【著作権の基礎シリーズ:第8回】展示権ってなに?|美術作品を「展示する権利」

著作権と聞くと、
「コピーしてはいけない」というイメージを持つ方が多いかもしれません。

しかし著作権には、実はさまざまな種類の権利があります。

今回取り上げるのは「展示権(てんじけん)」です。

あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、美術作品や写真などを扱う場面では関係してくる権利です。

美術館前の屋外彫刻と建物(著作権の展示権をイメージした写真)

今回は、展示権の基本をやさしく整理してみます。

1. 展示権とは?(著作権法25条)

展示権とは、美術の著作物や未発行の写真を公に展示する権利のことです。(著作権法25条)

例えば、絵画・彫刻・写真などを、美術館やギャラリー、展示会などで展示する場合、この展示権が関係してきます。

つまり、作品を人に見せる形で展示するかどうかを決める権利と考えると分かりやすいでしょう。

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2. 作品を持っていれば自由に展示できる?(45条)

ここで一つ疑問が出てきます。

例えば

  • 絵画を購入した人
  • 彫刻を所有している人

は、その作品を自由に展示できるのでしょうか。

著作権法では、美術の著作物や写真の著作物の原作品の所有者(またはその同意を得た者)は、その原作品を公に展示することができるとされています。

これは、著作権と所有権のバランスを取るための考え方です。

例えば、絵画を購入した人が自宅に飾ったり、展覧会で展示したりすることまで著作者の許可が必要となると、所有者の権利が大きく制限されてしまいます。

そのため、原作品の所有者による展示については認められているのです。

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3. 屋外の彫刻・建築は撮影していい?(45条2項・46条)

公園の彫刻や街中のモニュメント、建物の外観などを、写真に撮ったことがある方も多いと思います。
一方で、美術館の中では写真撮影が禁止されていることもありますよね。

ここで関係するのが、屋外に恒常的に設置された作品についてのルールです。

(1)屋外に恒常的に設置する場合は「45条の展示OK」がそのまま使えない

45条2項では、美術作品の原作品を街路・公園など一般公衆に開放された屋外の場所や、建造物の外壁など一般公衆の見やすい屋外の場所恒常的に設置する場合には、45条1項の規定を適用しない、とされています。

(2)代わりに「公開されている屋外作品は、一定の範囲で利用できる」(46条)

その上で46条は、屋外に恒常的に設置された美術の著作物建築の著作物について、一定の場合を除き、いずれの方法によるかを問わず利用できると定めています。

そのため、例えば

  • 公園の彫刻を撮影してSNSに投稿する
  • 街並みや建物を撮影して発信する

といった行為は、原則として著作権侵害にならない場合が多いです。

ただし46条には例外もあります。
特に注意したいのが、作品の複製物の販売を目的とする場合などです(46条各号)。

(3)美術館で撮影がダメな理由は「展示権」よりも…

美術館の館内展示は、46条の対象(屋外恒常設置)ではありません。
館内の作品を写真に撮る行為は、展示権というより複製(コピー)に近く、別の権利(複製権など)が問題になることがあります。
また、著作権とは別に、美術館の館内ルール(撮影禁止)として制限されている場合もあります。

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4. 図録・パンフレットはどこまでOK?(47条)

展示会では、作品の解説や紹介のために、図録・パンフレット・解説小冊子を配ることがあります。
また、タブレットや展示用モニターで作品の画像を表示することもあります。

この点について47条は、原作品展示者が、観覧者のために解説・紹介をする目的で、必要な限度において

  • 小冊子に作品を掲載する(複製)
  • 上映する
  • 自動公衆送信を行う(送信可能化を含む)

などができる、と定めています。

ただし重要なのが、「必要と認められる限度」と、「著作権者の利益を不当に害しない」という条件です。
「図録なら何でもOK」という話ではなく、展示の解説・紹介としてバランスが取れているかがポイントになります。

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5. 版画・写真の「原作品」ってどれ?(道具は原作品?)

絵画は通常、世界に一つだけの作品です。

しかし、版画や写真の場合は、同じ作品を複数作ることができます。

例えば

  • 版画 → 同じ版木から複数刷ることができる
  • 写真 → ネガフィルムから複数プリントできる

では、この場合の「原作品」はどれなのでしょうか。

著作権法では、版画や写真の場合、刷られた版画やプリントされた写真そのものが原作品として扱われます。

つまり、

  • 版木
  • 鋳型
  • ネガフィルム

などは、作品を作るための道具に過ぎません。

そのため、これらが著作権法上の「原作品」になるわけではありません。

版画や写真の場合は、複数の原作品が存在することもあるとされています。

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6. まとめ

展示権は、美術の著作物や未発行の写真を「公に展示する」権利です。

ただし実際の社会では、作品の所有者が展示できたり、屋外に設置された彫刻や建築物については一定の範囲で自由に利用できたりと、さまざまなルールが組み合わさっています。

また、展示の解説のための図録やパンフレットなどについても、観覧者の理解を助ける目的で、必要な範囲での複製などが認められています。

普段、美術館やギャラリーを訪れるときに、こうした法律のことを意識する機会はあまりないかもしれません。

でも、「展示することにも法律のルールがあるんだ」と少し思い出してみると、作品の見方が少し変わってくるかもしれません。

美術館で展示を見ながら、
「この作品は原作品なのかな?」
「図録にはどうやって掲載されているのだろう?」

そんな視点で眺めてみるのも、また一つの楽しみ方かもしれません。

著作権のルールを知ることは、作品を守るだけでなく、文化や芸術をより深く味わうきっかけにもなるのだと思います。


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