4つの枠でチャンス拡大!補助金を使って後継者問題・M&Aの費用を支援
2025年度『事業承継・M&A補助金』最新活用術
中小企業、小規模事業者、個人事業主の皆様、2025年度(第13次公募)「事業承継・M&A補助金」は、事業の未来を左右する「次の一歩」を強力に後押しする制度です。
後継者への承継、M&A、廃業、再出発など、事業転換には専門家費用や設備投資など多額の費用が伴います。「資金が不安で一歩踏み出せない…」と悩む経営者にとって、返済不要なこの補助金はまさに追い風となります。
本記事では、公募中の「4つの枠」の特徴と活用ポイントを、具体的な事例を交えて徹底解説します。自社に最適な枠を見つけ、申請準備をすぐに始めましょう。
この記事の目次
■ 事業承継・M&A補助金とは
中小企業や小規模事業者、個人事業主の方々が、後継者問題・M&A(合併・買収)・廃業・再出発といった「次の一歩」を踏み出す際、費用の一部を国が支援してくれる制度が「事業承継・M&A補助金」です。
多くの事業者が「承継したいが資金が…」「M&Aの準備段階から手が回らない」「廃業の整理にもお金がかかる」と悩む中で、この補助金は「新たな挑戦を後押しする」役割を担っています。
例えば、専門家に支払う手数料、機械設備の入れ替え、店舗・事務所の改装、在庫処分・解体費用など、実務的に発生するコストを“支援対象”とする枠が設けられています。
この補助金を活用することで、借入れに頼るだけでなく、返済不要な支援を受けて安心して次のフェーズへ進める可能性が広がります。
4つの枠で自社のニーズをチェック!活用ポイントと目安
以下、2025年度(第13次公募)で募集されている「4つの枠」について、それぞれの特徴と、活用する際のポイントを整理しました。
| 枠の名称 | 目的・対象となる事業 | 補助上限の目安 | 補助率の目安 |
|---|---|---|---|
| ① 事業承継促進枠 | 親族・従業員などへの事業承継に伴う設備投資や改築費用 | 800万円~1,000万円 | 小規模:2/3、一般:1/2 |
| ② 専門家活用枠 | M&Aの準備・実行にかかる専門家費用(仲介、FA、弁護士等) | 600万円~2,000万円 | 1/2~2/3程度 |
| ③ PMI推進枠 | M&A後の経営統合(PMI)にかかるIT化、組織再編費用 | 150万円~1,000万円 | 1/2(小規模:2/3)程度 |
| ④ 廃業・再チャレンジ枠 | 廃業(清算・整理)または再チャレンジ(新規創業準備)費用 | 150万円 | 1/2~2/3程度 |
■ ① 事業承継促進枠
こちらは、親族内承継や従業員承継など、“身近な後継者”に事業を引き継ぐケースを対象とし、設備投資や事務所・店舗の改築といった再構築費用を補助する枠です。
- 補助上限・補助率の目安:
- 通常は上限 800万円。一定の賃上げ要件を満たす場合、上限が 1,000万円に引き上げ。
- 補助率として、小規模事業者の場合は2/3、一般の中小企業でも1/2程度が目安。
- 活用ポイント: 後継者が既に決まっており、事務所改修や機械更新、店舗移転など「新たなスタートを切る準備」ができている場合に有効です。特に、世代交代にあたり、「次の時代に合った体制に整えたい」という事業者に最適です。
- こんな事例あり:
例えば、地域の印刷業で代表交代を機に設備をフル更新、事務所をオープンスタイルに改装して新規顧客を取り込んだケース等
■ ② 専門家活用枠
M&Aを検討する売り手・買い手双方が、FA(フィナンシャル・アドバイザー)、仲介業者、弁護士・会計士などの専門家を活用する際にかかる費用を支援する枠です。
- 補助上限・補助率の目安:
- 補助上限は類型により600万円~800万円。ただし、特定の要件を満たすと最大 2,000万円まで加算される場合がある。
- 補助率は類型によって異なりますが、典型的には1/2~2/3など。
- 活用ポイント: M&Aそのものを“実行段階”に進める準備として、専門家を巻き込んでおきたい場合に有効です。仲介手数料、デューデリジェンス費用、契約書作成費用など、実務にかかる大きなコスト負担を軽くできます。
- こんな事例あり:
例として、売り手企業が解体工事を手掛けていた建設業者。将来を見据えて大手建築会社との提携を模索し、専門家を交えてM&A交渉を進めた結果、売却・統合が実現したケース。
■ ③ PMI推進枠
こちらは、M&A後の経営統合(PMI=Post Merger Integration)に関わる支援に特化した枠です。「買った後どう活かすか」というシナジー創出や組織・仕組みの再構築フェーズに着目しています。
PMI(Post Merger Integration)とは?
