知財のグレーゾーンシリーズ第2回 不正競争防止法の落とし穴

~「盗用された!」と思っても守れないこともある?~

こんにちは!
前回は営業秘密について取り上げてきました。
👉第1回  :営業秘密が漏れる典型パターンと防止策を解説!
👉コラム①:営業秘密と契約の穴〜守ったつもりが、守れてなかった〜

今回は、不正競争防止法の落とし穴~「盗用されたされた!」と思っても守れないこともある?をお伝えします。


🧩 はじめに

たとえば、こんな話を聞いたことはありませんか?

「自分の作ったサービスのロゴやコンセプトを、他社が真似して出してきた」
「前に説明した相手が、そっくりなビジネスを始めていた」

「盗まれた!」と感じても、実際に法律で守れるかどうかは別問題です。
特許や著作権のような登録・創作ベースの権利がなくても、不正競争防止法という法律が守ってくれる場面もあります。

ただし、それには一定の要件を満たしていることが必要です。

今回は、不正競争防止法の概要と、意外と知られていない**「守られないケース」**について、具体例を交えてご紹介します。


⚖️ 不正競争防止法とは?

企業や事業者のビジネスを、公正な競争の中で守るための法律です。
一般の方にはなじみが薄いかもしれませんが、以下のような行為が禁止されています。

  • 営業秘密の不正取得・使用(第1回でも登場)
  • 他人の商品・サービスの形・表示・周知性を利用した混同行為
  • 他人の技術成果やアイデアの不正な模倣
  • ドメイン名の不正取得(悪意のある「なりすまし」など)

保護される対象は多岐にわたりますが、今回は特に小規模事業者や個人に関係が深い「形態模倣」や「営業秘密」以外の領域に注目します。


💡 守られると思っていたのに? こんな落とし穴

① ロゴやデザインを真似されたけど…?

たとえば、あなたの事業ロゴや商品パッケージが目立ってきた頃に、
似たようなロゴやデザインを他社が使い始めたとします。

しかし、それが「不正競争」として法的に守られるには…

  • 周知性(ある程度広く知られていること)
  • 消費者が誤認・混同するほど似ていること

…といった条件が必要です。

つまり、立ち上げたばかりでまだ知名度がない場合には、守られにくいのです。

📌 対策のヒント:
初期段階でも、商標登録を検討する/SNSや媒体でロゴを積極的に露出して周知性を高めることがカギになります。


② 仕様やアイデアを先に出したのに、相手が先に出してきた!

ビジネスの構想段階で、企画書やプレゼン資料を出した相手が、
似たような商品・サービスを先にリリースしてくる…

こんなケースもありますが、法的に守られるためには、
**「技術的成果であること」や「模倣の容易性」**など、かなり厳しい条件があります。

また、不正競争防止法による模倣の禁止は、「商品の形態」に限定されており、抽象的なアイデアや機能的構想は対象外とされがちです。

📌 対策のヒント:

  • 記録をしっかり残す(メール・日付付きの資料など)
  • 可能であればNDA(秘密保持契約)を交わす
  • 事前に知財専門家へ相談するのも有効です

③ SNSやWeb上での「パクリ」は?

「自分が投稿した写真や文章が、勝手にコピーされて他人のサイトで使われている」
こうしたケースでは、不正競争防止法よりも著作権法の問題になることが多いです。

しかし、個人の活動が商業的に成長していく過程では、
**「信用を毀損するような使い方」**をされた場合に不正競争防止法が適用されることもあります。

📌 対策のヒント:

  • 投稿のスクリーンショットや保存
  • 使用実態の把握
  • 必要に応じて弁護士・専門家の助言を仰ぐ

🚨 不正競争にあたるとどうなる?(罰則と救済)

不正競争防止法に違反すると、次のような罰則や民事上の請求が可能になります。

【刑事罰(営業秘密の侵害など一部行為)】

  • 最大で 10年以下の懲役または2,000万円以下の罰金(またはその両方)
  • 法人に対しては 3億円以下の罰金

【民事上の請求】

  • 差止請求(使用の停止を求める)
  • 損害賠償請求(被った損害の補償を求める)

つまり、違法に情報を持ち出したり、他人の信用を利用して不正に商売した場合、
民事・刑事の両面で責任を問われる可能性があるのです。


✅「正当な手段」による取得なら違法ではない

ただし、注意点として──
相手が正当な手段で情報を取得した場合には、不正競争には該当しません。

たとえば…

  • 公開情報を分析して得られた顧客リストやノウハウ
  • 合法的に購入した商品を観察・調査(リバースエンジニアリング)して得た仕様
  • 従業員が記憶だけを頼りに、転職先でノウハウを活用した

…といったケースでは、「不正取得」とはみなされない可能性があります。

この点でも、契約や社内ルールで情報の取扱いを明確にしておくことが重要です。


📝 おわりに

不正競争防止法は「登録なしでも使える法的手段」として、とても心強い存在ですが、
実際には**「守られるケース」と「守られないケース」の線引き**が非常にシビアです。

「これは盗用では?」と思っても、事前の準備や証拠がなければ、法的保護が難しいことも多いという点を、ぜひ知っておいていただきたいです。

私もまだまだ勉強中ではありますが、「知らなかった」で困る方を少しでも減らせるよう、
これからも知財のことを、できるだけわかりやすく発信していきます。
また気が向いたときに、のぞいていただけたら嬉しいです。

知財をもっと身近に。もっと味方に。

\お気軽にお問い合わせ・ご相談ください!/


✨ 次回予告:知財と契約書 ― NDA・ライセンス・共同開発の基礎

次回は、「知財と契約書」についてお伝えします。
「契約ってそんなに重要なの?」「契約書の内容ってどんな風にしたら良いの?」――
そんな疑問にもお応えしていきます!


◆過去記事リンク

👉第1回  :営業秘密が漏れる典型パターンと防止策を解説!
👉コラム①:営業秘密と契約の穴〜守ったつもりが、守れてなかった〜

🔗外部リンク

👉経済産業省:不正競争防止法の概要

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