情報セキュリティと知財管理シリーズ第7回: 知財契約で情報漏洩を防ぐ!

―契約書に入れるべき情報管理条項とは?

こんにちは!
小規模事業者・個人事業主の皆さんへ。契約で情報を守るコツをやさしく解説します。今回はライセンス契約共同開発契約で役立つ情報管理条項と、大手契約時の注意点を事例つきで紹介します。

1. はじめに――情報管理条項の重要性

「知財の契約は大企業だけの話?」――いいえ。ノウハウ・顧客情報・見積書も大事な「情報資産」です。漏えいすれば、取引停止や信用低下などの被害が出ます。まずは契約書に情報管理条項を入れることで、差止や損害賠償の根拠を持ちましょう。

2. 契約書に盛り込むべき「情報管理条項」とは?(逆コンパイルの解説つき)

  • 秘密情報の定義:技術資料、設計図、試作品、顧客リスト、価格表、ソースコードなどを具体的に。
  • 使用目的・範囲:本契約の目的のためだけに利用。社内でも必要な人だけに共有。
  • 秘密保持期間:契約終了後も継続(例:終了後5年など)。
  • 情報の取扱方法:アクセス制限、複製制限、暗号化、持出制限、紙媒体の保管・破棄方法。
  • 再委託・第三者提供:事前承諾+同じ義務を相手にも課す。
  • 契約終了後の対応:返却や消去の方法と期限、証拠となる報告書。
  • 違反時の対応:差止・損害賠償・監査権など。

禁止行為の明示(逆コンパイルなど)

逆コンパイルとは? ソフトを機械語(バイナリ)から人間が読める形に戻す行為です。似た言葉に、命令列へ変換する「ディスアセンブル」や、動作を推測する「リバースエンジニアリング」があります。
ライセンス契約では、無断での逆コンパイル禁止(または法律で必要な場合のみ許可)とするのが一般的です。ノウハウやアルゴリズムの流出防止に欠かせないため、許可する場合は範囲を明確にしましょう。

契約例文(コピペ調整用)
(逆コンパイル等の禁止)
乙は、本ソフトウェアについて、法令により明示的に認められる場合を除き、
リバースエンジニアリング、逆コンパイル、ディスアセンブルその他の解析行為を行ってはならない。
やむを得ず当該行為を行う場合も、その範囲は相互運用性の確保に必要な最小限に限られ、
得られた情報は当該目的以外に利用してはならない。

3. ライセンス契約・共同開発契約への応用例

ライセンス契約

対象物(ソースコード、設計、ノウハウ等)と利用範囲を明確に。改変・再配布・逆コンパイルの可否や二次利用の条件を契約で決めます。

共同開発契約

成果物の権利だけでなく、開発過程の中間データ(試験結果・ログ・議事録)も秘密情報として扱います。改良発明や共同発明の持分も決めておきます。

4. 大手企業との契約で注意すべきこと(事例&対処法)

よくある事例

  • 過度に広い定義:秘密情報の範囲が広すぎ、自社のノウハウや将来の改良まで制限される。
  • 一方的な責任:違反時の賠償や解除権が自社側だけ重い。
  • 早期サインの圧力:「今日サインしないと発注できない」と迫られる。
  • 二重基準:相手には緩く、自社には厳しいルール。

対処法(実務フロー)

  1. 影響の棚卸し:定義・目的・再委託・終了後対応を重点確認。
  2. 代替案の提示:全面禁止から条件付き許容へ。
  3. 交渉記録の保存:メールや議事録を残す。
  4. 見送り基準の設定:容認不可の条件を事前に決める。

5. 図解:大手との契約前チェックフロー(4ステップ)

以下は、画像を使わずにそのまま貼れる簡易フロー図です。ブログや資料にすぐ使えます。

熟読とマーキング:不明点はコメント・付箋で可視化。相手案の版・日付も控える。
専門家チェック:「定義/目的/再委託/終了後」を重点確認。
修正案&交渉:全面禁止より条件付き許容へ。現場運用に沿う文言に。
見送りの勇気:容認不可なら締結しない判断も。短期売上より事業リスク。

キャッチコピー: 契約は“対等”が基本。相手が大手でも、内容は必ず確認!

6. 実務上の注意点とアドバイス

  • 契約と運用の両立:社内の権限管理や退職時のチェックを整える。
  • NDAは入口:NDAで守りつつ、本契約で詳細なルールを固める。
  • 第三者チェック:専門家の意見を早めに聞く。
  • テンプレ依存禁止:業種や実態に合わせて必ず修正。

7. まとめと行動の呼びかけ(CTA)

情報管理条項は、事業を守る「防波堤」です。大手との取引ほど、定義・目的・再委託・終了後を具体的にし、運用に落とし込みましょう。
「相手のひな形でサインして大丈夫?」の段階でもOK。当事務所が契約書レビューから運用ルールまで伴走します。
\あなたに合った契約書、いっしょに作りましょう!/

📚過去記事はこちら

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▶ 第2回:NDA(秘密保持契約)で本当に情報は守れる? 基本条項と見落としがちな落とし穴を解説!

▶第3回:裁判で「営業秘密と認められなかった」実例に学ぶク契約や制度だけでは守れない理由

▶第4回:クラウド時代の情報漏洩防止術 個人端末・LINE・SNS・メールの危険と対策

▶第5回:社内での情報の見える化と棚卸が鍵!情報資産台帳の作り方・分類・ルールづくり

▶第6回:退職時の情報持ち出し対策

🔗外部リンク

独立行政法人 情報処理推進機構セキュリティセンター:情報漏えい発生時の対応ポイント集

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