米国産生鮮ばれいしょの輸入協議は今どの段階?農水省説明会で分かったこと

前回のコラムでは、米国産の生鮮ばれいしょについて、現在認められているポテトチップ加工用と、輸入解禁が要請されている一般流通用との違いを取り上げました。

その後、農林水産省が開催した説明会に参加しました。「なぜ日本は輸入について協議しているのか」「解禁までどのくらいかかるのか」。説明会資料とBUZZ MAFFの解説動画も参考に、現時点で分かっていることを整理します。

日本で多く作られているのに、なぜ輸入協議をするのか

じゃがいもは日本の食卓になじみがあり、国内でも多く生産されている作物です。そのため、「国内で作っているのだから、輸入しなくてもよいのでは」と考える方もいらっしゃると思います。私も、説明会に参加する前は、輸入について協議する理由を十分に理解できていませんでした。

ここで関係するのが、WTOとSPS協定です。WTOは、国と国との貿易に関するルールを扱う国際機関です。SPS協定はそのルールの一つで、食品の安全や動植物を病気・害虫から守るための措置について定めています。各国は必要な植物検疫措置を講じることができますが、その措置は科学的な根拠に基づく必要があります。

日本が植物検疫上の理由で輸入を禁止している農産物について、相手国から解禁の要請があれば、科学的な知見に基づいて検討し、協議を進めます。BUZZ MAFFの動画では、日本が農産物を輸出する際にも、相手国との植物検疫協議を経ていることが説明されていました。輸入する側になったときにも、同じ国際的なルールの下で対応するのです。

国内で多く生産されているという理由だけで、植物検疫上の輸入禁止を続けることはできません。一方、相手国から資料が提出されれば、それだけで解禁が決まるわけでもありません。病害虫が日本に侵入するリスクを評価し、必要な管理措置によってそのリスクを十分に低減できるか、日本側が科学的に検討します。

現在は、どこまで進んでいるのか

米国が一般流通用の生鮮ばれいしょについて輸入解禁を要請したのは、2020年3月です。農林水産省が公表している進捗状況では、2026年9月に、リスク管理措置について米国と協議する必要がある病害虫が特定されました。現時点で、輸入解禁が決まったわけではありません。

今後は、対象となった病害虫について、米国側から必要な資料の提出を受け、どのような管理措置で日本への侵入リスクを抑えられるかを協議します。管理措置を米国側が実際に行える体制かどうかを評価することや、関係者の意見聴取、パブリックコメントなどの手続も残されています。

説明会では「輸入解禁までにどのくらいかかるのか」という質問もありました。必要な科学的データなどがいつ、どのように示されるかによって協議に要する時間は変わり、その後の手続もあるため、現時点で時期を示すことはできない、という説明でした。

「21種類の病害虫」とは?

説明資料によると、農林水産省は、米国産の一般流通用生鮮ばれいしょに寄生する可能性などを検討し、まず54種類を潜在的な病害虫として特定しました。

そのうち33種類は、目視検査を主とした通常の検査で対応可能と評価されています。残る21種類は、目視検査以外のリスク管理措置が必要となり得るため、病害虫ごとの措置について米国と協議する対象となりました。

「21種類に絞った」と聞くと、ほかの33種類を見落としているのでは、と心配になるかもしれません。資料上は、33種類についても評価を行ったうえで、通常の検査で対応可能と整理されています。一方、21種類については、これから具体的な管理措置を検討していく段階です。

ポテトチップ加工用と一般流通用では何が違うのか

現在、米国産の生鮮ばれいしょは、条件を満たしたポテトチップ加工用に限って輸入が認められています。生産地を限定し、土壌を除去したうえで密閉型コンテナにより輸送し、国内では指定された施設で加熱加工するなど、用途に合わせた管理が行われています。

一般流通用は、スーパーなどを通じて消費者の手に渡ることが想定されます。加工施設内で処理を終える現在の仕組みとは、輸入後の扱いが大きく異なります。その違いを踏まえたリスク管理措置が必要になる、という点が今回の説明資料にも示されていました。

私が今後、確認したいこと

説明会を聞いて、輸入検疫協議がどのようなルールに基づいて進むのか、理解が深まりました。一方で、一般流通用ならではの点として、私が気になっていることがあります。

それは、食用として購入されたばれいしょが、その後、家庭菜園などで栽培に使われる可能性です。農林水産省の資料でも、一般流通用は加工用と異なり、栽培に使われる可能性を考慮したリスク管理措置が必要だとされています。具体的な措置が今後示されたときには、購入後の扱いをどのように想定しているのかも確認したいと思います。

国内の生産者にとっては、病害虫の侵入だけでなく、輸入による価格や経営への影響も切実な問題です。じゃがいも以外の作物を栽培する方にも、病害虫への心配があると思います。こうした声に目を向けながら、今後公表される管理措置や協議の進捗を見ていきたいです。

まとめ

今回の説明会を通じて、米国との協議を行っていることと、輸入解禁が決まっていることは別だと分かりました。日本は国際的なルールに従って科学的な評価を進めていますが、病害虫の侵入リスクを十分に抑えられるかどうかは、これから検討される管理措置にかかっています。

心配な点を曖昧にせず、同時に、まだ決まっていないことを決まったものとして扱わない。引き続き、公表される資料を確認していきたいと思います。

【農業コラム】米国産「生ジャガイモ」の輸入解禁をめぐる動き|いま何が検討されている?

🔗参考記事

農林水産省|米国産一般流通用生鮮ばれいしょの検疫協議の進捗状況について
説明会資料、説明会アーカイブ、協議対象種のリスト、BUZZ MAFFの解説動画などを確認できます。

植物防疫所|我が国への輸入を禁止している植物の輸入解禁に係る標準的手続

WTO|SPS協定の概要(英語)

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