【著作権の基礎シリーズ:第2回】複製権ってなに?身近な“コピー”のルールをやさしく解説

著作権の世界には「複製権(ふくせいけん)」という、とても基本的で大切な権利があります。
難しそうに聞こえますが、ひと言で言えば「著作物をコピーしていいかどうかを決める権利」のことです。

コピーといっても、紙のコピーだけではありません。スマホで写真を撮る、録音する、スキャンする、そして
データをダウンロードすることも複製にあたります。
私たちが日常で何気なく行っている行為の多くが、実は複製権と関わっています。

今回は、文化庁の著作権Q&A(複製権)を参考にしながら、複製権の基本をやさしく整理していきます。

「自分だけで楽しむならOK」……その常識、実はデジタル時代では落とし穴かもしれません。今回は、知っているようで知らない“コピーのルール”を深掘りします。

📚 目次

1. 複製権とは?

複製権とは、著作物を「有形的に再現すること」をコントロールできる権利です。紙でもデジタルでも、形は問いません。

たとえば、次のような行為はすべて「複製」に含まれます。

  • 紙へのコピー
  • スキャンしてPDFにする
  • 録音・録画する
  • スクリーンショットを撮る
  • データをダウンロードして自分の端末に保存する

ただし、すべての複製が禁止されているわけではありません。
著作権法では、次のような場合に限り、権利者の許諾がなくても複製が認められる特例があります。

  • 私的使用(自分や家族のため)の複製
  • 学校など教育のための利用
  • 図書館・博物館などでの複写サービス

この「例外」がどこまで認められるのかが、実務ではとても重要なポイントになります。

2. ケースで学ぶ「複製権」

2-1. 私的使用のコピーはどこまでOK?

● コンサートで録音してもいい?

著作権法上は、私的使用の範囲に該当する余地がありますが、
多くのコンサートでは利用規約等で録音・録画が禁止されています。
従わない場合、退場を求められることもあります。

● DVDを業者にコピーしてもらうのは?

市販のDVDを町のダビング業者にコピーしてもらう行為は、私的使用の特例には当たりません。
私的使用が認められるのは、あくまで利用者本人が自分で複製する場合に限られます。業者に依頼する場合は、著作権者等の許諾が必要です。

● ダウンロードは複製?

はい。ダウンロードは「データを自分の端末に保存する行為」ですので、著作物の複製にあたります。
特に、違法にアップロードされた動画や音楽をダウンロードする行為は、私的使用であっても認められません。

● スマホでの“ちょっとした撮影”も複製にあたることがあります

書店で本のページをスマホで撮影する、展示物の説明文をそのまま撮るなど、
「少しだけだから大丈夫」と思ってしまう行為も、著作物の複製にあたる場合があります。

お店や施設が「撮影禁止」としているのは、著作権の問題だけでなく、
出版社や作者の利益保護、店舗運営上のルールといった理由も含まれています。

2-2. 教育の現場では特別なルールがある

● 授業で使うための録画・プリントは?

学校などの授業で使うために、テレビ番組を録画したり、新聞記事や論文をプリントして配布したりすることは、一定の条件のもとで認められています。
ただし、

  • 授業で必要な範囲に限ること
  • 必要以上の部数を作らないこと
  • 授業以外の目的(配布・再利用など)に使わないこと

といった条件があります。

● 大人数講義で大量コピーは?

大学の大教室で、数百人分の資料をコピーして配布するような場合には、
「授業のために必要と認められる限度」を超えていないか、慎重な判断が必要です。

実務では、「改正著作権法第35条運用指針」(SARTRAS)が目安とされています。
クラスの規模を超える部数や、授業で直接扱わない文献の丸ごと配布などは、著作権者の利益を不当に害する可能性が高いとされています。

2-3. 会社でのコピーとJRRCの役割

会社の業務に関係する新聞記事をコピーして関係者に配布したり、社内資料として著作物を複製したりする行為は、
私的使用には当たらないため、原則として著作権者の許諾が必要です。

● 新聞記事のコピーとJRRC

新聞記事については、

  • 新聞社
  • または複製権管理センター(JRRC:日本複製権センター)

が権利処理を行っています。
企業が社内で新聞記事を利用する場合、記事の量や利用方法によって、

  • 新聞社に直接許諾を得るケース
  • JRRCとの包括契約でカバーするケース

に分かれます。

● 社内共有フォルダに新聞記事を保存する行為にも注意

新聞記事をスキャンして、社内の誰でも閲覧できる共有フォルダに保存する行為は、
複製権だけでなく、公衆送信権(送信可能化権)にも関わります。

実際に、新聞社やJRRCが企業に対して損害賠償を求めたケースもあります。
「社内だけだから大丈夫」と思いがちですが、著作権法では会社の従業員も“公衆”にあたるとされているため、
許諾なしでの共有は問題になります。

● 合法的に利用するには?

