🌱知財シリーズ第7回 実用新案という知的財産 ~身近なアイデアが社会を動かすな力~
こんにちは!
当事務所では、個人事業主や小規模事業者の皆さまの知財(知的財産)に関するお悩みをサポートしています。私自身も日々勉強を続けながら、「ちょっと難しいけれど、全然できなくもない!」を合言葉に、皆さんと一緒に学んでいけるブログを目指しています。
知財シリーズもはや第7回です。
今回は、特許や商標に比べると、少し知名度が低い「実用新案権」。
けれど、身近な“ちょっとした工夫”を守るにはぴったりの制度です。
本記事では、アイデア勝負で社会に価値をもたらす小規模な発明のために用意された「実用新案制度」の特徴と活用のヒントをご紹介します。
実用新案とは?〜小発明を守る、スピード重視の制度〜
実用新案は、ざっくり言うと「構造・形状・組み合わせ」に関する技術的アイデアを保護する制度です。
主な特徴
- 保護対象:機械や器具などの構造的な工夫(ソフトウェアや化学物質などは対象外)
- 登録までが早い:特許と違い、実体審査がなく形式審査のみ → 出願から数ヶ月で登録可
- 保護期間:出願から10年間
- 技術評価制度:第三者による無効主張や訴訟前に、特許庁の「技術評価書」で実質的な価値を判定
審査が不要で、登録が早い点は、特許に比べてスピード感があり、コストも抑えられます。
そのため、個人や小規模事業者でも比較的活用しやすい制度です。
こんなところで活躍!実用新案の具体例
たとえば以下のような身近な工夫が、実用新案の対象となります。
- 袋の口を簡単に閉じられるクリップ付き洗濯ばさみ
- 持ちやすさと安定感を両立した取っ手付き紙コップ
- 替え芯の交換がしやすい分割構造のシャープペンシル
- 家庭用足踏み式消毒スタンドのペダル構造
これらは「ちょっとした構造の工夫」ですが、実用新案を活用することで模倣対策や取引上の信頼確保に繋がることもあります。
現場でも人気?実用新案アイデア勝負の思い出
以前、あるセミナーで「特許や実用新案が取れそうなアイデア」を考えるというワークに参加したことがあります。
数人が、それぞれ特許や商標、意匠、実用新案のアイデアを発表し、専門家が「これは登録できるorできない」と評価をしていく形式でした。
参加者が短時間で一生懸命に考えたアイデアが想像以上に素晴らしく、その発想力に刺激を受けた記憶があります。
こうした視点を持つこと自体が、商品開発の種になると感じました。
実用新案の活用事例 ~企業による囲い込みや模倣対策にも~
実用新案は「簡易特許」と見なされがちですが、大手・中小問わず企業も積極的に活用しています。
- 特許化の前段階として、まず実用新案で出願してスピード登録 → 市場での反応を確認
- 一定数の製品改良ごとに実用新案を積み重ねて自社製品の技術的な「壁」をつくる
- コピー防止の抑止力として商品パッケージなどに「実用新案登録済」と明記
実際、複数の改良を段階的に出願し、ライバル他社の参入障壁をつくるという活用法も見られます。
特許との違いは?どちらを選ぶかの判断ポイント
比較項目 | 特許 | 実用新案 |
---|---|---|
審査 | 実体審査あり(厳しい) | 実体審査なし(形式審査のみ) |
登録までの期間 | 1〜2年程度 | 数ヶ月程度 |
保護期間 | 出願から20年 | 出願から10年 |
費用 | 高め | 安価 |
技術評価 | 審査段階で評価される | 登録後に評価書請求可 |
適した発明 | 高度で長期的に使う発明 | 比較的シンプルで短期使用向き |
製品のライフサイクルが短い場合や、急ぎで「権利化した事実」を確保したい場合には、実用新案の方が適しているケースも多いです。
実用新案の「訂正」制度について
特許には出願中の「補正制度」がありますが、実用新案には登録後の「訂正制度」が用意されています。
訂正できる内容は以下のとおり:
- 請求の範囲の減縮
- 誤記の訂正
- 明瞭でない記載の釈明
これらは、最初の技術評価書の謄本送達後2ヶ月経過、または無効審判の答弁書提出期間終了後には不可となります(1回限り)。
なお、請求項の削除は繰り返し可能ですが、無効審判の審理終結通知以降は不可です。
したがって、登録後も「内容の調整ができる可能性がある」という点を知っておくと良いでしょう。
実用新案は「入口」であり「応援ツール」
特許が難しそうだからと諦めず、「まずは実用新案で守る」という選択肢を持つことで、ビジネスの可能性が広がることもあります。
特に、創業間もない小規模事業者や、現場発の改善を大切にしている方にとっては、アイデアを形にする第一歩として有効です。
おわりに
これで「知財の世界」シリーズは一区切りとなります。
特許、商標、意匠、著作権、そして今回の実用新案と、身近な知的財産を7回にわたって見てきました。
でも、知財の世界はこれで終わりではありません。
今後は「営業秘密」や「不正競争防止法」「知的財産契約」「知財戦略」「知財とお金」など、知財“周り”のテーマにも踏み込んでいきたいと考えています!
一見難しく見える知的財産ですが、「暮らし」「仕事」「人生」にしっかり根ざしている分野です。
小さな工夫を見つけて守り、育てていく。そのお手伝いができれば嬉しいです。
次回からのシリーズも、どうぞお楽しみに!
私もまだまだ勉強中ではありますが、「知らなかった」で困る方を少しでも減らせるよう、
これからも知財のことを、できるだけわかりやすく発信していきます。
また気が向いたときに、のぞいていただけたら嬉しいです。
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📚過去記事リンク
・第1回:「著作権だけじゃない!」~知財って、実はあなたのすぐそばにある~
・第2回:「名前」や「ロゴ」にも知的財産があるって本当? 〜商標のお話〜 - 行政書士 Aya法務事務所
・第3回:「特許」ってすごい!〜未来を変える発明のチカラ〜
・第4回: 契約してこそ活かせる!知財の利用と守り方
・第5回: 衣装と知財の交差点(応用編)〜ファッションと知財の関わりを総まとめ〜
・第6回:意匠という知的財産~アイデアを守り、ブランドを育てる意匠権〜
🔗外部リンク
👉特許庁:初めてだったらここを読む~特許出願のいろは~
👉特許庁:中小企業の皆さまへ 知的財産を事業に活かそう
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