【著作権の基礎シリーズ:第11回】「頒布権」ってなに?

― なぜ中古ゲームは売れるの?映画との違いから理解する ―

はじめに

前回は「貸与権」について解説しました。
レンタルDVDやCDなど、「貸す」という行為には著作権者の許可が必要でしたね。

一方で、中古本や中古ゲームなどは自由に売ることができます。
では、ここで疑問です。

「貸す」は制限されるのに、「売る」はなぜ自由なのでしょうか?

DVDの販売と貸出の違いを示すイメージ画像(頒布権の説明)

この違いを理解するカギが、今回のテーマ「頒布権」です。

頒布権とは?

映画の著作物には、VTRやDVDなどの複製物を通じて、
公衆に譲渡したり貸与したりする権利(頒布権)が認められています。

この頒布権は、映画の著作物に特有の仕組みです。

(著作権法第26条)

第26条 著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。

2 著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する。

条文では少し分かりにくいですが、簡単にいうと、
映画については「売る(譲渡)」と「貸す(貸与)」をまとめて扱う権利として、頒布権が認められているということです。

なお、この頒布権は映画の著作物に特有のものであり、
それ以外の著作物については貸与権など別の仕組みで整理されています。

なぜ映画だけ異なる仕組みなのか?

映画は、劇場公開、ビデオソフトの販売、配信など、段階的な流通を前提としています。

そのため、映画については、このような流通の仕組みを踏まえ、
譲渡(売る)と貸与(貸す)をあわせた「頒布権」という権利が認められています。

この頒布権は、譲渡権とは異なり、一度適法に販売された後はその後の譲渡について権利が及ばなくなるという「消尽」の考え方が、条文上は明示されていない点も特徴です。

ただし、一般向けに販売されているDVD(いわゆるセル版=購入して自宅で楽しむためのDVD)については、ゲームと同様に中古販売が認められています。

一方で、映画館で使用される上映用フィルムなどは、配給会社との契約に基づいて提供されるものであり、一般のDVDのように自由に売買されることは想定されていません。

このように、同じ映画の著作物でも、流通の形態によって取扱いが異なります。

貸与権との関係

ここで、前回の「貸与権」との関係も整理しておきましょう。

貸与権は、「貸す」行為を対象とする権利でした。

一方、頒布権は、映画の著作物に認められている権利で、譲渡(売る)と貸与(貸す)の両方に関係する仕組みです。

  • 貸与権:貸す行為を対象
  • 頒布権:譲渡と貸与の両方に関係

このように、著作物の種類によって適用される権利が異なります。

消尽とは?

一度適法に販売された商品については、その後の譲渡について著作権は及ばないとする考え方を「消尽」といいます。

分かりやすくいえば、著作権者は最初の適法な販売によって利益を得ているため、その後の中古販売までずっと権利を主張し続けることはできない、という考え方です。

中古ゲームが売れる理由:キーワードは「消尽」

結論からいうと、中古ゲームの販売は認められています。

最高裁の判断(中古ゲームソフト事件)では、「一度適法に販売されたものは、その後の譲渡について著作権者の権利は及ばない(消尽する)」とされました。

つまり、最初の販売でメーカーは利益を得ているのだから、その後の転売まで制限することはできない、というバランス感覚です。

文化庁Q&Aから見る整理

文化庁の著作権Q&Aでも、次のように説明されています。

  • ビデオ、ゲームソフト、CD、書籍のレンタル業には、原則として著作権者の了解が必要
  • 映画の著作物に該当するゲームソフトの中古販売には、一般に頒布権は及ばない
  • 市販の音楽CDやゲームソフトの中古品をフリマアプリ等で販売することは、著作権法上問題が生じない

このように、「貸す」と「売る」では扱いが異なることが分かります。

CD・本・映画・ゲームの違い

【CD・本・映画・ゲームの違い(比較表)】

著作物の種類メインの権利中古販売(譲渡)レンタル(貸与)
本・CD譲渡権・貸与権OK(消尽する)許諾が必要
ゲーム頒布権(映画扱い)OK(判例により消尽)許諾が必要
映画(上映用等)頒布権制限あり許諾が必要

レンタルとの違い

ここで改めて整理すると、

  • 中古販売 → 原則OK
  • レンタル → 原則として許諾が必要

同じ「人に渡す行為」でも、法律上は異なる扱いになります。

実務で気をつけたいポイント

  • フリマアプリでの中古販売は基本的に問題ありません
  • ただし、コピー品や違法アップロード品の販売はもちろんNGです
  • 「自分で使用したものを売る場合」は問題ありませんが、転売目的で反復継続して行う場合は「古物商許可」が必要になるため注意が必要です

このように、著作権の問題と、古物営業法など別の規制は分けて考えることが大切です。

まとめ

頒布権は、映画の著作物について認められている、譲渡や貸与に関わる権利です。

一方で、中古販売については「消尽」という考え方があり、一度適法に販売された後の流通には、原則として著作権が及ばない場合があります。

そのため、ゲームソフトの中古販売は判例上認められていますが、レンタルについては別の整理が必要になります。


著作権は、「売る」「貸す」といった身近な行為にも深く関わっています。
似ているように見える行為でも、適用されるルールは異なるため、区別して考えることが大切です。

📚過去のブログ

第1回:著作権にはどんな権利があるの?

第2回:複製権ってなに?

第3回:上演権・演奏権

第4回:家でDVDを見るのはOK?上映会は?

第5回:公衆送信権ってなに?

第6回:公の伝達権ってなに?

第7回:口述権ってなに?

第8回:展示権ってなに?

第9回「譲渡権」ってなに?

第10回「貸与権」ってなに?

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