企業が新聞記事を社内で利用する場合は、

  • 新聞社との直接契約
  • JRRCとの包括契約

を結ぶことで、複製や社内共有が可能になります。
多くの企業は、記事の量や利用頻度に応じて、新聞社とJRRCを使い分けているのが実務の実態です。

2-4. 図書館・博物館でのコピーサービス

公立の図書館や大学図書館、国公立の博物館・美術館の図書室などでは、著作権法第31条に基づき、一定の条件のもとで複写サービスが認められています。

主な条件は次のとおりです。

  • 著作物の一部分であること(原則として半分以下など)
  • 利用者の調査研究のためであること
  • 1人につき1部に限ること

コンビニのコピー機での複製とは、制度の趣旨も条件も異なります。
図書館は「公共の知のインフラ」として、著作権者とのバランスを取りながら特例が設けられているイメージです。

2-5. 講演会・研修の録画や資料配付

講演の内容は、講師が口頭で表現した「著作物」です。
そのため、次のような行為はすべて、講師の著作権に関わります。

  • 講演の様子を録画する(複製権)
  • 録画した映像を上映する(上映権)
  • 講演内容を機関誌やホームページに掲載する(複製権・公衆送信権)

これらを行う場合は、事前に講師から利用の範囲について許諾を得ておくことが大切です。
講演を依頼する段階で、「録画の有無」「アーカイブ配信の有無」「資料配付の可否」などを確認しておくと安心です。

● 実務では「複製されない工夫」も増えている

近年の研修や講演の現場では、次のような運用も増えています。

  • アーカイブ配信を行わない
  • 資料を配付せず、画面共有のみで見せる
  • 研修後にデータを残さない運用にする

これは、講師の著作物が無断で複製・再配布されることを防ぐための工夫です。
著作権を守るだけでなく、講師が安心して話せる環境づくりにもつながります。

2-6. コピーガードを外しての複製はNG

市販のDVDなどには、コピーを防ぐための「コピーガード(技術的保護手段)」が施されています。
このコピーガードを解除して複製することは、たとえ私的使用が目的であっても、著作権法上禁止されています。

また、コピーガードを回避する装置やプログラムを、

  • 販売する
  • 貸与する
  • 公衆への譲渡・貸与を目的として製造・輸入・所持する

といった行為も、罰則の対象となります。
「自分だけで見るから大丈夫」と思ってしまいがちですが、コピーガードを外す行為そのものが問題になる点に注意が必要です。

2-7. 【一覧表】これってOK?NG?ケース別まとめ

ケースOK/NGの判断注意点
自分用のコピー
(私的使用)
原則OK違法DLやコピーガード解除はNG
ダビング業者に依頼NG本人が作業しないと私的使用にならない
学校の授業配布条件付きOK授業に必要最小限の部数のみ
社内共有フォルダ要注意複製権だけでなく「公衆送信権」も絡む
リンクの作成原則OK違法サイトへの誘導(リーチサイト)はNG

3. 複製権の周辺でよくある質問

関連するホームページへのリンクを集めて「リンク集」を作ることは、通常のテキストリンクであれば問題ありません。

リンクは、リンク先のページの「住所(URL)」を示しているに過ぎず、著作物そのものを複製したり、公衆送信したりする行為ではないからです。
ただし、**「インラインフレーム」**などの技術を使って、自分のページの中に他人のコンテンツをそのまま表示させる方法は、著作権侵害(公衆送信権など)を問われるリスクがあるため注意が必要です。

ただし、違法にアップロードされた著作物(侵害コンテンツ)へのリンクを集約した、いわゆる「リーチサイト」「リーチアプリ」については、
著作権侵害とみなされる場合があります。

【補足】インラインフレームとは?
他人のサイトの画像や動画、ページ全体などを、自分のサイトの枠の中に「窓」を作って、そのままはめ込んで表示させる技術のことです。

リンクをクリックして相手のサイトに飛ぶ(通常のリンク)のは問題ありませんが、インラインフレームで「あたかも自分のコンテンツのように見せる」ことは、著作権上のトラブルになる可能性があるため、避けるのが無難です。

3-2. パロディはどこまで許される?

有名なマンガやキャラクターをもとにした「パロディ作品」は、
方法によっては、著作権侵害にあたる可能性があります。

日本には、パロディを特別に認める法律上の例外はありません。
そのため、

  • 元の作品の特徴を強く残している
  • 見た人が「元の作品だ」とすぐ分かるほど似ている

といった場合には、複製権・翻案権・同一性保持権などの侵害を主張されるリスクがあります。

SNSや地域イベントで「人気キャラ風」のイラストやグッズを作るケースも増えていますが、
「ちょっと真似しただけ」のつもりでも、権利者から見ると問題になることがありますので、慎重な対応が必要です。

💡 ワンポイント・アドバイス
「パロディは、リスペクトがあればOK」と思われがちですが、日本の法律上は、著作権者の「気持ち」だけでなく「経済的な不利益」や「作品のイメージ改変」も厳しく判断されます。 SNSなどで公開する際は、公式のガイドラインがあるかを確認するのが一番の近道です。

4. まとめ

複製権は、著作権の中でも特に身近で、日常生活と深く関わる権利です。
「自分だけで使うから大丈夫」と思っていても、

  • ダウンロード
  • 業者へのコピー依頼
  • 大人数への資料配付
  • 社内共有フォルダへの保存
  • コピーガードの解除

など、法律の範囲を超えてしまうケースは意外と多くあります。

迷ったときは、
「誰が・どこで・何のためにコピーするのか」
を一度立ち止まって考えてみると、判断のヒントになります。

次回は、複製権と並んで重要な「公衆送信権」や「翻案権」についても、やさしく解説していく予定です。

📚 過去のブログはこちら

著作権の基礎シリーズ第1回(著作権とは?)はこちらからご覧いただけます。
【著作権の基礎①】著作権ってそもそも何?

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