レアアース・ナフサの輸入依存に研究で備える|文科省の資源リスク克服プロジェクト
資源の確保というニュースを見たとき、私は経済産業省の取組を思い浮かべます。ところが、今回目に留まったのは、文部科学省による新しいプロジェクトでした。
文部科学省は、令和9年度の概算要求に「サイエンスによる資源リスク克服プロジェクト」を盛り込んでいます。レアアースや石油化学原料などの資源をめぐる課題に、研究の力で向き合おうというものです。
最初は「資源の話なのに、なぜ文部科学省なのだろう」と意外に思いました。しかし資料を読むと、将来の選択肢を増やすための研究を支える取組だと分かりました。
📖 目次
必要な資源を、安定して手に入れられるか
日本の産業には、海外からの輸入に頼る資源が数多くあります。例えばレアアースは、電子機器や自動車などに使われる重要な材料です。ナフサなどの石油化学原料も、私たちの身の回りにあるさまざまな製品につながっています。
資源がどこかに存在していても、必要なときに、必要な量を安定して手に入れられるとは限りません。輸入先が限られていたり、国際情勢の影響を受けたりすれば、供給が不安定になる可能性があります。
文部科学省の資料では、銅のような比較的ありふれた金属についても、AIやデータセンターなどによる需要の増加で、将来は供給リスクが生じ得るとしています。「資源が乏しい」という言葉だけでは捉えきれない課題があるのだと感じました。
代わりを探す、使う量を減らす、再び使う
今回のプロジェクトが目指すのは、重要な資源に頼り続ける以外の方法を、科学の力で見つけていくことです。
例えば、手に入りやすい原料で代用できないか。必要な資源の使用量を減らせないか。使い終えた製品から資源を取り出し、もう一度利用できないか。さらに、資源を使える材料にするための製錬・分離・精製についても、新しい技術の創出を目指します。
もちろん、研究を始めればすぐに代替材料ができるわけではありません。それでも、一つの資源に頼る度合いを将来減らせるよう、さまざまな方向から可能性を探ることには意味があると思います。
なぜ文部科学省が取り組むのか
資料を読んで納得したのは、文部科学省が基礎・基盤研究を支える役割です。
新しい材料や技術は、最初から工場で大量につくれる形で生まれるわけではありません。物質の性質を調べたり、新しい原理を見つけたりする研究が、将来の技術につながっていきます。今回のプロジェクトでは、大学や研究機関などが取り組む研究を支援し、革新的な技術の種を生み出すことを目指しています。
研究には時間がかかります。成果が出るかどうか、始める時点では分からないものもあるでしょう。それでも、資源に関する知識や技術を国内に積み重ね、研究を担う人材を育てていくことは、長い目で見た備えになります。私は、その点にも期待しています。
省庁をまたいで、研究を社会につなぐ
もう一つ新鮮に感じたのは、関係する省庁との連携です。
資源の問題には、材料そのものの研究だけでなく、産業界が必要とする性能、リサイクルの仕組み、環境への影響など、いくつもの側面があります。文部科学省の概算要求資料には、経済産業省や環境省との連携も記載されています。
環境省は資源循環に関する取組を進め、経済産業省も再生材を製品に利用するための実証を行っています。例えば再生プラスチックは、回収できればそれで終わりではありません。製品に使える品質を保ち、費用面でも成り立つかという課題があります。
こうした既存の取組と、今回の文部科学省の新事業が具体的にどう結びつくかは、これから明らかになる部分もあります。ただ、研究で生まれた技術を実際の社会で使うところまで見据えるには、省庁や研究機関、企業がそれぞれの知見を持ち寄ることが大切だと感じます。
また、文部科学省の事前評価書には、必要に応じて、資源を有する同盟国や同志国などとの戦略的な国際共同研究を通じて連携を強める方針も示されています。国内だけで研究を進めるのではなく、海外の研究者と知見を持ち寄ることも、この取組の一つの可能性です。
これから何が決まっていくのか
文部科学省の資料では、このプロジェクトは令和9年度から令和15年度までの実施予定とされています。また、令和9年度の概算要求には約104億円が計上されています。
現時点では概算要求の段階であり、予算が成立したという意味ではありません。どのような研究テーマが選ばれるのか、どの研究機関が取り組むのか、省庁間で具体的にどう連携するのかについても、今後の発表を見ていきたいと思います。
まとめ|将来の選択肢を増やすために
資源を海外からの輸入に頼る日本にとって、供給が不安定になることへの備えは大切です。原油価格の変動が大きくなるなか、今後の国際情勢によっては、供給への影響も心配されます。
今回の研究は、そうした不安にすぐ対応できるものではありません。それでも、代わりの材料を探し、使う量を減らし、使い終えた資源をもう一度生かす技術が育てば、将来の選択肢は増えていくはずです。
基礎研究を支え、国内外の知恵も生かしていく。その先にどのような技術が生まれるのか、これからの動きを楽しみに見ていきたいと思います。
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🔗 参考記事
- 文部科学省「令和9年度文部科学関係概算要求のポイント」(85ページ)
- 文部科学省「サイエンスによる資源リスク克服プロジェクト(仮称)」事前評価書
- 内閣府 マテリアル戦略有識者会議資料「マテリアル革新力強化戦略に基づく環境省の取組」
- 経済産業省「令和7年度資源自律経済確立産官学連携加速化事業費」報告書
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