2026年スタート「共同親権」とは?生活と制度のポイントをやさしく解説【第3回】

はじめに

2026年4月から始まる「共同親権」。
第1回では制度の全体像、第2回では親権の決まり方について解説してきました。

「共同親権」と聞くと、なんだか毎日元配偶者と連絡を取り合わなければいけないような、負担の大きいイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、実際には「普段の生活」と「将来に関わる重要な決定」でルールが分かれているという点が大きな特徴です。

今回の第3回では、形としての親権だけでなく、実際の生活でどうなるのかという視点から、

  • 日常のことは誰が決めるのか
  • 進学や転居はどうなるのか
  • 意見が対立した場合は?

といった現実に直面しやすいポイントに加え、今回の民法改正で整備された制度について整理していきます。

目次

1. 養育費の「不払い」を防ぐ新しい仕組み

これまで養育費は、当事者同士の話し合いが前提であり、取り決めがなければ請求が難しいという課題がありました。

この点を見直すために新設されるのが、「法定養育費」制度です。

この制度の主なポイントは次のとおりです。

  • 合意がなくても請求できる
  • 支払いが滞った場合の回収手段が強化される

特に、相手が話し合いに応じない場合、養育費の取り決め自体が進まず、結果として請求を諦めてしまうケースも少なくありませんでした。

しかし、今回の改正により、合意がなくても一定額を請求できる仕組みが整えられたことで、子どもにとって最低限必要な生活費を法的に確保しやすくなる点が大きなメリットといえます。

先取特権とは?

今回の改正で重要なのが「先取特権」という仕組みです。

これは簡単にいうと、養育費は、他の借金よりも優先して回収できる権利のことです。

通常、お金を回収するには裁判などの手続が必要になりますが、先取特権がある場合には、

  • 相手の給与
  • 預貯金

などに対して、より迅速に権利を行使できる可能性があります。

ポイント

子どもの生活費は最優先で守られるべきものという考え方が、制度として明確になりました。

これは、養育費の「取り決めをしていない」「支払われない」といった問題に対する、大きな前進といえるでしょう。

2. 「親子交流(面会交流)」は子どもの利益のために

親子交流については、これまで「会わせる・会わせない」という対立の形で語られることも多くありました。

しかし今回の改正では、「子の利益が最優先」であることが明確にされています。

そのため、

  • DVや虐待の懸念がある場合は交流が制限される
  • 家庭裁判所が関与する場合は「試行的面会交流」が活用される

といった整理がされています。

試行的面会交流の流れは、次の図のようになります。


親子交流の裁判手続における試行的面会交流の流れ(検討・実施・調査・報告・再検討を経て親子交流を実施)

出典:法務省「父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました」より

試行的面会交流とは、実際に面会を行いながら、その結果を踏まえて適切な交流の形を探っていく仕組みです。

親の権利としてではなく、「子どもにとってプラスになるかどうか」を基準に判断される点が大きな特徴です。

3. 財産分与の期間が「5年」に延長

財産分与の請求期間についても見直しが行われました。

  • これまで:離婚から2年以内
  • これから:離婚から5年以内

離婚直後は生活の立て直しで精一杯というケースも多く、今回の改正により、落ち着いてから権利を主張できる環境が整えられました。

【重要】経過措置に注意

ここは非常に重要なポイントです。

  • 令和8年3月31日以前に離婚した場合 → 従来どおり「2年以内」
  • 令和8年4月1日以降に離婚した場合 → 「5年以内」

つまり、すべてのケースで5年になるわけではありません。

この違いを誤ると、権利を失ってしまう可能性もあるため、特に注意が必要です。

4. 日常生活のルールはどうなるか

共同親権では、「何でも2人で決める」というわけではありません。
判断の内容によって、ルールが分かれています。

単独で決めていいこと(日常の事項)

日常生活に関する事項は、一方の親が決めることができます。

  • 食事、服装、習い事
  • 通常のワクチン接種
  • 風邪やぜんそく、アレルギーなどの日常的な通院・治療

これらは、毎日の生活に必要な判断であり、迅速に決める必要があるためです。

二人で話し合うこと(重要事項)

一方で、子どもの将来に影響する事項は、父母が共同で決定します。

  • 進学先(私立か公立かなど)
  • 引っ越し(転居)
  • 手術などの重大な医療行為

意見が対立した場合

話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所が関与し、どちらが決定するかを指定する仕組みがあります。

緊急時の対応

次のような場合には、一方の親が単独で判断することが可能です。

  • 緊急の医療行為
  • DVや虐待からの避難
  • 期限が迫る手続

このように、現実の生活に配慮した柔軟な制度となっています。

【まとめ】

3回にわたって、「共同親権」と民法改正の全体像をお伝えしてきました。

今回の法改正の根底にあるのは、
「離婚しても、子どもにとっては父と母であることに変わりはない」
という考え方です。

もちろん、すべてのケースで共同親権が円滑に機能するわけではありません。

だからこそ、

  • 制度を正しく知ること
  • 個々の状況に応じて判断すること
  • 子どもの利益を最優先に考えること

がこれまで以上に重要になります。

【次回予告】

4月からは「深掘りシリーズ」として、皆さんから寄せられそうな具体的な疑問(Q&A)や、実務的な注意点について、一歩踏み込んでお届けしていきます。

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