ナフサは原油からしか作れない?中東情勢で見えた供給リスクと代替原料の現実

中東情勢の緊迫化により、ナフサを原料とする製品で出荷停止や値上げの動きが広がっています。住宅設備、塗料、接着剤、プラスチック製品など、影響は私たちの身近なところにまで及び始めています。

ナフサはガソリンのような燃料とは異なり、プラスチックや合成繊維、塗料、接着剤といった「素材」の原料です。そのため、供給不安はエネルギー価格だけでなく、私たちの生活を支える製品全体に波及します。

こうしたニュースを見ていて、ふと疑問が浮かびました。

「ナフサは原油からしか作れないのか?」

本記事では、公的資料や業界動向をもとに、この問いを整理していきます。

目次

ナフサとは何か ― 化学産業の出発点

ナフサとは、原油を精製する過程で得られる軽質の石油製品の一つです。
このナフサを高温で分解することで、エチレンやプロピレンといった基礎化学品が生まれます。

これらは、プラスチックや合成繊維、ゴム、塗料などの原料となるため、ナフサは「化学産業の出発点」とも言える存在です。

現在の日本の化学産業は、このナフサを前提として構築されており、言い換えれば、原油に大きく依存した構造になっています。

ナフサはエネルギーではなく、さまざまな製品の原料の入口に位置する存在です。

プラスチックなどの製品がどのように作られているかは、次の図が分かりやすく示しています。

原油からナフサ、基礎化学品、機能性化学品へと進むプラスチック原料製造の概要図

出典:NEDO「石油を使わずにプラスチックを作る化学産業の原料と燃料を転換」より引用

この図から分かる通り、現在の化学産業は「原油 → ナフサ → 基礎化学品 → 製品」という流れで成り立っています。

ナフサは、この流れの中で製品へとつながる重要な起点となる存在です。

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今回の問題は「不足」だけではない

今回のナフサ問題は、単に量が足りないという話だけではありません。

中東情勢の不安定化により、原油やナフサの供給見通しが不透明になると、企業は調達リスクを避けるために出荷を調整します。その結果、実際の供給量以上に「不足感」が広がり、サプライチェーン全体に影響が波及していきます。

つまり今回の問題は、「資源の不足」+「供給不安による市場の萎縮」という二つの要素が重なっている点に特徴があります。

もっとも、日本の化学産業は中東に依存しているとはいえ、それだけに頼っているわけではありません。
米国やアジアなど複数の地域から原料を調達するなど、供給の多角化が進められています。

また、国や民間による石油備蓄もあるため、短期間で原料が完全に途絶えるような状況ではありません。
こうした仕組みによって、供給リスクは一定程度抑えられています。

さらに近年では、この問題は単なる供給リスクにとどまりません。
脱炭素の流れの中で、原料そのものを見直す動きが世界的に進んでおり、今回の中東情勢は、その流れを加速させる要因の一つとも言えます。

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ナフサは原油からしか作れないのか

結論から言うと、現在は原油由来が主流ですが、それ以外の方法も存在します。

そして、その代替技術はすでに研究・実用化の段階に入りつつあります。

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廃プラスチックからナフサを作るという考え方

その一つが、廃プラスチックを原料として再び化学原料に戻す技術です。

使用済みのプラスチックを熱分解することで、ナフサに近い成分へと戻し、再び化学製品の原料として利用する方法です。

これは「ケミカルリサイクル」と呼ばれ、従来の「燃やす・埋める」といった処理とは異なり、資源として循環させる考え方に基づいています。

ただし現時点では、分別や不純物除去が難しいこと、品質が安定しにくいこと、コストが高いことなどの課題があり、まだ主流には至っていません。

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ナフサを使わないという発想もある

さらに進んだ考え方として、そもそもナフサを使わない原料体系も検討されています。

例えば、バイオマス(植物由来原料)、二酸化炭素と水素を組み合わせた合成原料、廃プラスチックをガス化して化学品にする方法、天然ガスや石炭由来の原料などです。

こうした代替手法は、それぞれに特徴と課題があります。整理すると次のようになります。

代替原料・手法特徴・メリット課題
廃プラ(ケミカルリサイクル)資源を循環させる「循環型社会」の要回収コスト、不純物の除去
バイオマス原料カーボンニュートラル(植物由来)食料問題との競合、供給量
合成原料(CO2+水素)排出されたCO2を再利用できる水素の製造コスト、技術確立
天然ガス・石炭由来中東原油への依存度を下げられる日本では設備の大幅改修が必要

このように、代替手段は複数存在しますが、いずれも一長一短があります。特定の技術だけでナフサを完全に代替するのではなく、複数の手法を組み合わせていくことが現実的とされています。

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なぜ代替技術は主流にならないのか

ここが重要なポイントです。

代替技術が存在しても、それが主流にならない理由は、単に技術の問題だけではありません。

  • 大量に安定供給できるか
  • 品質が均一か
  • 既存設備で使えるか
  • コストが見合うか

こうした「実務的な条件」を満たす必要があります。

こうした条件の中でも、特に大きな壁となるのが設備の問題です。

例えば、ナフサを分解して基礎化学品を生み出す「ナフサクラッカー」は、特定の温度や圧力でナフサを処理するよう設計された巨大な設備です。

原料を大きく変える場合、こうした設備そのものの改修が必要になるため、簡単に切り替えることはできません。

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身近なところにもある「原料転換」の動き

こうした動きは、実は私たちの身近なところでも見られます。

例えば、私の近所のスーパーでは、「ペットボトルをペットボトルへ再生する(ボトル to ボトル)」という趣旨を明記した回収が行われていました。

もちろん、すべての店舗で同じ取り組みがされているわけではありませんが、こうした仕組みは、本来であれば原油からナフサを経て作られる原料の一部を、回収された資源で置き換える試みの一つといえます。

日常の中で行っているリサイクルも、実はこうした原料問題とつながっています。

一見すると小さな取り組みに見えますが、こうした積み重ねが、原油依存からの転換という大きな流れにつながっていきます。

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今後の見通し

ナフサは、今後もしばらくの間、化学産業の中心であり続けると考えられます。

一方で、廃プラスチックの再資源化やバイオマス原料、さらにはCO2を活用した技術など、原料の多様化は確実に進んでいます。

そして今回の中東情勢のような地政学リスクは、こうした動きをさらに加速させる要因になります。

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まとめ

ナフサは現在も原油由来が主流ですが、それ以外の方法も確実に広がりつつあります。

ただし、供給量やコスト、設備との適合といった課題から、すぐに置き換わるものではありません。

今回のナフサ問題は、単なる一時的な供給不安ではなく、日本の素材産業が抱える「原料の偏り」という構造的な課題を浮き彫りにしました。

そしてその解決は、特定の技術だけでなく、原料の多様化と、日常の中での資源循環の積み重ねの中にあります。

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