【著作権の基礎シリーズ:第7回】口述権ってなに?──朗読・読み聞かせと著作権の考え方
―「朗読会って、許可が必要?」「読み聞かせは大丈夫?」―
著作権には、よく知られている権利と、あまり知られていない権利があります。
「口述権」は後者にあたるかもしれません。
名前だけを観ると、少し難しそうに感じますが、実はとて身近な場面で関係しています。
今回は、著作権(財産権)のひとつである口述権をテーマに、
条文(第24条)を手がかりにしながら、「原則」と「例外」をやさしく整理します。
※文化庁の情報(著作権Q&A等)を参考にしつつ、現場で迷いやすいポイントを中心にまとめます。
目次
- 1. 口述権とは?
- 2. 口述権は、どこに書かれている権利か
- 3. 口述権は「原則として許諾(同意)が必要」
- 4. 例外|著作者の許諾(同意)が不要になるケース
- 5. OK/NGの分かれ目
- 6. 録音された朗読を再生する場合も注意
- 7. 家庭内の読み聞かせは?
- 8. よくある誤解
- 9. まとめ|口述権は「声に出すこと」を整理するための権利
- 過去記事(内部リンク)/参考リンク(外部リンク)
1. 口述権とは?
口述権は、言葉で表現された著作物(本・詩・脚本など)を、
公の場で声に出して伝える(朗読・読み聞かせ・講演など)ときに関係する権利です。
ポイントは、「声に出して伝える」行為が、著作権法上は“口述”として整理されることがある、という点です。
読み聞かせや朗読など、「声に出して伝える」行為が、口述権と関係します。
2. 口述権は、どこに書かれている権利か
口述権について調べると、著作権法第2条1項18号に
「口述 朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く。)をいう。」
とあります。
ここでは、「口述」という言葉の定義が示されています。
一方で、「口述権という権利そのもの」は、著作権法第24条に定められています。
(口述権)第24条
著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する。
条文をそのまま読むと、少し分かりにくく感じるかもしれません。
「その言語の著作物」「公に」「専有する」など、法律独特の言い回しが並んでいます。
第24条をやさしく読み解いてみます。
- その言語の著作物
言葉で表現された作品(本・詩・脚本など) - 公に
不特定または多数の人へ向けて - 口述する
声に出して伝えること(朗読・読み聞かせ・講演など) - 専有する
原則として、著作者だけが決められる
これらをまとめると、第24条は次のように言い換えられます。
言葉で書かれた作品を、
声に出して公の場で伝えるかどうかは、
原則として著作権者が決める。
これが、口述権です。
なお、著作権法第2条1項18号の条文には、「実演に該当するものを除く」とありますが、
これは、朗読や読み聞かせとは別に、実演家の権利として整理される行為があるためです。
今回は、著作権(財産権)の基礎として、口述権に関係する部分に絞って見ていきます。
3. 口述権は「原則として許諾(同意)が必要」
ここが、今回いちばん大切なポイントです。
口述権も、他の著作権と同じく、原則としては、著作者の許諾(同意)が必要な権利です。
朗読や読み聞かせは、「最初から自由にできる行為」ではありません。
つまり、本来はNGだけど、条件付きで許されているという考え方が、基本になります。
4. 例外|著作者の許諾(同意)が不要になるケース
とはいえ、朗読や読み聞かせがすべて許諾必須かというと、そうではありません。
著作権法には、一定の条件を満たす場合に許諾なしで利用できる例外があります(いわゆる「権利制限規定」)。
口述に関係する代表例が、第38条第1項です。
- (前提として)公表された著作物である
- 営利を目的としない
- 観客・参加者から料金を受けない(無料)
- 口述する人に報酬が支払われない(無報酬)
つまり、非営利・無料・無報酬などの条件がそろった場合に、朗読や読み聞かせは、例外的に認められます。
大切なのは、「OKだから問題にならない」のではなく、「本来は同意が必要な行為を、法律が例外として注目している」という点です。
5. OK/NGの分かれ目
(1)許諾不要になりやすい例
- 学校・図書館・地域のボランティアによる読み聞かせ
- 地域ボランティアによる無償の朗読会
これらは、条件を満たしていれば、著作者の許諾(同意)は不要となるケースが多いでしょう。
(2)許諾が必要になりやすい例
- 有料イベントでの朗読
- 営業中に朗読CDを流す場合
- 店舗の集客を目的とした朗読
などでは、口述権が問題なる可能性があります。
同じ「朗読」でも、お金(料金・報酬)と目的(営利性)結論が変るのがポイントです。
6. 録音された朗読を再生する場合も注意
自分で本を読んでいなくても、
朗読を録音したCDや音源を再生し、声で内容を伝えている場合には、
口述に含まれると考えられます。
「自分が読んでいないから大丈夫」
「再生するだけだから問題ない」
とは限らない点は、押さえておきたいところです。
7. 家庭内の読み聞かせは?
ここまで読むと、「じゃあ、家での読み聞かせもダメなの?」と不安になる方もいるかもしれません。
でも、ご安心ください。
親が子どもに、寝る前に本を読み聞かせるような行為に、著作権者の了承は必要ありません。
8. よくある誤解
- 誤解①:本を買った=どこでも自由に朗読できる → ×(利用方法によっては許諾が必要)
- 誤解②:無料なら何でもOK → ×(無報酬・非営利など複数条件の確認が必要)
- 誤解③:善意のボランティアだから大丈夫 → ×(条件次第で結論が変わる)
9. まとめ|口述権は「声に出すこと」を整理するための権利
口述権は、声に出して著作物を伝える行為を、むやみに制限するための権利ではありません。
本や詩、物語を「声に出して伝える」場面には、
・誰に向けて行うのか
・どんな目的なのか
・お金や報酬が関係しているのか
といった、さまざまな要素が関わってきます。
そのため、口述権ではまず、原則として著作者の許諾が必要という立場に立ち、一定の条件を満たす場合に限って、例外として許諾不要と整理されています。
つまり、
「本来はNGだけど、条件付きで許されている」
——これが、口述権を理解するうえでの基本的な考え方です。
ただし、ここまで読んで、
「じゃあ、身近な読み聞かせまで気にしなければいけないの?」
と感じた方もいるかもしれません。
その点は、どうぞご安心ください。
親が子どもに、寝る前に本を読み聞かせるような家庭内の行為は、
『公に』行われるものではなく、口述権の問題にはなりません。
家庭の中で、本を読み、物語を共有する時間は、著作権を気にして控える必要のない、大切な時間です。
ぜひ、どんどん読み聞かせをしてあげてくださいね。
口述権は、「声に出すことを禁止する権利」ではなく、場面ごとに考えるための整理のルールだと捉えると、理解しやすくなります。
次回は、作品を「見せる」場面で関係してくる展示権を取り上げる予定です。
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