忘れられた不動産の「最後の手段」―管理制度について

― 不在者財産管理人と所有者不明土地・建物管理命令 ―

 

前回の記事では、なぜ「忘れられた不動産」が生まれてしまうのかについて整理しました。

相続をきっかけに不動産の存在に気づかなかったり、名義整理が後回しになったまま時間が経ってしまったりすると、最終的には「誰も管理できない不動産」になってしまうことがあります。

こうした場合に用意されているのが、家庭裁判所が関与する不動産の管理制度です。今回は、その中でも「不在者財産管理人」「所有者不明土地・建物管理命令」という2つの制度を、やさしく整理します。


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不在者財産管理人とは

不在者財産管理人は、所有者(相続人)は分かっているものの、長期間所在が分からない場合に利用される制度です。

たとえば、相続人の一部と連絡が取れない、行方が分からないまま長年経過している、といったケースが該当します。こうした場合、家庭裁判所が申立てに基づいて不在者財産管理人を選任し、不在者の財産を管理することになります。

不在者財産管理人でできること

不在者財産管理人の主な役割は、不在者の財産を管理・保存することです。

さらに、家庭裁判所の「権限外行為許可」を得ることで、不在者に代わって、

  • 遺産分割への参加
  • 不動産の売却

などを行うこともできます。

重要な行為には必ず家庭裁判所の許可が必要となるため、勝手に処分が進むことはありません。不在者本人の利益を守ることを前提とした制度であり、財産が宙に浮いたまま放置されることを防ぐ役割を果たします。

所有者不明土地・建物管理命令とは

管理されていない空き家と「管理地・立入禁止」の看板。所有者不明土地・建物管理命令が必要になる状況をイメージした写真

一方で、そもそも不動産の所有者が誰なのか分からない状態になっていることもあります。相続が何代も重なり、名義が古いままになっている場合などに見られるケースです。

こうした不動産について利用されるのが、所有者不明土地・建物管理命令です。この制度では、家庭裁判所が管理人を選任し、不動産の管理や保存を行わせます。

所有者不明土地・建物管理命令でできること

選任された管理人は、

  • 不動産の管理・保存
  • 必要に応じた調査

を行います。

また、家庭裁判所の許可を得た上で、不動産の売却など管理に必要な処分を行うことも可能です。所有者が分からないからといって放置され、周囲に悪影響を及ぼしたり、将来さらに問題が複雑になることを防ぐための制度といえます。

(注釈)区分所有建物(マンション等)について

※なお、マンションなどの区分所有建物については、
所有者不明土地・建物管理命令の対象にはなりません。
区分所有建物については、別の制度や対応が検討されることになります。

2つの制度の違い

ここで、不在者財産管理人と所有者不明土地・建物管理命令の違いを整理します。

  • 不在者財産管理人:所有者は分かっているが、所在が分からない場合
  • 所有者不明土地・建物管理命令:所有者そのものが分からない場合

どちらも不動産を放置しないために用意された制度ですが、対象となる状況が異なります。

注意しておきたい点

これらの管理制度は、不動産が宙に浮いたままにならないためのとても大切な制度です。

一方で、

  • 家庭裁判所への申立てが必要であること
  • 一定の時間や費用がかかること
  • 誰でも簡単に使える制度ではないこと

といった側面もあります。そのため、あくまで「最後の手段」として位置づけられている制度といえるでしょう。

まとめ:制度を使わなくて済む状態が一番の安心

不在者財産管理人や所有者不明土地・建物管理命令は、忘れられた不動産が放置されたままにならないための重要な制度です。

ただし、こうした制度を使わずに済むのであれば、それに越したことはありません。

前回ご紹介した所有不動産記録証明書制度などを活用し、早めに不動産を把握・整理しておくことが、将来の負担を小さくすることにつながります。

相続や不動産について「少し気になるな」と感じたときが、見直しを始めるタイミングかもしれません。

シリーズ記事のご案内(内部リンク)

本記事は、所有不動産記録証明制度を起点としたシリーズの一部です。
あわせてお読みいただくことで、制度の背景や全体像がより分かりやすくなります。

※各制度の詳細や申立ての取扱いは、裁判所・関係機関の案内をご確認ください。

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