独判断と合意の境界を実務で解説 ―
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