M&Aの「その後」に焦点を当てた重要なフェーズが、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)です。直訳すれば「合併・買収後の統合」。これは、単に会社を買った・売ったという“取引”で終わらせず、以下のような実務面の調整を通じて「相乗効果(シナジー)」を生み出すことを目指します:
- 業務フローや社内制度の統一
- 組織文化・風土のすり合わせ
- 会計・システム・IT基盤の統合
- ブランド・販売チャネルの再構築
- 人材の定着と再配置
PMIが適切に進められない場合、「買収したが業績が悪化した」「社員が辞めた」「業務が混乱した」といった失敗につながることもあります。
そこで、「PMI推進枠」ではこのPMIにかかる費用(専門家の支援や設備改修、IT導入など)を支援してくれる仕組みとなっています。
- 補助上限・補助率の目安:
- 「PMI専門家活用」の上限は 150万円。
- 「事業統合投資」の上限は 800万円(一定の賃上げ要件を満たすと1,000万円)。
- 補助率例としては1/2(小規模事業者であれば2/3)程度。
- 活用ポイント: M&Aを機に業務プロセス整備、人材育成、IT化、組織統合などを実施する場合に力になります。
- こんな事例想定:
たとえば、製造業A社が部品加工メーカーを買収し、両社の生産ラインを統合。IT基盤を共通化し、販路を共有して売上を拡大した。こうした「買って終わりにしない」統合計画を伴ったケースで活用されています。
- 補助上限・補助率の目安:
■ ④ 廃業・再チャレンジ枠
事業承継やM&Aが難しい状況にある事業者が、廃業を選択ないしはリセット(再チャレンジ)を視野に入れて、「清算」「整理」「再出発」のために要する費用を支援する枠です。
- 補助上限・補助率の目安:
- 補助上限は概ね 150万円。
- 補助率は約1/2~2/3といった水準。
- 活用ポイント: 店舗撤退・在庫処分・解体・設備撤去など、廃業に際して発生する実務コストを補助します。再チャレンジ(新規創業準備)を考えている場合も、新たな創業準備にかかる経費が対象になる可能性があります。
- こんな事例あり:
地域の小売店が後継者不在で閉店を決め、店舗設備を撤去・在庫を処分して次のビジネスを立ち上げた際、この枠を活用して廃業費用の一部を補助されたというパターンがあります。
- 補助上限・補助率の目安:
事例で振り返る活用のリアル
制度の説明だけでなく、実際の公的事例からイメージを深め、自社の状況と照らし合わせてみましょう。
・事例1:卸売業・小売業 A社(専門家活用 × 買い手支援型)
後継者不在かつ人口減少地域の薬局を営むA社。地域のインフラとしての店舗継続性を重視し、仲介業者を通じて別法人へのM&A交渉を進めた。
活用枠:専門家活用枠
ポイント:「地域インフラを残したい」「後継者がいないから別法人が引き継ぐ」という、地域と事業の継続性を重視するケースにマッチ。
・事例2:建設業 B社(専門家活用 × 売り手支援型)
設立4期目の解体工事業B社。「事業の展開幅を広げたい」との視点から、大手建築会社を買い手候補にM&A交渉を実施。提携によるシナジーを狙った。
活用枠:専門家活用枠
ポイント:売り手が「次の成長を見据えて身軽になる」「提携でシナジーを出したい」と考えている場合に有効。
・事例3:組織統合を経た製造業(PMI推進想定)
製造業者が部品加工会社を買収。買収後、IT化・生産ライン統合を推進することで、短期間で売上拡大・コスト削減を実現。
活用枠:PMI推進枠
ポイント:「買って満足」ではなく、「買った後どう生かすか」という統合計画に力を発揮。
活用時の注意点・チェックリスト
補助金を「申請して終わり」ではなく、交付・実行までスムーズに進めるために、以下のポイントを押さえておきましょう。特にGビズIDの取得は時間がかかるため、早めの対応が鍵となります。
- 最新の『公募要領』を必ず確認する : 第13次公募では4枠すべてで募集が出ています。
- 「GビズIDプライム」の早めの取得 : 発行まで時間がかかるため、申請前に対応が必要です。
- 補助対象経費の範囲を確認 : 枠ごとに異なるため、何が「対象経費」になるかをしっかり確認しましょう。
- 実績報告・証拠書類の提出 : 交付決定後には必須です。期限や形式を守らないと返還の可能性もあります。
- 補助率・上限の条件を整理 : 自社の規模、従業員数、賃上げ実績などを事前に整理し、条件を満たすかチェック。
- 最重要!実現性の検討 : 補助金を活用することが、事業計画・資金計画を含めた将来の事業展開にとって本当に有益か、冷静に検討した上で申請を判断しましょう。
まとめ:次の一歩を後押しする支援制度
この制度は、事業を「継続」するためだけでなく、「次のステージに成長させる」「再チャレンジを支援する」「事業を安心して引き継ぐ」ための支援だととらえると、活用の選択肢が広がります。
- 後継者が決まっていて設備更新・体制整備が必要な方 → 事業承継促進枠
- M&Aを含め専門家を交えた交渉を進めたい方 → 専門家活用枠
- 買収後の統合作業まで含めて成長を描きたい方 → PMI推進枠
- 廃業を考えていた/次のビジネスを視野に入れている方 → 廃業・再チャレンジ枠
まずは「自社がどの枠に当てはまるか」「どんな支援が必要か」を整理し、申請に向けての準備(特にGビズIDプライムの取得)を早めに進めてみてください。
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